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二章・7話「二度目の城、王様と王妃様ってどんな人? ついでに王子の弟ってどんな人? 1」シンデレラ視点
しおりを挟む「兄上! この者と結婚すると言うのは本当ですか? 王太子が男と結婚するなど前代未聞(ぜんだいみもん)です! 正気の沙汰(さた)とは思えません!」
「ルイス、ボクはいま陛下と母上と話をしているんだ。文句なら後で聞こう」
フィリップ王子は、ルイス王子の話を取り合わなかった。
フィリップ王子に冷たくあしらわれ、ルイス王子がショックを受けていた。
ルイス王子が、オレをキッとにらむ。
うわぁ――、標的がオレに移ったっぽい。
ルイス王子がオレに近づき、パァ――ン! と平手打ちした。
一瞬なにがおきたか分からなかった。
頬がじんじんしてきて、たたかれたんだと自覚した。
「この薄汚い泥棒ネコめっ! どうやって兄上に近づき、体を交わした! おおかた酒に薬でも盛って、兄上が寝ている間に体を繋(つな)げたのだろう! いかにも場末(ばすえ)の人間が考えそうなことだ! そうでなければ高貴な兄上が、どこの馬の骨とも知れぬおまえごときと、体を結ぶハズがない! このずる賢いメスブタがッッ!!」
ルイス王子が、眉間にしわを寄せ、目をつり上げて怒鳴る。
前世の二時間サスペンスで、こういうシーンを見たことがある。
正妻と愛人の修羅場(しゅらば)。
間違いない、ルイス王子はブラコンだ。というよりブラコンの域を超(こ)えている。もしかしてガチで兄貴に惚(ほ)れているのかも? いや実の兄弟でさすがにそれはないか。
ルイス王子にビンタされた頬が、ヒリヒリする。
びっくりしたが特に怒りはない。
家族が男と結婚すると知ったときの、普通の反応だよな。フィリップ王子の家族に、まともな人がいてむしろちょっとホッとしている。
ルイス王子がいれば、うまく破談(はだん)にもちこめるかも。
「なんとか言わないか!」
ルイス王子が手を振りあげた。
たたかれる、と思いギュッと目をつぶる。
あれ? 痛くない?
そっと目を開ける。
ルイス王子の手は、フィリップ王子につかまれていた。
「なぜです、なぜ邪魔をするのですか? 兄上!」
フィリップ王子に腕をつかまれ、ルイス王子はうろたえていた。
「ルイス、シンデレラに暴力をふるうことは許さない。これ以上シンデレラを傷つけるふるまいをするというのなら、おまえとて容赦(ようしゃ)はしないぞ!」
フィリップ王子が厳しい眼差しで、ルイス王子を射抜く。
ルイス王子がキュッと唇をかんだ。
「兄上は、僕よりもこの男が大事だというのですか?」
ルイス王子が捨てられた子犬のような哀れみのこもった目で、瞳をうるうるさせフィリップ王子を見上げる。
末っ子の王子様は、周囲をキューンとさせる仕草をよくご存じのようだ。
不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
「ああ、そうだ、ボクにはおまえよりシンデレラが尊い」
ルイス王子のつぶらな瞳攻撃は、フィリップ王子には通じなかった。
「そんな……!」
ルイス王子がショックにうちひしがれる。
「やめないか、ふたりとも!」
王様が一喝(いっかつ)する。
ルイス王子は完全に大人しくなった。
フィリップ王子はルイス王子の手をはなすと、再び王様の前にひざまずいた。
「陛下、先ほどの件ですが、ボクは側室を迎える気はありません。それでもシンデレラとの結婚をお許しいただけますか?」
フィリップ王子の言葉に、王様と王妃様が顔を見合わせた。
「フィリップ! 王子としてそんなわがままが許されると思っているのか!」
王様が眉間にしわを寄せ、声をあらげる。
「陛下の言う通りですよ。フィリップ、考え直しなさい」
王妃様が困惑した表情で、息子をやさしく諭(さと)す。
「ボクはシンデレラと結婚します、側室は迎えません! どうしても側室を迎えろというのであれば……………ボクの王位継承権を剥奪(はくだつ)してください。ボクは王子としての立場を捨て、ひとりの男として、シンデレラと結婚します!」
フィリップ王子の言葉に、緊張感が漂う。
「フィリップ、言葉を慎(つつし)みなさい!」
「ああ……フィリップ……」
王様は拳をにぎりしめ、苛立(いらだ)たしげに玉座のひじ掛けをたたき。
王妃様は真っ青を通り越し、真っ白な顔でひじ掛けにもたれかかった。
「兄上! そんな男のために王位継承権を捨てるおつもりですか!」
ルイス王子は怒り狂い、オレをギッとにらみつけた。
なんか、すごいことになってしまった……。
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