エロゲの豚野郎に転生してなるべく怒りを買わないようにしたらヒロインたちの好感度がカンストした

竜頭蛇

文字の大きさ
2 / 48

基本スペックにおいて最強

しおりを挟む



 よりにもよって転生したのが豚野郎。
 ソシャゲによってガチャする時は大体ハズレが出るという厳しい現実を叩き込まれてなかったらこの事実に打ちひしがれていたことだろう。
 まあ豚野郎──スランは役回りこそ最底辺だが、家柄は王族公爵に次いで権力を持つ侯爵な上にこの世界でトップの魔力量を誇る王族の親族ということもあり、魔力量もトップクラスで基本スペックは高い。
 救世主であり、現人神である主人公と比べれば、総合力は低くはあるが、全体として言えばtier1くらいには入るのでスペックでいえばハズレの中でも当たりの部類と言ってもいい。
 主人公とラスボスを除いてほぼ最強のスペックだというのに、何故かませに甘んじたかというと一才努力をせず、遊び呆けて授業にもほぼ参加しなかっためだ。
 それのおかげで幼い頃は神童と言われもてはやされたというのに、才能の片鱗だけを見せるだけ見せて、覚醒せずに主人公にボコボコにやられる。
 ゲームで中級魔法しか使えないはずだったのに上級魔法を一回使ってきて焦ったら、それ以降は使ってこずに普通に倒された時はマジでなんだなんだこいつと思った。
 そういう豚野郎に関する設定を知った今から思返せばあの時に、才能だけで一つ上の位階の魔法を即興で開発してしまったのだろう。
 これだけ才能に恵まれながら一切努力しない豚野郎はなんなんだ、ほんと。
 まったく周りから幼い頃から神童としてチヤホヤされて、周りの取り巻き貴族からヘイコラされて全肯定されて、主人公たちが魔王をどうにかするので戦いの技術を学ぶ必要性がない上に並の貴族が使える魔法を何もせずとも使えたとはいえ、どうして努力しないのか。
 いや冷静に環境見てみると割とこの状況で、努力するとかきついな。
 努力をする必要性を一切感じん。
 すまんな、豚野郎。
 まあ俺は豚野郎がヘイトを買っているのを知っているので、もしもの時のために努力はさせてもらう。
 手始めに難易度が一番下のダンジョンで調子を確かめるか。
 今日ちょうど騎士学校休みだし。
 絶対にやらなければならないヘイト解除については学校に行ってからでいいだろう。
 こんな寮の一室からできることもイベントもないし。

「朝食にございます」

 これからの方針を決めると、そう言ってシルヴィアが朝食を運んできた。
 今日の俺の朝食は揚げ物の盛り合わせ大皿5枚だ。
 殺す気か。
 これもう既にヘイト溜まりすぎて、食い物で殺そうとしてきてるだろ。
 確か入学の時にあてがわれたメイドなので、逆算すると1ヶ月でこうまでもヘイトを貯めたのか。
 侮れぬ男よ。

「いや、流石に油物多くないですか? なんか怒ってたりします?」

「いえ、そんなことは……。ご主人様の注文通り揚げ物の盛り合わせ五皿のはずですが」

 真意を確かめるためにシルヴィアに尋ねると、まさかのスランが下手人だと判明した。
 どんだけ油物好きやねん。
 好きなものにしてはよくもまあこんなに見るだけで死ぬかもしれんと思う量を食うな。
 これもう才能と言ってもいいレベルだろ。

「すみません。本当に申し訳ない。そういえば俺でした。次から朝食はパンと牛乳でお願いしてもいいですか?」

「ご主人様が謝って!? はい、次からと言わず今からでもパンと牛乳でお出しします!」

「え。本当ですか。ありとうございます」

 よほど豚野郎が謝る姿が新鮮だったのか、動揺しつつもパンと牛乳を取りに行く。
 スラン、謝ってなかったのかお前。
 いやいくら何でも謝らんのはダメだろ。
 謝るようなことをしでかしてる時点でヘイトがやばいのに、謝らんとなると目も当てられんよ。

「お待たせしました!」

「いやいや、こっちのせいなのでそんなこと全然気にしなくていいですよ」

 おほお。
 朝食といえばやっぱりトーストと牛乳よ。
 バリバリムシャムシャゴクゴク!
 うまい。
 うまい。

「あのご主人様は今日はどうされたのでしょうか? 私のようなものに敬語使い、お気遣いをしてくださるとは。何かあるのでしょうか?」

 朝食を貪っていると恐る恐ると言った感じで、シルヴィアがそう尋ねてくる。
 俺としては特に何も気負わずにそのまま喋っているだけだったが気負わせてしまったらしい。
 シルヴィア側からしたら、いきなり上司が下手に出始めたものか。
 めちゃくちゃ胡散臭いな。
 クソみたいな仕事を頼む前触れにしか見えない。
 尊大な口調なので好きじゃないが、豚野郎の口調を真似るか。

「気まぐれで話し方を変えたくなっただけだ。気にしなくていい」

「そ、そうなのですか。くだらないことを尋ねて申し訳ありません」

「気にしなくていいと言っているだろ。それよりも今日は初級ダンジョンに行きたいから馬車を手配してもらっていいか?」

「承知しました。ご主人様」

 俺の真似はどうやら及第点を頂けたようで特に突っ込まれずに了承を得ることができた。
 さてとりま飯食ったら初級ダンジョンに行くか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

処理中です...