幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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最先端

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 修学旅行二日目。
 前日の夜に、精華の婚約者である近江くんがホテルに帰ってこないというトラブルがあったが、執事が直接彼の安否を確認したため、特に大きな問題にはならなかったようで支障無く、修学旅行は続いている。

 若干近江くんが不穏な動きをしている以外は特にこれと言って、こちら側に不都合なことは起きていない。

 あるかもしれないものに怯えていても始まらないので、事が起きるまではシンガポールを楽しんだ方が賢明だろう。

 今日はちょっとした課題で、流行の調査を出された程度で基本自由行動だ。
 流行の調査は紙ペラ一枚で片側に、流行の商品の名前と3行の説明記述欄が用意されているだけなので、5分あれば片付けられることは間違いない。
 まずは後顧の憂いを断つために課題から先に処理して、残りの時間を観光をするのが、一番よさそうだ。

「課題を先に終わらせちゃおうか」

 先生から課題の説明と門限の夕方6時までに戻ってくるようにという注意事項を聞き、解散になると自ずと皆集まってきたのでそうとりあえずの方針について提案する。

「いいわね。絶対にはに外せないところは流行り物が集まる中心街だったからちょうどいいわ」

「いいわね。シンガポールで一番面白いところはあそこだからあたしも賛成」

 俺の提案に麻黒さんと恵那が賛同してくれた。
 俺はシンガポール初なので知らなかったが、シンガポールの中心街は観光の目玉といっても過言ではないところのようだ。
 シンガポールは割と最先端というイメージ以外はないので、具体的にどんな感じのような場所なのか、全く想像できない。

「百貨店も美術館もありますからあそこはなんでもありますからね」

「日本語が堪能な店員さんもたくさんいますし」

 恵梨香と精華の発言からも利便性もなかなかよさそうだ。

 ーーー

 実際に来て、麻黒さんたちお金持ちの面々が中心街にこぞって訪れている理由がわかった。
 道なりに見るからに煌びやかな高級ブランド店が並んているからだ。
 お金持ちの多い国とは聞いていたが、これだけの高級店を通りに並べているのを見ると、日本とは比べ物にならない比率で億万長者が存在することを実感する。

「やっぱりもうすっかり様子が変わってますね」

「ショッピングモールとかできて、庶民向けの建物増えているわね」

 お金持ち用の建物が多いかと思ったが麻黒さんの発言で、周りを良く見回すと、見覚えのあるロゴマークがあるのが見えた。
 日本のファストフード店のロゴだ。

「誰でも楽しめるような場所なんだね」

「お金持ち専用というよりは流行の発信地ていう意味合いが強いから」

 なるほど。
 高級店が多いのは、お金持ち専用というよりは新しい商品を開発する余裕があるところが集まった結果ということか。

「MOPPLEはまだあるみたいね。当時勢いがある店として紹介されたけど淘汰されずに残ったんだ」

「ここの商品、本当に最先端を言ってるというか、尖ってますから。その心配なんとなくわかります」

 訳知りの麻黒さんと精華がそう呟くと、通りの入口付近にある文字だけのシンプルな看板を掲げた店に視線を飛ばす。
 見た感じは普通の服屋さんのような感じなので、二人の言葉のようにそんな不思議な感じには見えない。

「そんなにすごいところなのか。どういう意味かはわかってないけど最先端てことは課題を負わせるにはうってつけだし、そこから見てみる?」

 ーーー

 店の中に入ると、早くも滅多に見もしないものが目の前に現れた。
 ネオンカラーの胸当てだ。
 最先端に行っているとは聞いていたが、これは想像だにしていなかった。
 既存のファションに合うように思えない。

「確かに最先端に行ってるね」

 麻黒さんたちも俺と同じ感想なのか、何に使えるんだといったような顔して、胸当てを手に取って見ている。

「オキャクサン、ソレイイヨ。ユニセックスダカラ、オトナモオンコモダイジョウブ」

 そこに片言の日本語を話す店員さんが現れ、胸当てを勧めてくる。
 勧められてもどう着れば思い、店員さんに目を向けるとちょうど胸当てを着用していた。
 両胸に胸当てをつけ、その上にジャケットを羽織っている。
 際どい格好のように見えるが、セクシーというよりも奇抜と言った印象が強い。
 たまにSNSで流れてくる最先端のファッションに身を包んだパリコレのモデルさんを見ているような感じだ。

 実用性があるか、ないか、言われればないが、課題のものとしてはこれ以上のものはないように感じる。

 課題としては名前と説明を加えればいいのだが、一応念のために一つ購入した。


 ーーー

「ハアハア!」

 秋也たちが観光を楽しむ一方で、律はカルトの素晴らしい思想に触れ、神に奉仕する栄誉を理解し、ギルドに加入していた。
 ムサくるしいヤクザものたちに追われながら、ギルドの幹部から渡された爆弾を運ぶ。

「これで悪役令嬢も花園組を浄化されて、神が再臨なさることができるようになる」

 危機的状況にありながら、目を爛々と輝かせ、恍惚な表情を浮かべる。
 カルトへの信仰という絶対的な正義を手に入れた律にはもはや恐ろしいものなど存在しなくなっていた。


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