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18話「独占欲かもしれませんが……」
しおりを挟む「……っ!」
これがいわゆるプロポーズというものなのでしょうか?
へーウィット様と婚約したときは、国王陛下と父が勝手に決めてしまったので、プロポーズも愛の告白もありませんでした。
政略的な婚約で、へーウィット様と結婚しても白い結婚生活になるのかしら……と子供心に思ったものです。
「えっと……あの」
何か言わなくては。
アルドリック様が捨てられた子犬のような目で正視される。
十年前の夏の終わり、帝国に帰っていくアルドリック様を思い出してしまいました。
あの日のアルドリック様もこのような目をしておりました。
遠ざかっていく馬車を見送り、胸が締め付けられたのを思い出します。
あのときは来年もまた会えると思っていました。
ですがアルドリック様と再会出来たのは十年後でした。
私は……アルドリック様のことをどう思っているのでしょう?
アルドリック様は大切なお友達です。
でもそれ以上に、もっと特別な何かがあるとしたら……?
へーウィット様が妹のミラと一緒にいても、へーウィット様に婚約破棄されても、何も感じませんでした。
アルドリック様が他の方と仲むつまじくしていたら? 腕を組んで歩いたり、抱き合ったりしていたら?
想像しただけで胸がズキズキと痛みます。
「私は……アルドリック様が他の方と仲良くするのは……嫌です」
「それはどういう意味だ?」
私がやっと絞り出した言葉を聞いたアルドリック様が小首をかしげる。
「恋とか愛とかよく分からないのです、でも……アルドリック様が他の方と腕を組んで歩いていたり抱き合っていたら……嫌だなと思いました」
「それはつまり……!」
アルドリック様が期待のこもった瞳で私を見る。
「子供っぽい独占欲かもしれません、アルドリック様が他の方と仲良くしている姿を想像するだけでもやもやするんです。こんなはっきりしない気持ちで、曖昧な答えしか出せませんが……私、アルドリック様のお側にいたいです。それでもよろしいですか……?」
アルドリック様の手に自身の手を重ねる。
「もちろんだ! それで充分だ! ありがとう! リーゼロッテ!」
アルドリック様が満面の笑みを浮かべる。
アルドリック様が私の腰を掴み抱き上げる。
「ひゃっ……!」
「今日は人生で最良の日だ!」
くるくると回り始めました。
「皇太子殿下、はしゃぎすぎです。ぎりぎり合格点の返事をもらってよくそこまではしゃげますね」
カイル様がやれやれと言って肩をすくめる。
「これから満点にしていくさ!」
アルドリック様が花が綻ぶように笑う。
「アルドリック様……目が回ります」
何度もくるくると回転されて、私は完全に目を回していた。
「すまない」
アルドリック様が回転するのをやめ、床に下ろして下さった。
「ふわっ……!」
足元がおぼつかないわたしをアルドリック様が支えて下さる。
「ふふっ」
至近距離にアルドリック様の顔があって、お互いの顔を見合わせて思わず笑ってしまいました。
「アルドリック様、これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む、リーゼロッテが倒れないように全力で支える」
ほほ笑み合う私達を見て。
「たわむれ合うのもほどほどにして下さい、先ほどからお二人のいちゃいちゃを見せつけられて、こっちはお腹いっぱいなんですから」
カイル様が苦笑いを浮かべ小声で呟いた。
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