15 / 33
14話「あんたわざとやってるだろ?」
しおりを挟むズドーーン!! ガラガラガラガラッッ!!
爆音とともに天井に穴が空き、砂煙が舞う。
「ほんと、あんたわざとやってるだろ?」
聞き覚えのある澄んだ声が響く。
「なんでおれの行く先々にあんたがいるの?」
凛々しい顔、華奢だけど優美なたたずまい。
「リュ、リュートォォッッ!!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、リュートの名を叫ぶ。
「誰かと思えば聖なる翼村から来たというガキか!」
赤い髪の男が不機嫌そうな顔で立ち上がる。
「神に仕える神聖な一族ゆえ、図書館の利用を許可しましたが、他人の寝所を覗き見るようなまねは許容しかねますね」
橙色の髪の男とその他の王子たちも立ち上がり、リュートを見据える。
「念のために聞くけど同意の上? 輪姦されるのがあんたの趣味?」
リュートが淡々とぼくに尋ねる。でもいつもより不機嫌そうに感じるのはぼくの気のせい?
「違うよ!」
ぼくはぶんぶん首を横に振る。
「ぼくが好きなのはリュートだけだもん!!」
ぼくの言葉に王子たちの顔色が変わる。
「いけないなぁ、神子の独り占めは」
「そうです、天使を独り占めするのは太古の昔から戦争のもとです」
「どうする? 赤兄さん、緋色兄さん」
「プルプルって呼ぶなと言っているでしょ! 失礼取り乱してしまいました。ここは世界の平和のために、天使を独り占めしようとする不届き者を退治するしかないでしょう」
「そうだよね」
「いっちょ、やっちゃいますか」
「おいらも久しぶりに自分の力を使ってみたかったんだ~」
虹の国の王子たちが不吉な言葉を口にする。
どうしよう、リュートがいくら強くても七人も相手じゃ不利だ。
しかもこの王子たちは特殊な技を使う!
「逃げてリュート!」
「もう遅い! 我ら虹国の七兄弟を怒らせて無事に帰れると思うな! 毒!」
「眠り!」
「麻痺!」
「魔法封じ」
「幻覚!」
「混乱!」
「そして、兄上たちの技がすべて効いたときにだけ発動するおいらの技! 兄弟の中で最も強力な力! 死ッッ!!」
七人の王子たちが虹色の光を放つ! 光がリュートに向かっていく。
どうしよう! リュートが死んじゃう!
ぼくと関わったばかりに!
「リュートォォォォっっ!!」
目もくらむような虹色の光が、リュートに触れた瞬間消滅した。
リュートは何事もなかったように同じ場所に立っいた。
「くっ、なぜだ! なぜ死んでいない!」
赤髪の王子がリュートに尋ねる。その顔は苛立っているように見えた。
「うそでしょ、おいらの技を受けて生きてるなんて!?」
紫の髪の王子が顔をゆがめる。
「今まで我ら七兄弟の技が効かなかったことなどないのに……!」
橙色の髪の王子が喚く、その顔は恐怖心からか青ざめていた。
「悪いけど、今のおれにそういう技は効かないから」
リュートが一歩前に出ると、王子たちが一歩後退った。
「そこのベッドに全裸でつながれてる子おれの弟子なんだ、返してくれる? だめだって言われても連れてくけど」
スンとした顔でリュートが言い放ち、杖を掲げる。
「水の精霊よ我に従え、氷の竜」
蛇のように体の長い水色の壮麗な竜があらわれ、七人の王子に向かっていく。
「「「「「「「ぐぁぁああああッッ……!!」」」」」」」
断末魔が響き、七人の王子の氷の彫刻が出来上がった。
「暴風が使えて、『転んだ拍子に会心の一撃剣』を持ってて、あれだけのレベルがあって、なんで拘束される?」
いつの間にかぼくの隣に座っていたリュートが、ぼくの顔をじっと見る。
リュートが苛立っているように感じるのは、ぼくの気のせい?
リュートが杖でぼくを拘束していた手錠と足かせをたたく。拘束具はあっけなく壊れた。ぼくの腕と足に拘束具の跡が残っていた。
「回復」
リュートが杖をかざすと、ぼくの体にあったあざが消えていく。
「拘束されるのが趣味とか?」
リュートが間近にいる、ぼくを助けに来てくれた!
「リュートだ……リュートがいる! リュートぉぉぉぉッッ!!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔でリュートに抱きつく。
リュートにスルッとかわされ…………ることはなかった。
ぼくはリュートの胸にダイブしていた。
「間抜けな弟子を持つと師匠は苦労する」
リュートがぼくの頭をぽんぽんとなでてくれた。
夢でも見ているのかな? リュートがやさしいなんて?!
「リュート! 虹色王子におかしな魔法か技をかけられた?」
ぼくはリュートの顔をのぞき込む。
「なんでそう思うの?」
「だっていつもはぼくが抱きつこうとすると避けるのに、今日は受け止めてくれたから、虹色王子の変な魔法か技にかかったんじゃないかなと思って」
何色か忘れたけど、混乱の魔法を使う王子がいたはず。
「おれには……そういうたぐいの魔法も技も効かないから」
魔法も技も効かないってどういうこと?
「それと涙と鼻水で顔をびしょびしょにした人が突進してきたら避けるよ、普通」
うっ、確かに。
「でも今も涙と鼻水とぐしゃぐしゃな顔してるよ」
リュートのローブに涙と鼻水をつけてしまったのは、内緒にしておこう。すぐにバレそうだけど。
「さぁ、なんでだろ……あんたがおれの弟子だからかな?」
リュートがまた頭をぽんぽんと撫でてくれた。
理由はわからないけど、リュートが優しいならいいかな。
ぼくは再度リュートの胸にダイブした。
リュート好き、大好き! 助けに来てくれて、ありがとう!
13
あなたにおすすめの小説
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。
一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。
衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。
これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
騎士団長の秘密の部屋に匿われています!?
krm
BL
王子なのに魔力が異端!?式典中にまさかの魔力暴走を起こした第三王子アストル。地下室に幽閉されそうになったその時、騎士団長グレンの秘密の部屋にかくまわれることに!けれどそれは、生活感ゼロ、無表情な騎士とふたりきりの、ちょっと不便な隠れ家生活だった。
なのに、どうしてだろう。不器用なやさしさや、ふいに触れる手の温もりが、やけに心に残ってしまう。
「殿下の笑顔を拝見するのが、私の楽しみですので」
「……そんな顔して言われたら、勘違いしちゃうじゃん……」
少しずつ近づいていく二人と、異端の魔力に隠された真実とは――?
お堅い騎士×異端の王子の、秘密のかくれ家ラブコメディ♡
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~
槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。
公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。
そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。
アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。
その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。
そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。
義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。
そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。
完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる