幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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家族会議

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「秋也……、メイドプレイが好きなの?」

「いや、そうでもないけど」

母さんが俺の性癖にメスを入れてきたので、否定を入れる。
まさか性癖を母親から尋ねられる日が来るとは思いもよらなかった。
せめてもの救いはこれの被害が家の中で止まっていることだろうか。

「母さん、思春期の息子に直球すぎるよ。まず事情を聞こうじゃないか。天弦さん、どうして我が家に?」

「仕事です」

天弦さん。
なぜ今嬢を呼んだと疑われている状態で、素直に答えるのだろうか。
そんな答え方をしたら、疑いの言質が取られたと言っても過言ではない。
ドヤ顔をしているところから悪意はないようだが。

「メイドが好きだったのか、秋也」

おかげで疑いが確定した上、メイド好きという尖った性癖があることになってしまった。
別に俺の性癖については誤解を受けてもいいが、天弦さんがこれから先、俺の家族に嬢と思われてしまうのは居た堪れない。

「いや違うよ、普通に誤解だよ。この人はバイト先の知り合いの人で罰ゲームでメイドをやることになって来ただけだよ」

「ああ、お金持ちの関係者の方か。お金持ちは趣味が偏ったことが多いし、そういうこともあるか」

きな臭いところは伏せて、簡単に説明すると、父さんはお金持ちに対して偏った認識があったのか、納得したようだ。

「お金持ちといえばどもわざわざなぜウチで罰ゲームをするのか、わからないわよ」

流石に母さんは疑り深い性格なので、流石に今の一言で納得するまでには至らなかった。
そこまで行くとタマコさんことなどを説明しなければならないが、あまり部外者にこういう話をした方がいいものだろうか。
何かあった時に口封じに母さんと父さんが不利益を被ることも考えられるような気もするが。
天弦学園に通って、大企業の関係者と関わりあっている時点で、すでにアウトか。

「実はーー」


ーーー

包み隠さずにここ最近あった一切合切を一から、話すと驚いた顔をしたが、流石に信じたらしい。
嬢かも知れないという疑惑がとれた上、茶と茶菓子まで出された理事長はホクホク顔になっている。
最近不憫な目に遭って、青い顔か、歯を食いしばっている顔しか見たことがなかったので、少し安心する。
おそらく学園長の任を解かれている故に、対立できる下地がないというのもあるが。

「秋也も大変だったのね。あそこにいる御曹司たちと一悶着あるなんて」

「よく生きて返ってきたな。秋也」

事情を知ったことで俺の扱いも、家に嬢を連れ込んだ不肖の息子から一転、死地から生還した英雄にまで改善される。
要らぬ誤解を生む前に早めに説明しておくべきだった。

「変な誤解をして、ごめんね、秋也」

「謝らなくてもいいよ、わかってくれたし」
 
母さんが謝ってくるので、気にしないようにと言い含めていくと、茶菓子をつついていた天弦さんが徐に立ち上がった。

「まだ何ができたというわけではないのですが、明日の仕事のためにここでお暇させて頂きます」

そういうと家族会議を行なっていた居間から踵を返して、立ち去っていく。

「お見送りさせて頂きます、天弦さん」

父さんが俊敏な動きで天弦さんを超えて、玄関のドアを開けてエスコートする。
長い社会経験で身についた接待のスキル賜物か、凄まじく素早い。
天弦さんはこの国のトップ層の1人であるので、俺と母さんも父さんに続き家から見送りに向かう。

「では、また」

「お勤めご苦労様でした。息子がお世話になりました」

 理事長が別れの言葉を告げると、親父もそれに答えて、送る言葉を言うと、背後から爆発音が聞こえた。

「何の音!?」

母さんの悲鳴と共に振り返ると、家の屋根が一部吹き飛びているのが見えた。
状況を確認するとさらに何かが破裂する音が聞こえ、家が炎上し始めた。

「家が!!」

父さんの悲鳴が上がると、視界の隅に僅かに桃色の何かが通り過ぎるのが見えた。
一瞬追いかけようかと思ったが、危険そうな感じだったので、単独行動はまずいかと思い、見逃すことにする。



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