【完結】【真実の愛を見つけた!貴様との婚約を破棄する!】と宣言した王太子が、翌日【側室になって仕事だけしてくれ!】と言いに来た

まほりろ

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10話「国王と王妃の罪」

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一度廊下に出てもう一つの隠し通路を目指す。その隠し通路は玉座の間に通じている。

国王と王妃に会って、王太子の非道な行いを許したことに文句を言ってやりたい。

廊下を歩いていても誰も私だと気づかない、メイド服に着替えたことが幸いした。

王太子妃のハンナが庭で騒ぎを起こしているので、そちらに気を取られているのかもしれない。

王妃の私室の扉の前に控える近衛兵を眠らせ、部屋に入る。そこから隠し通路を使い玉座の間に向かう。

玉座の間に続く隠し扉を開けると、国王と王妃が玉座でふんぞり返っているのが見えた。

「エルフリーナ・アーレントはまだ言うことを聞かないのか?」

「そのようですわ陛下、王太子に婚約破棄されて傷物になった女を王太子の側妃として迎えてやったというのにその恩も忘れて、怠けているようです」

「あの女は人形のように無表情で面白みに欠けるからな、王太子に飽きられても仕方あるまい。頭の良さしか取り柄がないのに、それを活かせないのでは側妃としても終わっているな、これ以上仕事をしないようなら処刑せよ」

「陛下落ち着いて下さい、あれ程の頭脳を捨てるのはもったいないですわ、説得して仕事をさせましょう。そのためにエルフリーナの家族を呼んだのですから」

国王と王妃の会話に虫唾が走りヘドが出た。

教育に失敗した王太子馬鹿息子を咎めもせず好き放題させ、そのつけを私に押し付けるなんて……! ふつふつと怒りが湧いてくる。

「エルフリーナの母親もそうだった」

「故アーレント公爵夫人、旧姓ブルーナ・ルター侯爵令嬢でしたわね」

「そうブルーナは面白みのかけらもない能面のような女だった。だが仕事だけは出来た」

「ブルーナ様は陛下の元婚約者でしたわね」

「政略的なものとはいえブルーナと婚約しろと言われたときは父を恨んだよ。まあ仕事だけはできたから当時王太子だったわしの仕事を全て押し付けていたが」

「私と陛下が恋に落ち、卒業パーティーで当時王太子だった陛下があの女に婚約破棄を言い渡したときは胸がすーっとしましたわ。地味で不美人なくせに頭の良さを鼻にかけたいけ好かない女でしたから」

「あんな女他に貰い手もいないだろうから、側近のアーレント公爵にくれてやった。今思うとちと惜しいことをした。わしの側室にして仕事だけをさせるべきだった」

「まぁ陛下はまだあの女に未練がお有りですの?」

「そうではない、ブルーナをアーレント公爵家に嫁がせてもアーレント公爵は手をつけないと思っていた。ブルーナは地味で無愛想な女だったし、アーレント公爵には本命の愛人がいたからな。

だからブルーナが『妊娠したので仕事を休みたい』と言ったときにはブルーナとアーレント公爵を殴り飛ばしてやりたかったよ。ブルーナの生きる意味はわしの代わりに仕事をすることだけなのに、あろうことかアーレント公爵をたぶらかし子供を作り、『子供を生むから産休をください』などと偉そうなことをぬかしたのだからな!」

「ほんと身の程をわきまえてない愚かな女でしたわね」

「アーレント公爵も同罪だ! 愛人を別宅に囲っているのなら、何もあんな地味な女に手を出さなくてもいいだろうに! やつがブルーナを娶るときに迷惑料として大金を渡したことを忘れおって! ブルーナはわしの代わりに仕事をさせる人形だから子は作るなとあれほど釘を刺したのに!」

「もしかしたらエルフリーナはアーレント公爵の子ではないのかもしれませんわね。ブルーナも隅に置けませんわ、すました顔して夫以外の男をたぶらかすなんて。ブルーナ・アーレントの本性はふしだらな売女だったのですわ」 

口元を扇で隠し王妃がオーホッホッホッホッと高笑いする。

「だからブルーナには産休をやらず子供が生まれるぎりぎりまで仕事をさせ、産後すぐに赤子から引き離し仕事をさせた。子が産めただけでも贅沢だと言うのに『産後のひだちが悪いから休暇をください』『エルフリーナを自分の手で育てたい』など身の程知らずなことをぬかしおったので却下し、仕事を倍に増やしてやった! そしたら体調を壊してあっさり死におった!

