幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

水着審査会

「３人とも来てたんだね」

「私は趣味の水着も購入したかったので、あまり人目の無さそうな今日来たんです」「日取りも良かったし、今日以外だと予定が入ってる日が多かったから」「混んでる時に行くと他の人にも迷惑がかかるから」

　理由を聞き、三者三様に答えたところを見るとばらけてきてたまたまここでかち会ったという感じのようだ。

「2人の様子からしてちょっと邪魔になりそうですし、ここから退却しますね」

「あなたたちの方が先にいたのだし、後から来た私たちが追い出すのは理には叶わないじゃない。ゆっくりしていればいいわ」

「陽菜……」「悪役令嬢っていう割に優しいのね」「目にゴミが」

　2人で居たことでデート中であることを察した恵梨香から気を遣った申し出に麻黒さんが心の広い返事をしたので３人とも感動したしみじみとした反応を見せる。

「それにできればお互いにどの水着で行くのが無難か見合った方が良いだろうし」

「確かに私もどこまでかアウトでどこまでかセーフか、頭を悩ましていたところなのでちょうど良いかもしれませんね」

「ぜ、全員の水着を見比べる。ボディラインの差が嫌でもわかっちゃうじゃない。お、おのれ、ポテチ」

「誰の水着が正義か、ここで雌雄を決すると？」

　麻黒さんがどの水着か似合うか、見合って決めようと申し出ると賛同と緊張を半々にした言葉が聞こえてくる。
　正直俺1人の意見で客観性を担保するのは難しそうだなと思っていたので、この申し出は大変助かる。
　できれば女性ものの水着のトレンドとかの意見も欲しいからな。

「じゃあ、言い出しっぺの私から行くわね。10点中何点かで評価お願いするわね」

　麻黒さんはそういうと試着室の中に入っていく。
　衣擦れの音が一瞬するかと思うと、タンクトップとショートパンツのような形をしたヒラヒラの水着を来た麻黒さんが出てきた。
　摩耶はプール嫌いだったので同世代の女子の水着といえば、スクール水着くらいしか見たことないので新鮮だ。
　これはラフな感じだし、修学旅行の水着としてはうってつけではないだろうか。

「10点。ラフな感じでおしゃれだし良いと思うよ」

「8点。タンキニ。セクシーが足りていません。ヘソの露出を」

「10点。滲みでる美少女感とヒラヒラして肌が見え隠れしそうなところにエロすが」

「10点。過度に露出しないことでスタイルの良さをかくし、周りに劣等感を与えない配慮がある」

　俺に続くような形で恵梨香、恵那、精華といった順で評価を口にしていく。
　概ね好評だ。
　評価の内容について若干思わないこともないが、多様性を保つためにあえて突っ込まないことにする。

「概ね良さそうな感じね。これで決定で良さそうかしら。次どうぞ」

　麻黒さんはその場でハンガーの溝のスイッチを押し、購入すると試着室に入るように促す。

　恵梨香が水着の束を持って試着室に入る。
　趣味が趣味だけに不安が残るが、修学旅行のものは別で選ぶと言っていたし、多分大丈夫だろ。

　いくらか待つとオフショルダーの水着を着た恵梨香が出てきた。
　肩もそうだが胸元が大きくはだけている。
　ビキニよりはマシだが、少し色気が出過ぎている気がする。

「8点。露出度的にギリギリ」

「10点。恵梨香らしいし、どんな時も姿勢を変えない意思の強さを感じるわ」

「5点。全身凶器。せめて乳をしまおう」

「7点。体のラインの良さが際立ちすぎて、一部の人間がダメージを受ける。今まさに目の前で恵那がダメージを受けている」

　俺、麻黒さん、恵那、精華の順で評価を言って行く。
　恵梨香は少し思案するように顎に手を持っていくと結局スイッチを押して購入した。

「次はあたしがいくわ。最後は目立つし」

　どちらが試着室に向かうかと思うと恵那が率先して試着室に向かった。
「水着きつ！」と言った声が聞こえて来て、大丈夫かと思いつつ待つと、ヒラヒラスカートのワンピースタイプの水着を着た恵那が出てきた。
　元々身長が小さく、凹凸の少ない体型をしているため幼い印象を受けるが、、すごく似合っている。

「10点。びっくりするくらい似合ってる」

「9点。若干犯罪に巻き込まれそうな匂いがするけど、似合ってる」

「5点。露出度が少な過ぎます。水着の意味がありませんし、なんだか犯罪の匂いがします」

「7点。幼さが前面にでた結果、老け気味の人への配慮が欠けてしまっています。それに誘拐されそうな気が」

　俺、麻黒さん、恵梨香、精華の順で評価を下すと、「どこに犯罪の匂いがあるのよ！　あんたらの心が汚れているだけよ！　ボディライン隠しでこれしか選択肢がないっていうのに」と恵那は不平を言いながら水着を購入した。

「次は自分ですね。私が手本を見せてあげましょう」

　精華は若干不安になる言葉をいうと中に入っていく、水着の中に長めの生地のものがあったが。
　あれは……。
　俺がまさかと思っていると、ウェットスーツ姿の精華が出てきた。

「8点。インストラクター側と間違えそう」

「10点。泳ぐという上ではこの上ない格好」

「5点。露出がない上、指導者側と混じて現場が混乱する可能性が」

「5点。ガチ勢すぎて引く。生徒側でそれは普通に不審者」

　俺、麻黒さん、恵梨香、恵那の順で評価を述べると、精華は「手本が……」と呻き声をあげた。
　精華は次に着たハイネックとロングスカートの水着で購入を決めると、閉店の時間が近づいて来たのでお開きになった。