第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ

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改稿版

改3話「住み慣れた王宮を追い出されました」

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「挨拶が済んだら、去っさと出ていけ!」
「さようなら、お義姉様」
 二人が、邪魔者を見る目で私を見る。
「気づいてないのかもしれないが、お前臭いんだよ!」
「へーウィット様、本当のことを言っては、お姉様が可哀相よ」
 殿下が鼻をつまみ、ミラが口元を手で隠しクスクスと笑う。
 私の使う絵の具は、少々特殊。
 原料に使われる薬品のせいで少々臭う。
 服や髪に絵の具の匂いが染み込んでいたのだろう。
 王太子殿下に呼び出されるまで、自室で絵を描いていた。
 着替える時間も与えられず、ここに連れてこられたので、少々臭うかもしれない。
「殿下、絵の具と絵は持っていっても構いませんか?」
 王宮から追い出されても、絵を描きたいので絵の具とスケッチブックを持ち出したい。
 できればキャンバスも持ち出せたら嬉しい。
 心を込めて描いた作品たちを、置いていくのも忍びない。
「図々しいな!
 絵の具もキャンバスも父上がお前に貸し与えたものだ!
 その道具を使って描いた絵も当然、父上のものだ!
 お前のものじゃない!
 全部、置いていくのが筋だろう!!」
 絵の具もキャンバスも、国王陛下から貸し与えられた物。
 プレゼントされたわけではない。
 私の描いた絵はすべて国王陛下の物とする。
 そういう約束で絵を描かせてもらっていた。
 私は絵を描くのが好きだから、楽しく絵を描ければそれでよかった。
 自分の物にならなくても、作品が身近にあるならそれで良いと思っていた。
 まさか、王宮を去ることになり、作品と離れ離れになるとは思いもしなかった。
 陛下はお優しいから、私の描いた下手な絵をお城に飾ってくださった。
 炊事場に炎をまとったトカゲ炎の精霊サラマンダーの絵を。
 鍛冶工房にドワーフの絵を、靴を作る工房に靴職人の妖精レプラコーンの絵を。
 アンドヴァラナウトを作る研究所に首だけの老人知識の神ミーミルの絵を。
 騎士の訓練場に右腕のない男軍事の神チュールの絵を。
 馬小屋には八本足の馬スレイプニルの絵を。
 城の大広間には豊穣の神フレイ神の絵を。
 王城のどこかに私の描いた絵がある。
 そう思えたから、今まで作品に固執しなかった。
 絵の道具にも、作品にも、もう見ることも、触れることも出来ないのね。
 胸にポッカリと穴が空いた気分です。
「まったく、城にタダで住まわせて、タダ飯を食わせてやったというのに。
 それだけでは満足せず、それ以上の物を要求するとは……呆れ果てたやつだ」
 聖女は無償で国に奉仕するので、お給金はいただきません。
 その代わり、住むところが提供され、食べるものと衣服が支給されます。
 八歳で母が亡くなり、時間を開けず父が再婚したあと、私の居場所は公爵家にはありませんでした。
 安心して眠れる場所と、少しのご飯、綺麗にされた衣服、それだけあれば十分だと思っていた。
 趣味を続けたいとか、作品を手元に置きたいとか、欲張りですよね。
「分かりました。
 絵は諦めます。
 ごきげんよう殿下、幸せにねミラ」
 私が再度カーテシーをする様子を、二人はつまらなそうな顔で眺めていた。
「とっと出て行け!」
「ごきげんようお姉様。
 言われなくても幸せになるわ」
 私が踵を返すと、背後から思いも寄らない言葉が聞こえた。
「やっと、あのババアの婚約者から開放されたぜ!」
「へーウィット様ったら、酷~~い。
 お姉様に聞こえるわよ。
 フフフ」
 王太子殿下が、二歳年上の私との婚約を嫌がっていたのは知っていた。
 まさか十八歳このとしで、年寄り扱いされるとは思わなかった。
 振り返ると、二人はニタニタと嫌味な笑みを浮かべていた。
「仕方ないだろ?
 リアーナの髪は真っ白くてお婆さんみたいなんだから。
 本当、気持ち悪い色だよな!」
「やだぁ、へーウィット様。
 あれは白じゃなくて銀色ですよ。  気持ち悪い色なのは本当ですけど~~。
 アハハ」
 実母譲りの銀色の髪は、この国では珍しく、奇異な目で見られることが多い。
 まさか、こんな風に笑われるなんて。
「俺は、ミラの太陽のように輝く黄金色の髪が好きだ!」
「ありがとうございます。へーウィット様!
 わたしもブロンドの髪が気に入ってるんです!」
 ミラはドリルのように巻いた金色の髪を、嬉しそうに撫でていた。
「リアーナ、お前まだいたのか?
 とっとと俺の視界から消えろよ白髪ババア!」
「やだぁ、へーウィット様!
 そんなこと言ったらお姉様に気の毒ですよ~~。
 フフフ」
 口ではそう言いながら、ミラは楽しそうに笑っていた。
「最高聖女のミラの仕事の邪魔になるから、城からではなく、この国から出ていけ!
 そして二度と戻って来るな!」
 王宮からの追放が国外追放にグレードアップしていました。
「へーウィット様ったら酷~い。
 お姉様には、実家以外に行く宛がないんですよ~~。
 国外追放なんかされたら、お姉様が野垂れ死んでしまうわ~~」
 お城を出たら当面は実家で暮らすつもりだった。
 それすらも叶わなくなってしまった。
「でも、お姉様は実家でも煙たがられてたから、
 お姉様の居場所なんて、この国のどこにもないんですけど~~。
 国外追放でちょうど良かったのかも~~??」
 ミラが私の顔を見て、目を細め、口角を上げた。
 これ以上話すこともないので、私は足早に部屋を出ました。

 八歳から十年間、最高聖女として王宮で働いてきました。
 その役目が突如として終わりを迎えた。 
 ぐずぐずしている間に、王宮からの追放が、国外追放にグレードアップしてしまった。
 これからどうすればいいかわからない。
 私は聖女の衣服のまま、荷物も持たず、住み慣れた王宮を後にした。
 
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