幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

文字の大きさ
44 / 64

理事長の狙い

しおりを挟む

 三日目。
 今日はいよいよ学校側から何をするのか、発表される日だ。
 去年はコンテストをしたということなので、ホテル内に用意した会場の中で有名企業の社長にレクチャーを受けつつ、ああでもないこうでもないとやると思ったが、想像に反して、会場は有名なリゾート地の離れ小島だった。
 三つのビーチと水族館、レジャー施設に、遊園地、もっぱら一日ではとてもではないが回りきれないと評判の場所だ。
 周りの生徒を見るともうすでに、周りの施設に目を輝かせて、学校から紹介されるも催しなど忘れて、遊ぶ気満々だ。

「早く冬夜、行きましょう!」

「お、おう。いきなり元気になったな、摩耶。しっかりとコンテストの考えてるんだよな」

 多分に漏れず摩耶たちも遊ぶ気満々のようで、コンテストの説明など聞かずに、二人で遊園地の方に突撃していく。
 普通に考えれば、もう論外の域の二人だが、理事長が援護すると言っていたので、ここでアウトというのはないだろう。

「生徒諸君ですが、これから学校主催のコンテストを始めます。ルールはシンプルなもので今日の放課後まで商品アイデアを考えてもらい、午後6時ごろに島内にあるホテルで発表、そして社長たちから評価していただきます。ではそれまで島内の施設で頭を柔らかくしながら熟考して、挑戦するようにお願いします。解散」

 二人の後ろ姿が見えなくなると、生徒たちの様子を見かねてか、予定よりも早く教師が現れ、簡単に説明した。
 教師が無断で動く生徒を注意することなく、逆に教師の方が対応して動いているところを見ると生徒と教師間にあるパワーバランスを意識せざるを得ない。

「話にならないわね。理事長はどれだけの不正をしてあれを立て直すのかしらね」

 麻黒さんはため息を吐くと、理事長について批判する。
 もはや冬夜たちについては眼中にないようだ。
 どう見てもさっきのは冬夜が摩耶に振り回されていたし、誰もがそう言った判断を下してもおかしくないだろう。

「一応あの人は自由自在に色々なことに干渉できるから。それにしても、コンテストとは真逆のような場所が選ばれたね」

「案外大見えを切ったけど。うまい具合に周りの社長に協力を取り付けられてないんじゃないかしら。こうやって片手間でやるように見せかけることにすれば、代理として戦わせようとしている冬夜たちが負けてもさして懐は痛まないもの」

 確かに警戒はしていたが、冷静に考えれば、わざわざ麻黒さんの家と対立することを選ぶ企業は少ないか。
 麻黒家は国内外に影響力があるので対立すれば、天弦家が影響力を持っている国内でしか商売をおこえなくなる危険があるのだから。
 天弦家引いては理事長の名誉のために、未来の可能性を棒に振ってまで対立しようと思うものはいない。

「理事長は抜け目のないイメージがあったから、今回のことが杜撰すぎるのが俄かに信じられないね」

「確かにね。もしかしたら前の言葉で警戒を誘導して、他のことを狙っているのかも。今わざわざ第三者が介入できる環境においていることを考えると直接的なもので」

「直接的なものって、襲撃ってことだよね」

「黒桐から花園組の人間が大量にこちらに来ているらしいからその可能性が高いように感じるわ」

 花園組がここに来ているのか。
 確かに理事長との関係に、前回の傭兵会社の社長と接触して半ば敵対するような態度をとっていることを考えれば、庇護を解除して、逆に攻めてくる可能性も考えられないわけでもない。
 精華には手を出さないと言われているが、精華の家は花園本家というわけではないので伝えられていないということはあるだろう。

「アイデアも考えつつ、ちょっかいを掛けられないように移動した方がいいね」

「巻き込むと大変なことになりそうだし、今日は2人で行動することにする」

 周りを巻き込むか。
 確かに一つの勢力の長である花園組は周りの恵梨香たちを危害を加えても、どうにでもできるような力を持っているし、ありえない話ではないだろう。

「そうだね」

 とりあえずは標的とされる俺と麻黒さんが、恵梨香たちから離れて行動するのが一番いいだろう。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...