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改稿版
改20話「最高聖女ミラの実力」ざまぁ回
しおりを挟む女神暦八百十八年五月八日。
ネーベル大陸・ハルシュタイン王国。
リアーナが聖女の職を辞して一週間が経過していた。
新しく最高聖女の地位についたミラが、初めての仕事に取り掛かろうとしていた。
ミラは最高聖女の職に就いてから一週間、仕事を怠け、王太子へーウィットと床を共にし快楽にふけっていた。
ミラは最高聖女になって初めて王宮内にある祈りの間を訪れた。
日はとっくに昇り中天にかかろうとしていた。
リアーナは日が昇る前に祈りの間に訪れ水晶に魔力を流し結界を張っていたというのに……。
「だる~~い、ぱぱっと結界を張って午後はへーウィット様に宝石商を呼んでもらいましょう。
帽子職人と靴職人も呼んでいただきたいわ」
ミラのは大きく袖の膨らんだドレスを着ていました。
袖の膨らんだドレスは、帝国ではかなり昔に流行ったデザインでしたが、王国では今頃流行していた。
彼女のドレスの襟元には、ふんだんに白のレースがあしらわれている。
ミラが身につけているアクセサリーには、スクエアカットのサファイアがあしらわれていた。
彼女は厚底の靴を履いていました。
どれも帝国ではかなり昔に流行った物だ。
ドレスは膨らんだ袖からレースの袖に、宝石はスクエアカットからブリリアントカットに、レースのついた襟から長いマントのような襟に、厚底の靴からハイヒールに……流行は移り変わっていた。
ミラは髪を縦巻きロールにし、両サイドにリボンを結んでいる。
その髪型も帝国では時代遅れだった。
それらのものは全て王太子へーウィットからの贈り物だった。
リアーナがへーウィットの婚約者だったとき、へーウィットはリアーナにペン一本、ハンカチ一枚贈ったことがない。
キラキラと輝く華やかなドレスに身を包んだミラが、水晶に手をかざす。
リアーナが祈りの間を訪れるときは、白無地の木綿の服を身に着けていた。
それ以外の服が与えられていなかったからだ。
清廉で質素、それが最高聖女であったときのリアーナのイメージだった。
きらびやかなドレスを身にまとい香水の匂いがきついミラは、祈りの間よりもダンスホールや大広間の方が似合っていた。
神官や聖女はミラの華美な装いを見て眉をしかめた。
しかし王太子の婚約者なので誰も何も言えなかった。
当のミラはそんな神官たちの視線など気にも止めなかった。
「今日からわたしが最高聖女よ、みんなわたしを崇めたてまつり、ちやほやしなさい」
自信たっぷりな顔でミラが水晶に手をかざす。アンドヴァラナウトの指輪が禍々しい光を放った。
「えっ……?
ちょっと……何これ!?
何なの……!!」
呆然とするミラの体から、アンドヴァラナウトの指輪を通じ魔力が流れていく。
「ひっ……! いや……!
誰か……誰か止めてぇぇっっ……!!」
自分の想像を超える量の魔力が水晶に流れ、ミラが恐怖に顔を歪めた。
「ガァァッッ!
ゲボォォォッッ!!」
体内にある魔力を全て奪われ、ミラは血を吐いてその場に崩れ落ちた。
しかしミラの魔力を全て奪っても、この国全土を覆う結界を張ることは出来なかった。
ミラが魔力を百倍にするアンドヴァラナウトの指輪を装備し全魔力を注ぎ込んで張れたのは、王都をやっと覆う程度の小さな結界だった。
しかしこれはハルシュタイン王国の崩壊の序曲に過ぎなかった。
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