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12話「国外へ」
しおりを挟む私は馬小屋に着くと一番足の早そうな馬に跨り、混乱に乗じて城を出た。
一晩中馬を走らせ港町に行き、妹から回収したイヤリングを売り飛ばし、隣国アイスフェルト行きの船に乗った。
「さよならハーバー国」
白亜の城が遠ざかっていく。海風が心地よい。
十八年間生きてきた中で感じことのない清々しい気持ちを味わっていた。こんなに爽やかな気持ちになったのは初めてだ。
唯一の心残りといえば、お母様の墓参りに行けなかったこと。
仕方のないことだと自分に言い聞かせ、実母を思い手を合わせる。
潮風を頬に受け爽快な気分でアイスフェルト国へ向かった。
◇◇◇◇◇
隣国に着いた私は宝石を売ったお金を元手に、治療院を開いた。
私はイボや痣やクレーターを作ることもできるが、消すことも出来る。
他にも火傷のあとを消したり、ハゲ頭に髪の毛を生やすことも可能だ。
腕のいい治療師として王都で評判になってる。
「リーナ休憩しようか」
「ありがとう、アル」
私は治療院で出会った、医師のアルフリートと結婚し幸せに暮らしいる。
アルは見目麗しく優しくて賢くて温厚で理想の伴侶だ。
あれからハーバー国がどうなったかって?
あの日お城で起きた怪事件は、本物の国王と王妃は怪物に殺され、蛇の化け物が国王と王妃に成り代わり政治を行っていた。偽国王と偽王妃が全身にイボのできる疫病を撒き散らしたということで落ち着いたらしい。
父と継母と妹は蛙の化け物だと思われ殺されたそうだ。
王太子妃のハンナは浮気現場を王太子に目撃され、浮気相手のビクトル・レイザー子爵令息と共に殺された。
王太子のイーゴンは顔に出来たクレーターと体中に出来たイボを気味悪がられ、騎士に槍で突かれ死んだらしい。騎士は王太子を人だと認識出来なかったらしい。
彼らの遺体は「化け物の遺体は焼き払わなければ復活する!」という迷信を信じた民衆によって王城ごと焼き払われたと風の噂で聞いた。
国王と王妃が蛇の怪物だったのだ、醜い姿の王太子を魔物の仲間だと決めつけて殺害してしまう騎士の心理も分かる。怪事件に怯えた民が、王城ごと遺体を焼き払うという暴挙に出ても仕方ない、というのが事の顛末を聞いた私の感想だ。
私に出すはずの食事を盗んでいたメイドとメイドにイボを感染された人のその後だが、全身にイボが出来た人たちは
、イボがない人に襲われるのを恐れ、イボが消えるまで二週間隠れていたらしい。
イボが治ったあとは市井で普通に暮しているという。
どんな理由にせよ人を化け物に変え、殺されるように仕向けてしまった罪は消えない。
治療師として貧しい人を癒やすことで罪を償っていくつもりだ。
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※※※ヒロイン視点終わりです。次回から王太子視点の話をお送りします。
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