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悪役令嬢と夏祭りのあの子
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ここの遊園地は日本の関西に支部のある世界的にも有名なところだが、シンガポールのある支部はまた特色が違う。
日本の支部はアメリカのストリートをイメージしたような作りだったが、ここはそのまま土地の利を生かすためか、南国仕様になっている。
「不釣り合いに日系人が多いわね」
その影響か、周りに日系人がいるとその姿がよく目立った。
街中で、日焼けした現地人がいる目立っていたのに対して、遊園地内には肌の黄色い日系人が異様に多い。
「学園の生徒が来ているとは言え、異様に多いね」
街中とはまるで逆だ。
日系人の中にまばらに現地人がいる。
遊園地で観光客が多いということを踏まえても、この偏り具合は流石におかしい。
「前にも同じことがあったな」
十年前の夏祭りの時と状況が似ていた。
あの時も女の子周りを幾何学模様のシルエットを持った集団が囲むように配置されていた。
前回は逃げようとすると逆に囲まれて追い詰められた。
人がまばらになっている部分ではなくて、包囲を作った部分に行くのが正解だったはずだ。
「陽菜、こっちに行こうか」
おおよそ俺の夏祭りの経験など、知るよしもないはずだが、麻黒さんは理由問わなかった。
「ええ」
ただ頷いて、付いてきてくれている。
今の忙しない状況では非常に助かる。
スリルで興奮しているのか、麻黒さんからは若干弾んだ声で話しかけてくる。
「なんだか、懐かしいわね」
「懐かしい? こんな経験が昔もあったの?」
「あったわよ」
かなり特別な体験だと思うのだが、そんなことがあるのか。
にわかに信じられない。
麻黒さんの表情を見ると、楽しそうに笑みを浮かべている顔が、あの時夏祭りにいた女の子と似ているような気がした。
状況的に考えて、日本有数の企業の令嬢が夏祭りにポツンといるはずはないと言うのに。
ダメだ。
定かではないことを気にするより今はこの集団を早く遠ざけるための手を打つ方がいいだろう。
前より人が多いようでまだ包囲網を維持されているし。
できれば、土地勘のないここでこれ以上イタチごっこも続けたくない。
だが素直に地元の警察に事情を話しても謎の集団から追われているという曖昧な言葉で動いてくれる確率が低いことを考えると、対応さぜる負えない状況を作ることがまず必要だ。
周囲にちょうど良さそうなものを探すとあからさまに人がはけているジェットコースターが見えた。
おそらくこの集団が用意した罠だろう。
前と同じ連中ならば爆弾を仕込んでいるはずだ。
ちょうど良いのでそれを利用して、警察が対応しなければならない状況を作るか。
「ジェットコースターに乗ろうか」
「いいわね」
俺の言葉に麻黒さんは笑みを強める。
前回も同じような経験があるということから、状況から罠を利用しようと思っていることに気づいたのだろう。
話が早くて助かる。
「貸切ね」
「あからさまだよね」
流れるようにスタッフに搭乗口に案内されると、待つ者も乗る者もいない伽藍堂のジェットコースターが見えた。
現地人のスタッフが案内しようとすると、横から日系人のスタッフが出てきて、俺たちのガイドを始めた。
おそらく外にいる集団のメンバーの一人だろう。
彼が先導するために背を向けたのを確認すると、荷物にあるペンケースの中から、折りたたみ式の鋏をポッケに忍ばせる。
爆弾解除のやり方は昔俺より才能があるある子に教えた時に習得しているので、道具を揃えた今、万事抜かりはない。
そのまま促されるままに荷物を預け、先頭に搭乗すると、安全レバーの根本ーー死角からガムテープでくっつけられた爆弾を見つけた。
当時と同じで導線が飛び出しているところを見ると、これも手作りのようだ。
「GO!」
発見すると同時に日系人のスタッフがニコニコしつつ、ジェットコースターをスタートさせた。
彼が視界から消えると爆弾の導線の一つをハサミで切り、ガムテープを剥がして手に持つ。
「前は解除して終わりだったけど、今回は投げることになるのね」
「騒ぎになってくれないと困るし、下にいる人はもう離れて退避してるから都合がいいからね」
ジェットコースターの吊り上げが頂点に達したところで俺は誰もいない地面に向けて爆弾を投げる。
そうすると爆音が響く共にジェットコースターが降り始めた。
「初めて乗るけど悪くないわね、ジェットコースター」
「初めてだったのか、陽菜」
初めてのジェットコースターがこんな形で申し訳ないので、少し断りを入れようかと思うと、麻黒さんの髪を跳ねさせるのが見え、ドキリとした。
風に煽られる彼女の横顔が、十年前の夏休みに会った前髪カチューシャで留めたロココの女の子の顔と一致した。
