幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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話し合い

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 客間に案内されると、すぐに和服の人たちがお茶を出してくる。
 いつもは家庭教師で横に座った状態で出されているので、こうして相対している状態で出されのは新鮮だ。
 釣り合いの取れた天秤に掛けられているような、一瞬で壊れそうな危うい緊張感を感じる。

「婚約の件、秋也君は乗り気ではないみたいね」

「庶民の俺には馴染みの薄いものですし、今の弱っている状態の精華に対して、わかりやすい依存先を用意するのは精華が再起不能になる未来しか見えませんから」

「いいじゃない。ダメならそれでも。あの子が何も考えないようになっても、命が保障されれば私にとっては及第点よ」

 俺の危機感に対してのタマコさんの返事にギョッとする。
 流石に極端がすぎる。
 命が大事というのは確かにわかるが、それ以外を蔑ろにしていいなんて。

「極端すぎます。せめて精華が立ち直ってからてから、婚約の話を進めることはできないんですか」

「待ってもどんどんと調子を悪くしていくだけなのだから、待っても意味はないわ。こうして婚約だったり大きな環境の変化を入れる以外にはもはや手はないでしょうに」

 立ち直すためにあえて、婚約を進めようというのか。

 確かにどんどんひどくなっていく様子を見ていけば気が気ではなくなることはわからないことではない。

「それに今ちょうど危険人物がいるから。秋也君には精華のそばにいて欲しいのよ」

 危険人物か、一応暴力団の類ではあるので、抗争相手とかそう言ったところだろうか。
 俺よりもそういう荒事に慣れてる花園組の人が対応するのがいいと思うのだが。

「俺ですか。人数もいるし、花園組の人たちの方が頼りになると思うんですけど」

「無理ね。前うちの子で処分しようとしたけど失敗したもの。唯一目があるのは秋也君しかいないわ。あなたには精華を、物理的にも精神的にも助けて欲しいの」

「俺だって精華の力にはなりたいですけど、やっぱり婚約の形は納得できません。他の形でやらせてもらいます」

 タマコさんの提案を否定して、別の案を出すとタマコさんはわずかに目を鋭くすると、戻した。

「ひとまずは置いておくことにしておきましょうか。無理矢理して秋也君が怒ったら、怖そうだし」

 タマコさんは最後にそう冗談めかしてそういうと、婚約の件についての話し合いはお開きになった。
 内心彼女がかなり焦りを抱いていることを知ってしまったので、できるだけ精華が立ちなおれるように動いた方が良いことは確かなような気がする。
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