わしの側室にすればよかったと後悔したよ、子供など生ませずもっと長生きさせ、一生馬車馬のようにこき使ってやったのに…!」

「ブルーナ様が死んだあと、急に私の仕事が増えて迷惑しましたわ」

「わしもだ、王妃と新婚気分で楽しく遊んでいたのに水をさされた」

「でもブルーナ様がエルフリーナを残してくれたので、エルフリーナが仕事を覚えてからは楽ができましたわ。息子のイーゴンともたくさん遊べて楽しい時間を満喫できましたもの」

「ブルーナときのような失敗はせんよ。エルフリーナを五歳で王太子の婚約者に、し、厳しく躾け、十歳から王太子の仕事をさせてきたんだ。エルフリーナの教育にかかった費用とて安くはない。エルフリーナを王太子の側室にして縛り、長生きさせ死ぬまで働かせる! 子など絶対に作らせない!」

「それがよろしいですわ」

国王と王妃の言葉に視界がぐらりと揺れる。足に力が入らずその場にしゃがみこんでしまった。

落ち着いて私、まずは呼吸を整えるのよ。

実母であるブルーナ・アーレントは私が三歳のときに亡くなった。

お母様はほとんど家にいなかった。お母様との記憶は私の能力に気づいたお母様が「誰にもその能力について知られないように、誰にも話さないように、父親や使用人や国王や王妃ですら信用しないように」と怖い顔で私に言い聞かせたこと。

お母様は私を生んだあとすぐ王宮に呼び出されずっと仕事をさせられていたのですね。

無能な王族が遊んで暮らすためにお母様は犠牲にされた。

お母様はアーレント公爵家にほとんど帰ってくることもなく、帰って来ても私を抱きしめる時間も取れなかった。

そんな中でお母様が私の能力に気づき、誰にも教えては行けないと、私に諭せたとは奇跡だった。

私はお母様に愛されていないと思っていた、お母様は仕事人間で家族より仕事を優先させていると教えられてきた。

愚かだった……私を売り飛ばすような父の言葉をなぜ信じていたのだろう。

私はお母様に愛されていた、お母様は自分の手で私を育てようとしていたのに……信じて上げられなかった。お母様は国王と王妃に仕事をおしつけられ、私と会う機会を奪われていた。

お母様は怠け者で理不尽で身勝手なこの二人に殺されたのだ……!

彼らは人間ではない……彼らに似合った姿にしてやる!

速度を上げるゲシュウィンディヒカイト・ヘーゲン


私はスピードアップの魔法を唱え、国王と王妃の背後から近づき、二人の頭を掴んだ。

「蛇になれ!!」

二人が言葉を発する前に二人の体を変化させる。

国王の顔や手にひし形の鱗が出来、舌が二つに裂け、目が釣り上がり真っ赤に染まる、肌の色がドス黒く変色していく。

王妃の体にも国王と同じ変化を起こす、肌の色は黒に近いピンクに変えてやった。

「「シャー! シャー!」」

互いの姿を見てうろたえた二人が声をあげるが、それはもう人の声ではなかった。

「国王陛下、王妃陛下、お二人の醜い心にお似合いの姿ですよ」

そう吐き捨てるように言い、玉座の間の入口に向かう。

扉を勢いよく開き、

「きゃぁぁぁああ! 大変です! 怪物が陛下と王妃様に化けていましたわ!!」

大声で叫ぶ。

騒ぎを聞きつけ駆けつけた近衛兵が、玉座に座る蛇の化け物と化した二人をみて絶句する。

「本物の陛下と王妃様は化け物に食べられました!! 城内に広がっている体にイボができる奇病も偽国王と偽王妃の仕業です!!」

大声で叫びながら玉座の間をあとにする。

今の国王と王妃の姿はどこからどう見ても蛇の化け物だ、弁解しようにも二人は「シャー!」としか話せない。

「おのれ怪物! 陛下の敵ー!!」
「化け物ども覚悟せよ!!」

玉座の間に次々と近衛兵が駆けつけ、化け物と化した国王と王妃を取り囲む。

【シャッ! シャシャシャーー!!】

断末魔が玉座の間から聞こえてきたが、振り向きもせず私は廊下を走った。

後悔があるとすれば、二人を苦しめずにあっさりと殺してしまったことだ。

応接室の前を通ると父と継母と妹の壮絶な悲鳴が聞こえてきた。

「ぎがぁぁぁあ! ギャァァァ!! 痛いゲコ! 痛くて死にそうだゲコゲコ!!」

「ひぃぃぃいいやぁぁぁぁ!! 私の手イボだらけになったゲコ! 髪がないゲコ!! 胸がないゲコ!! 声を出すのもしんどいのに叫ばずにはいられませんわゲコゲコ!!」

「ぐぎゃぁぁああああああっっ!! 服がこすれるだけでも痛いわゲコゲコ!! 誰か、誰か助けてぇええええゲコゲコ!!」

扉をそっと開けると、父と継母と妹が床に芋虫のようにころがりながから悶絶していた。

その姿は人語を話すイボ蛙だ。

語尾に「ゲコゲコ」とつけて話すから苦しんでいるはずの言葉がコミカルに聞こえてつい笑ってしまった。

この姿を誰かに見られたら蛙の化け物として切り殺されるだろう。

国王夫妻のようにあっさり死なれては困る。吹雪シュネーシュトゥルムの魔法を使い扉を凍りつかせた。

簡単には殺さないは、もっと苦しんでのたうち回ってから死になさい。

父はお母様と結婚しておきながら愛人を囲っていた。妹のラウラはお母様が生きている父と継母の間に生まれた子だ。

一番悪いのは母を道具のように扱った国王と王妃だが、母を妊娠させたのは父だ。

母を守らなかったのも父だ。産後のひだちが悪かった母を王宮に行かせる行為は、国王夫妻に母を道具として売り渡したのも同然だ。

簡単に死ぬなんて許さない!


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