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理事長の狙い
しおりを挟む三日目。
今日はいよいよ学校側から何をするのか、発表される日だ。
去年はコンテストをしたということなので、ホテル内に用意した会場の中で有名企業の社長にレクチャーを受けつつ、ああでもないこうでもないとやると思ったが、想像に反して、会場は有名なリゾート地の離れ小島だった。
三つのビーチと水族館、レジャー施設に、遊園地、もっぱら一日ではとてもではないが回りきれないと評判の場所だ。
周りの生徒を見るともうすでに、周りの施設に目を輝かせて、学校から紹介されるも催しなど忘れて、遊ぶ気満々だ。
「早く冬夜、行きましょう!」
「お、おう。いきなり元気になったな、摩耶。しっかりとコンテストの考えてるんだよな」
多分に漏れず摩耶たちも遊ぶ気満々のようで、コンテストの説明など聞かずに、二人で遊園地の方に突撃していく。
普通に考えれば、もう論外の域の二人だが、理事長が援護すると言っていたので、ここでアウトというのはないだろう。
「生徒諸君ですが、これから学校主催のコンテストを始めます。ルールはシンプルなもので今日の放課後まで商品アイデアを考えてもらい、午後6時ごろに島内にあるホテルで発表、そして社長たちから評価していただきます。ではそれまで島内の施設で頭を柔らかくしながら熟考して、挑戦するようにお願いします。解散」
二人の後ろ姿が見えなくなると、生徒たちの様子を見かねてか、予定よりも早く教師が現れ、簡単に説明した。
教師が無断で動く生徒を注意することなく、逆に教師の方が対応して動いているところを見ると生徒と教師間にあるパワーバランスを意識せざるを得ない。
「話にならないわね。理事長はどれだけの不正をしてあれを立て直すのかしらね」
麻黒さんはため息を吐くと、理事長について批判する。
もはや冬夜たちについては眼中にないようだ。
どう見てもさっきのは冬夜が摩耶に振り回されていたし、誰もがそう言った判断を下してもおかしくないだろう。
「一応あの人は自由自在に色々なことに干渉できるから。それにしても、コンテストとは真逆のような場所が選ばれたね」
「案外大見えを切ったけど。うまい具合に周りの社長に協力を取り付けられてないんじゃないかしら。こうやって片手間でやるように見せかけることにすれば、代理として戦わせようとしている冬夜たちが負けてもさして懐は痛まないもの」
確かに警戒はしていたが、冷静に考えれば、わざわざ麻黒さんの家と対立することを選ぶ企業は少ないか。
麻黒家は国内外に影響力があるので対立すれば、天弦家が影響力を持っている国内でしか商売をおこえなくなる危険があるのだから。
天弦家引いては理事長の名誉のために、未来の可能性を棒に振ってまで対立しようと思うものはいない。
「理事長は抜け目のないイメージがあったから、今回のことが杜撰すぎるのが俄かに信じられないね」
「確かにね。もしかしたら前の言葉で警戒を誘導して、他のことを狙っているのかも。今わざわざ第三者が介入できる環境においていることを考えると直接的なもので」
「直接的なものって、襲撃ってことだよね」
「黒桐から花園組の人間が大量にこちらに来ているらしいからその可能性が高いように感じるわ」
花園組がここに来ているのか。
確かに理事長との関係に、前回の傭兵会社の社長と接触して半ば敵対するような態度をとっていることを考えれば、庇護を解除して、逆に攻めてくる可能性も考えられないわけでもない。
精華には手を出さないと言われているが、精華の家は花園本家というわけではないので伝えられていないということはあるだろう。
「アイデアも考えつつ、ちょっかいを掛けられないように移動した方がいいね」
「巻き込むと大変なことになりそうだし、今日は2人で行動することにする」
周りを巻き込むか。
確かに一つの勢力の長である花園組は周りの恵梨香たちを危害を加えても、どうにでもできるような力を持っているし、ありえない話ではないだろう。
「そうだね」
とりあえずは標的とされる俺と麻黒さんが、恵梨香たちから離れて行動するのが一番いいだろう。
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