21 / 99
波乱の兆し
しおりを挟む「ふーん、剣道さんってアスカさんの厄介ファンなのね」
「そうなんだ。だから配信の時はアスカさんとバティングしないようにそっちでも調整してもらえるか」
「いや、あえてアスカさんとバッティングさせればいいんじゃない。本人はアスカさんに絶対にちょっかいをかけないて言ってるんだから」
「口約束だけじゃ、リスキーなように思えるんだが」
もしも剣道さんが理性を崩壊させて放送事故になった場合どうやって事態を収束させるのか、見当がつかない。
影響力が大きくなってメリットも大きくなった一方で、転けた場合のデメリットも大きいのだ。
「その分リターンは大きいでしょ、求婚ガチ恋リスナーだと噂されてる人がアスカ本人と会ったらどうなるのかとか気になって新規の人がくるし、単純にアスカがトップ攻略者とコラボするってことでアスカリスナーが喜んでくれるし。それに何より淳ならコントロールできるでしょ?」
「できるでしょ」はアリサがもうやると腹を決めている時によく使う言葉だ。
もうこの言葉を言ったということは止めるだけ無駄だな。
「その話ちょっと待った!」
半ばもう話し合いは終わったなと悟りを開いていると、社長室の扉を開けて谷崎さんが入ってきた。
「伊藤の言うとおり、世間の一大ムーブメントを形成している剣道の配信でそこまでの無理は必要がない。むしろ剣道単体でも十分だ」
「谷崎さん、お言葉ですけど、ここでウチの配信者を出さないでどうするんですか? 世間は剣道さんの配信をダンプロがやる必要があるのかと思いますし、ダンプロの配信者がコラボすると期待してたリスナーは確実に失望しますよ」
「詭弁だな。ダンプロに配信を任せるかどうかは、配信の企画の良し悪しで世間で決める。決して剣道がコラボする配信者によってではない。それにリスナーたちは自分たちの推しが輝く一瞬に期待するのであって、剣道とコラボするということには執着してはいない」
アリサの強気な態度にも、谷崎さんは負けじと舌鋒で応戦する。
俺とは社会経験が10倍近く違うこともあり、分の悪い交渉も手慣れたものだ。
「本当のところは今回の剣道の配信でアスカをヒカリと並ぶ2枚看板に仕立て上げるつもりだろう。だからこそお前は多少の難があろうと剣道の配信にアスカを組み込もうとする。年長者として助言だ。確実に大きな成功が確定している時に、欲を見せてリスク承知のベットをするな。地獄を見るぞ」
「そうだ、アリサ、やっぱりアスカさんと組ませるのはやめよう。あまりにも危険すぎる」
「谷崎さん正論ありがとうございます。全くその通りですけど、最終決定権は私にあるので貴方たちの助言も提案も受け付けません」
谷崎さんの忠告に俺が加勢して、2人がかりでアリサを止めようとするが、強権を発動して全て跳ね除けた。
あいかわらず、手強い。
だが谷崎さんもいることなのでただでこのまま引き下がるのも面白くない。
脚下は難しくとも折衷案が欲しい。
「アスカさんは絶対に外せないんだな?」
「無理ね。そこがむしろ1番の肝心要と言っても過言じゃないもの」
「じゃあそこが守られるのなら、他はどうあってもいいわけか」
「無理のない範囲ならね」
「じゃあ当日参加できるダンプロの配信者全員で剣道さんと配信をしてもらうのはどうだ? それならば剣道さんがアスカと長時間接することはないからなんとか理性がもたせられる」
「淳、あんた……」
「正気か,伊藤!?」
俺としては割と現実的なことを言ったはずなんだが、二人ともが耳を疑うような顔をしている。
谷崎さんには援護してもらえると思ってただけに、少し困惑する。
「なにかおかしなこと言ったか俺?」
「おかしいわよ。事務所総出なんて前例がないし、第一どこのダンジョンに潜るつもり? 目星つけてるところに配信に適したスペースがある場所もなければ、迷惑だって他の事務所から抗議が殺到する目が目に見えてるじゃない」
「S級ダンジョン『破滅の扉』なら大丈夫だ。巨大種が多いから道幅も広いし、大広間ならダンプロの配信者が全員入ってもあまりあるスペースがある。しかも他の事務所の配信者は1人もまだ手をつけてないから抗議が来ることもない」
「お前が正気かどうかを早計だったな。S級ダンジョンか、いつも除外して考えていたから頭から抜けていたが。確かにそう聞くと打ってつけの場所だ」
「手のひら返しましたね、谷崎さん。確かに淳の提案については無理ではなくなったけど、前例のない取り組みよ。責任は誰が取るの? 私はごめんよ」
「俺が立案者だし、もちろん俺が取るよ。何かあった時に俺が頭を下げるし、配信者と剣道さんの連絡と段取り付けも当日の進行も全部でこっちでやる」
剣道さんとオールスター配信のことを全部請け負うと申し出ると、心を落ち着けるように一度目を閉じて、アリサは言葉を続ける。
「ちゃんとアスカさんと剣道さんが目立つように絡ませてならいいけど。……剣道さんとアスカさんは同性でしょ。いくらなんでも警戒しすぎじゃない」
「前会った時に彼女がアスカの語る目はガンギマリだった。剣道さんのアスカさんへの感情は理性で抑えられるものじゃないと俺には思えてならない」
「ガ、ガンギマリね……。確かに対策くらいは考えた方が良かったかもしれないわね」
今まで現実で聴くことのない単語だったのか、アリサはたじろぐようにそういうと、剣道さんに対する認識を修正する。
「伊藤。お前予定がパンパンだろ。俺がいくらか請け負ってやろうか?」
「谷崎さん大丈夫です。元々やるはずだった次のSランクダンジョン配信にちょっとした調整が必要になるくらいですから」
「そうか、無理すんなよ」
「とりあえず、剣道さんの配信のことはこれで決定ね。お開きにしましょうか。淳、来られるメンツがわかったらこっちに一報入れ頂戴」
「了解」
剣道さんの配信に対する話し合いはオールスターで配信を行うということに決定し、お開きになった。
随分賑やかになったが、当日はその分盛り上がるだろうことを祈ることにする。
23
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる