【完結】「癒やしの力を持つ聖女は王太子に嵌められ民衆の恨みを買い処刑され時を巻き戻る〜二度目の人生は誰も救いません」

まほりろ

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6話「湖畔」

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ビーネから告白され三ヶ月が過ぎた、私はまだ告白の返事を出来ずにいる。

「リア、家に籠もって仕事ばかりしていると体に良くないよ、たまには外に出て新鮮な空気を吸おう」

ビーネが家に訪ねて来て、私を森の湖畔へと連れ出した。

馬車に、お弁当に、飲み物に、お菓子にシート……これだけ準備されてしまうと断りにくい。

御者はビーネが務めた。二人きりの時間を楽しみたいから御者を雇わなかったそうだ。

湖畔に他に人影はなく、風が木々を揺らす音や、小鳥のさえずりがよく聞こえた。

木々の隙間から柔らかな日差しが差し込んでくる。

「のどかな場所ね、都会の喧騒から離れるのもたまにはいいわね」

「だろ? 外に出て日光浴しないとカビが生えちゃうぜ」

「それは困るわね」

ビーネと顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。

シートを広げお弁当を食べていると、リスやうさぎなどの小動物がよってきた。

果物を与えるとさらに数が増えた。

食べ物を咀嚼する彼らの姿に癒やされていると、茂みの奥からガサガサという音が聞こえた。

「鹿でもいるのかしら?」

呑気に構えていると、リスとうさぎが食べ物を地面に落とし、一目散に逃げていく。

野生で生きてる彼らは人間より勘が鋭い。

茂みの中に何かいる、そう気づいて茂みから距離を取ろうとした時にはもう手遅れだった。

茂みから人の背丈の倍はある大きな熊が現れた。

「きゃー!」

私は逃げようとしたが足がもつれ、転んでしまう。

「リア下がって!!」

ビーネが剣を構え、私を背に庇い熊の前に立つ。

「だめっ! ビーネ逃げて!」

「逃げてもこいつは追ってくる! 心配ない熊の一頭や二頭なんとでもなる!」

ビーネは熊の攻撃を避けつつ、剣で熊の体を傷つけていく。

だが厚い体表に阻まれなかなか致命打を与えられない。

何十回目かの攻撃でビーネの剣が熊の喉元を突いた。

熊が断末魔を上げ地面に仰向けに倒れた、それとほぼ同時にビーネも地面に膝をついていた。

ビーネが押さえている脇腹からおびただしい量の血が流れている。

「ビーネ!」

私はビーネに駆け寄り彼を支える。

「ごめんリア……帰りは君を家まで送れそうにな……い、俺はも、だめだ……一人で、帰っ……て」

ビーネはそう言って、眠るように瞳を閉じた。

ビーネの体が徐々に体温を失っていく、顔色は青を通り越して白に近い、このままではビーネが死んでしまう。

「嫌っ! ビーネ! 死なないで!!」

私の叫び声が虚しく湖畔に響く。

……癒やしの力を使えばビーネ助けられる。

幸いここには私とビーネしかいない、能力を使っても他の人に見られる心配はない。

でも万が一、癒やしの力を使うところを誰かに見られたら?

一命を取り留めたビーネが私を売ったら?

……脳裏に断頭台で首を落とされた日の映像が浮かぶ。

怖い……もう二度とあんな思いをしたくない。

でもビーネを失うわけにはいかない!

「ビーネ死なないで!」

気がつけば私は癒やしの力を使っていた。



☆☆☆☆☆



癒やしの力で傷が癒えると、すぐにビーネが目を覚ました。ビーネは傷口に手を当て、傷が綺麗に治っているのを知り驚いている。

「俺はどうして助かったんだ? リアが俺の傷口に手を当てて、リアの手が光ってそれで……」

あのときビーネは気を失っていなかったようで、自身に起きた事をしっかりと記憶していた。

「傷口が完全に塞がっている……もしかしてリアの力? 君はもしかして隣国に伝わる古い伝説の……」

この国に来て、癒やしの力を持つ聖女の話が古い伝説として残っていることを知った。

ハイル国の国王が病にふしたとき現れるという聖女、そんな古い伝説が残っていたから、王太子が自ら兵を引き連れてど田舎のアポテーケ村まで来たのだと。

「お願い何も聞かないで」

私はビーネの言葉を遮った。

「明日全て話すわ、だから今は何も聞かないで。それから今日起こったことは誰にも話さないと誓って、お願い」

「分かった今は何も聞かないよ、今日起こったこたは二人だけの秘密にすると誓うよ」

「ここに長居するのは危険よ、血の匂いを嗅ぎつけて熊や狼が出るかもしれないわ、帰りましょう」

私はビーネを急かし、馬車に戻った。  

ビーネは血のついたシャツを脱ぎ、新しい服に着替えた。湖で水遊びすることを想定し、変えの服を持ってきていたようだ。

ビーネは手綱を握りながら時折隣に座る私をチラチラ見てくる。

今日起こった事を知りたい気持ちがビーネの中にあるのだろう。

ビーネは明日全てを話すという私の言葉を信じ何も聞かないでくれた。その気遣いに心から感謝した。

私は移りゆく景色を眺めながら、これからどうしようか考えていた。


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