印象深い出来事で彼女のことははっきり覚えているので間違いない。
麻黒さんはあの時の女の子だ。
日本の支部はアメリカのストリートをイメージしたような作りだったが、ここはそのまま土地の利を生かすためか、南国仕様になっている。
「不釣り合いに日系人が多いわね」
その影響か、周りに日系人がいるとその姿がよく目立った。
街中で、日焼けした現地人がいる目立っていたのに対して、遊園地内には肌の黄色い日系人が異様に多い。
「学園の生徒が来ているとは言え、異様に多いね」
街中とはまるで逆だ。
日系人の中にまばらに現地人がいる。
遊園地で観光客が多いということを踏まえても、この偏り具合は流石におかしい。
「前にも同じことがあったな」
十年前の夏祭りの時と状況が似ていた。
あの時も女の子周りを幾何学模様のシルエットを持った集団が囲むように配置されていた。
前回は逃げようとすると逆に囲まれて追い詰められた。
人がまばらになっている部分ではなくて、包囲を作った部分に行くのが正解だったはずだ。
「陽菜、こっちに行こうか」
おおよそ俺の夏祭りの経験など、知るよしもないはずだが、麻黒さんは理由問わなかった。
「ええ」
ただ頷いて、付いてきてくれている。
今の忙しない状況では非常に助かる。
スリルで興奮しているのか、麻黒さんからは若干弾んだ声で話しかけてくる。
「なんだか、懐かしいわね」
「懐かしい? こんな経験が昔もあったの?」
「あったわよ」
かなり特別な体験だと思うのだが、そんなことがあるのか。
にわかに信じられない。
麻黒さんの表情を見ると、楽しそうに笑みを浮かべている顔が、あの時夏祭りにいた女の子と似ているような気がした。
状況的に考えて、日本有数の企業の令嬢が夏祭りにポツンといるはずはないと言うのに。
ダメだ。
定かではないことを気にするより今はこの集団を早く遠ざけるための手を打つ方がいいだろう。
前より人が多いようでまだ包囲網を維持されているし。
できれば、土地勘のないここでこれ以上イタチごっこも続けたくない。
だが素直に地元の警察に事情を話しても謎の集団から追われているという曖昧な言葉で動いてくれる確率が低いことを考えると、対応さぜる負えない状況を作ることがまず必要だ。
周囲にちょうど良さそうなものを探すとあからさまに人がはけているジェットコースターが見えた。
おそらくこの集団が用意した罠だろう。
前と同じ連中ならば爆弾を仕込んでいるはずだ。
ちょうど良いのでそれを利用して、警察が対応しなければならない状況を作るか。
「ジェットコースターに乗ろうか」
「いいわね」
俺の言葉に麻黒さんは笑みを強める。
前回も同じような経験があるということから、状況から罠を利用しようと思っていることに気づいたのだろう。
話が早くて助かる。
「貸切ね」
「あからさまだよね」
流れるようにスタッフに搭乗口に案内されると、待つ者も乗る者もいない伽藍堂のジェットコースターが見えた。
現地人のスタッフが案内しようとすると、横から日系人のスタッフが出てきて、俺たちのガイドを始めた。
おそらく外にいる集団のメンバーの一人だろう。
彼が先導するために背を向けたのを確認すると、荷物にあるペンケースの中から、折りたたみ式の鋏をポッケに忍ばせる。
爆弾解除のやり方は昔俺より才能があるある子に教えた時に習得しているので、道具を揃えた今、万事抜かりはない。
そのまま促されるままに荷物を預け、先頭に搭乗すると、安全レバーの根本ーー死角からガムテープでくっつけられた爆弾を見つけた。
当時と同じで導線が飛び出しているところを見ると、これも手作りのようだ。
「GO!」
発見すると同時に日系人のスタッフがニコニコしつつ、ジェットコースターをスタートさせた。
彼が視界から消えると爆弾の導線の一つをハサミで切り、ガムテープを剥がして手に持つ。
「前は解除して終わりだったけど、今回は投げることになるのね」
「騒ぎになってくれないと困るし、下にいる人はもう離れて退避してるから都合がいいからね」
ジェットコースターの吊り上げが頂点に達したところで俺は誰もいない地面に向けて爆弾を投げる。
そうすると爆音が響く共にジェットコースターが降り始めた。
「初めて乗るけど悪くないわね、ジェットコースター」
「初めてだったのか、陽菜」
初めてのジェットコースターがこんな形で申し訳ないので、少し断りを入れようかと思うと、麻黒さんの髪を跳ねさせるのが見え、ドキリとした。
風に煽られる彼女の横顔が、十年前の夏休みに会った前髪カチューシャで留めたロココの女の子の顔と一致した。
印象深い出来事で彼女のことははっきり覚えているので間違いない。
麻黒さんはあの時の女の子だ。
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