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二十二話「運命の人⑧」*
ーーノヴァ視点ーー
その日、シエルより早く起きなかったことを私は死ぬほど後悔した。
「おはようございます、ノヴァさん」
愛らしい声で起こされる。まるで新婚のようだ。シエルと早く結婚したい。
まどろみの中で、愛しき人に名を呼ぼれる幸せをかみ締めていた。
「ん、早いな……もう起きたのか?」
ベッドの中で重たいまぶたを開ける。
「はい、久しぶりにベッドで眠れましたから」
上機嫌でシエルが話す。ベッドで眠るのが久しぶり? いったいどのような生活を送っていたんだ?
もそもそとベッドから起き上がると、そこには女神のほほ笑みがあった。
愛しい人の笑顔に釣られて顔がほころぶ、しかし三秒後私の笑顔は凍りついた!
「そうか……って、その格好はどうした!?」
眠気が一気に吹き飛び、ベッドから飛び起きる。
「ノヴァさんが買ってくれた服を着たんですよ、似合いますか?」
水色のワンピースを身に着けたシエルがその場でくるりと一回転すると、スカートがひらひらと揺れ生足がちらりと見えた。
スカートをめくりたい衝動にかられる。
「ああ、似合っている」
想像していたよりもずっと上品で美しい。シエルの金色の髪と青い目によく合っていた。
「よかった」
シエルがふんわりとほほ笑む。口付けしたい衝動にかられたが、今はそれどころではない!
「そんなことより、かっ、髪をどうした!!」
シエルの肩を掴む、力を入れすぎてしまったようでシエルが顔をしかめる。慌てて手の力を緩めた。
「切りました」
シエルはロープやリボンでも切ったかのように、さもなんでもないことのように答える。
切った髪は紙袋を包んでいたリボンで結んで、テーブルの上に置いてあるそうだ。
無残に切られた髪を見て、深く息を漏らす。
「綺麗な髪だったのに……」
腰まであった長く光り輝く髪は、肩の長さで切りそろえられていた。長かった髪に思いをはせ、未練がましくシエルの髪を撫でる。
「一階の雑貨屋って、買い取りもしてくれますか?」
「買い取りもしているがなぜだ?」
「俺の髪を売ろうと思いまして……」
「だめだ!!」
シエルの肩を掴み、睨みつける。
「えっ? どうしてですか?」
シエルが顔を青くしたので、顔の筋肉を緩める。おびえさせてしまっただろうか?
「その……素人が売りに行くと買いたたかれる可能性が高い」
シエルの体の一部だったものを、私以外の者が手にするなど絶対に認められん!
「ああ、なるほど」
苦し紛れの嘘だったがシエルは信じてくれたようだ。あながち全てが嘘ではない。相手を値踏みし足元を見て買いたたく商店は多い。
「宿代のたしになればと思ったのですが……」
シエルがうなだれる。宿代のことなど気にしなくてもよかったのになんと健気(けなげ)な。
「そう気を落とさなくてもよい、その……私が預かる」
シエルの髪は私が買い取る! いくら払っても惜しくはない!
「えっ? ノヴァさんが?」
「私が預かり、後で売ってくる」
私が売り、私が買い取る!
「そうしてもらえると助かります。いくらぐらいになりそうですか?」
「そうだな、屋敷百軒分の金貨を払ってもいい」
それで買えるなら安いものだ。
「はいっ?」
シエルがありえないという顔でこちらを見た。
「いやこちらの話だ」
髪にそれだけの対価を払うと言ったらシエルは引くだろうか?
「俺としては宿代と服代と靴代とノヴァさんへの治療費と王都への旅費になったらいなって」
そんなこと気にしなくてもよいのに。
「王都への旅費とは?」
「できれば王都で冒険者登録したいなと思いまして」
そういうことか。
「そうだな田舎で冒険者登録すると一生田舎者呼ばわりされることになる、それを嫌い都会に出て冒険者登録する者も多い」
「王都に行くなら私も一緒に行く」
王都には実家がある、シエルに会ってもらいたい人もいる。
「えっ、いやさすがにそこまでは」
シエルは私を捨て、一人で王都に行くつもりなのか?
