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恐怖に打ち震える元婚約者たち
しおりを挟む「秋也、なんていう奴なんだ。光輝を男として再起不能にするなんて」
「あんなやばい男がいるとはな」
ゴールデンウィーク明け摩耶の様子がおかしいことから、冬夜たちが事情を聞くと一つのDVDが渡された。
そこに映っていた光輝の末路に金山冬夜、近江律の2人は打ち震えていた。
完膚なきまでに男としての尊厳を破壊される様を見て、男として恐怖を覚えないものはいないだろう。
あまりにも都合の悪い事実に陰鬱な雰囲気が2人の間に漂っていた。
「このバケモノから離れられる修学旅行で決着をつけなければ、私たちも秋也の気まぐれで光輝と同じ結末を辿る」
「そうだな、修学旅行で決着をつけないと見せしめにされた光輝と同じめに」
ーーー
「ゴールデンウィークは大変だったみたいね」
朝方、迎えに来てくれた麻黒さんはそう尋ねてきた。
情報通の麻黒さんなので、そうではないかと思っていたが、やはり社長から事情を聞いていたようだ。
「そうだね。恵那の元婚約者の件で慣れていないことを結構やったから」
「慣れていないことでも想像以上に仕上げるのが秋也らしいわね」
「想像以上って言っても光輝くんを配信者として復活させたいっていう恵那の要望には、光輝くんが廃人状態だったから無理だと思って断念しているからな」
「あら、彼なら配信してるわよ」
「え」
会話が噛み合わない意識レベルで、完全に配信できる状態ではないと思っていたので麻黒さんの言葉に驚かされる。
あの状態でどうやって配信をしているというのか。
「ほら」
麻黒さんはスマホで動画投稿サイトを開くと、光輝くん扮する最上ヒカリのライブ配信を画面に表示させた。
ジムナイル:ヒカリたそ、がんばえー
『任せんしゃい!』
そこにはリアルタイムで表示されるコメントにハキハキと答えるヒカリの姿が映っている。
「本当だ」
「でしょ。私の推測だけど、報告とあなたの言葉から鑑みるに光輝くんとして人格が潰れただけでヒカリとしての部分だけはまだ生きているんじゃないかしら」
「確かにそれなら廃人状態でも配信できるけど」
廃人状態を見てる分、事実としてそれがあったとしても光輝くんがこうして立派に配信しているのが信じられない。
だが麻黒さんが裏も取らずにこんな情報を持ってくるわけがないので嘘ということは絶対にないだろう。
「いや、事実として配信してるし、やっぱりそれしかないね」
「でしょ。じゃあやっぱり要望もこなせたってこといいわね。お疲れ様」
なんだか、いいように言いくるめられたわけではないが、特に咎められてる訳でもないしこれはこれでいいか。
「もしよかったら放課後デートしてもらっていいかしら」
事実確認を終えると、麻黒さんはデートに誘ってくれた。
ゴールデンウィークは麻黒さんはセールシーズンということで、モデルの仕事に駆りだれていた上、俺も光輝くんの件で出張っていて、予定が合わなかっため、久しぶりになる。
「放課後か。今日はバイトもないしいいよ」
「じゃあ決定ね。修学旅行に持って行くものを買い出しに行きましょう」
そういえば、あと修学旅行まで二週間後なので必要なものを揃えなければいけなかった。
俺からすればものを揃えるとなると都市圏に出向くしかないが、麻黒さんはセレブの中のセレブなので事情が少し異なる可能性もありそうだ。
詰まっているには詰まっているのだが、財布の中身が心配になってきた。
行く前に少しお金を補充した方がいいかもしれない。
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