幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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押しかけメイド

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「お帰りなさいませ、ご主人様」

 プール掃除から花園家の話し合いと色々とあり、若干精神的な疲れが溜まってきたなと思いつつ、家の玄関の扉を開けると、理事長ーー正確には元理事長である天弦さんがメイド姿で俺を出迎えていた。

「時効にはならなかったんですね」

 しばらくは天弦家の仕事があるということで、俺の家には訪れておらず、そのまま自然消滅したのではないかと思っていたのだが、ちゃんと生きていたようだ。

「ご飯にします? お風呂にします? それとも……」

「それはメイドの言う言葉じゃない気がします」

 新妻が帰ってきた夫に言うセリフだ。
 生粋のお金持ちでメイドなど飽きるほど見て、知っているというのに、なぜその言葉を使ったんだ。

「なっ!? お父様に聞いたのにそんなわけは」

 どうやら、実の父親に騙されたようだ。
 天弦さん本人が女性ということもあり、男性に対するメイドの接し方がわからないから、父親に聞いたというところだろうか。
 意外に茶目っ気のあるお父さんのようだ。

「メイドさんには冗談の言うことも必要なので、その類だと思います」

「フ! 秋也君、君に言われる前にそんなことくらい察していました」

 おそらく察していないことは明白だったが、あえて指摘することはしないことにした。
 それよりもこのまま自宅にいられても気が休まらない上、親に対してメイド服の天弦さんの存在をうまく説明できる気がしない。
 下手を打てば、家族会議ものだ。

「天弦さん、無理をしなくていいですから、とりあえず今日はこれでお開きにしましょう」

「秋也君、お子様のあなたにはわからないかもしれませんが、大人には約束を破ることで崩壊してしまうプライドがあるんです。無理やりであろうと一度受けてしまった仕事はやり遂げなけば、私は私を軽蔑します」

 人として立派だとは思うが、現在の状況では迷惑でしょうがない。

「天弦さんが困らなくとも、俺が困るんです。今の状況をどう説明するんですか?」

「そっくりそのまま説明すればいいんじゃないですか」

「とてもじゃないですけど、突飛すぎますし、俺が嘘をついてると思われますよ」

「それはあなただけで説明した場合でしょう。ここには天弦家の当主である私がいます。それを証明すればいいだけです」

 おそらく大元の企業で、実行部隊は別の末端の企業なので、一般の人は天弦家のことは知らない気がするから流石に無理があるような。

「メ、メイド!? 我が家で息子が嬢を呼んで特殊すぎるプレイをしてる!?」

 そう思っていると、よりにもよって母さんが早く帰ってきて、メイド姿の天弦さんを見た瞬間、激しく勘違いをしてしまった。

「ご安心してください、お母さん。私は天弦綺羅です」

 何か誤魔化しの言葉を言おうと思うと、天弦さんが自己紹介をした。

「やめて……! 母親の前で源氏名を名乗らないで!」

 やはりというか、天弦さんの思惑が外れて、母さんがマインドブレイクしてしまった。

「な、なんだこれは!? 玄関が破廉恥だぞ!!」

 どうしたものかと思っていると、父さんが帰ってきて、勘違いが加速していく。
 確実に天弦さんを含めて家族会議に突入する。


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次の更新は16日なります。
よろしくお願いします。
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