「忘れたのか、そなたははじらい死草の毒に犯されている、治療が必要だ。私以外の者には治療をさせない約束だろ?」
「そのことなんですけど、完治するまでにどのくらいかかりますか?」
古い文献には一度の性行為でいいと書かれていたが確証はない。はじらい死草は数百年前に滅びたことになっているので、資料がほとんど残っていないのだ。
治療を止めた途端にシエルが死んでしまったら困る。
「そっ、そうだな……」
長めに言った方が良いだろう。命に関わることだし。
断じてセックスしたい助平心で言っているのではないぞ!
「一年だ!」
「えっ? 一年ですか?!」
「しかも毎日解毒治療をほどこす必要がある」
と思う、多分。城の図書館で文献を読み直した方が良いな。それまでは毎日性行為……いや解毒治療をしよう。
それに一年間毎日性行為をしていれば、シエルも私に情が移り、私と離れたいなどと思わなくなるだろう。
「娼館に入ろうかな……」
「今なんと言った!」
シエルの腰に手を回し腕を強く掴む。シエルの放った言葉が信じられず、つい睨んでしまった。
「いや、ノヴァさんに一年間も解毒治療させる訳にも行きませんし、行きずりの相手とするのも危険ですし、そういう意味で娼館なら安全かと」
シエルの説明を聞き、目の前が真っ暗になった。
よもや治療のために他の男に抱かれる道を選ぶとは。
純粋無垢なシエルの清らかな唇が「娼館」などというみだらな言葉を紡ぐとは思いもよらなかった。
「裏目にでたか……」
深く息を吐いた。シエルの健康を優先させたが、まさか身売りを考えるほど追い詰めてしまうとは。
「ノヴァさんに婚約者や恋人がいたら申し訳ないですし」
シエルはそんなことを気にしていたのか!?
「婚約者も恋人もいない!」
私は即答した。
「えっ、そうなんですか?」
シエルが安堵したように頬を緩めた。私に恋人や婚約者がいないことにホッとしたということは、シエルも少なからず私を思っていると解釈してよいのだろうか?
「私以外に解毒治療をさせない約束だろ!」
シエルの腰にそえた腕に力を込める。
「一年も解毒治療するの大変じゃないですか?」
「案ずるな、幸い私は性欲が強いほうだ! 毎日しても種切れになることはない!」
昨日精通したばかりなので正直なところよく分からないが、こう言わなければシエルは遠慮して他の男に抱かれようとするだろう。そんなことはさせられない!
「お願いしてもいいですか?」
どこか吹っ切れたような顔でシエルが言った。
「もちろんだ」
シエルの顎を掴み唇を塞ぐ。特に抵抗されなかったので、口内を犯し舌を絡めとる。
シエルの形のよい尻を撫でると、
「んっ、ぁっ……♡」
高い声が漏れた。
シエルの服のボタンをひとつひとつ外していく。シエルの桃色の胸の突起があらわになる、突起の周りには昨日私の付けた赤い痣が残っていた。
「ノヴァさん、午前中の便で王都に向いたいのですが……」
「明日の朝一番の便に乗ればいい、昨日はじらい死草の毒に犯されたばかりなのだ、今日は治療に専念した方がいい」
私のものはギンギンに硬くなっていた。このままでは馬車に乗れない。馬車に乗れば馬車の中でシエルを犯してしまう。
文献にははじらい死草の解毒には一度精液を注げばよいと書かれていた、だが確実ではない。
個人差もあるだろうし、精液は多めに注いでおいた方がいいだろう。
兄上に相談し、植物学に詳しい学者や医者の意見も聞いた方が良いかもしれぬな。
シエルのワンピースを脱がせ、ベッドに組み敷く。
女もののパンツに覆われたシエルのペニスは勃起していて、薄い布地を持ち上げていた。
視姦していたら、シエルが顔をむくれさせた。
「このパンツ、ノヴァさんの趣味でしょ?」
責めるような瞳で私を見る。
「違う! だがよく似合っている」
布地越しにペニスに触れるとシエルが愛らしい声を上げた。
「あっ……♡」
シエルのパンツを脱がせ、肉棒を突っ込み一日中抱いた。
◇◇◇◇◇
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