君と世界にたった1杯の珈琲を

にもの

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1章・箱庭

14.感情

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「帝国が攻めてきた?!」
「はい!たった今の伝令です!どうしましょう元帥。」
「緊急招集だ。動ける者はすぐにラグウンへ向え。」
「了解。」

第二次魔境戦争の最中、王国は帝国と強く反発し合い、争いが耐えなかった。そんな中での伝令だった。
第二次魔境戦争、単純に領土をめぐる争いだった。発端は帝国と王国の国境の村同士の小競り合い。そこから次第に大きな領土を巡っての国家間争いへと発展した。そして当時その王国と帝国の争いを見ていた周辺諸国は傍観し、どちらにつくが吉かを吟味していた。

「クロノ、また団長を困らせるなよ?」
「アルタイル、お前こそ俺の邪魔をするなよ?」
当時の王国魔剣士団の中では2人は団長に次ぐ強さだった。そしていつも2人は笑いながら程よい緊張感の中で汗を流して戦っていた。

だがその日、アルタイルの隣にクロノ・アンタレスは居なかった。

「おい…クロノ……何故お前がそこにいるんだ……?」
アルタイルは目を疑っていた。目の前には帝国兵士らと並んでこちらへ剣を向けているクロノの姿があったからだ。
「アルタイル……いや、クロード、俺は国を出ることにした。」
「クロノ……何を言って…」
「クロード、俺はどうも王国軍兵士どもの甘ったるい思想には付き合いきれなくなった。」
「クロノ…!!戻ってこい!!お前は……お前の妹の思いはどうなる!!」
「妹……ね。」
「そうだ…!お前の妹はお前を守るために……」
アルタイルが言おうとしたところへ被せるように、
「そんな甘っっったるいことばっか抜かしてっから死ぬんだよォォ!!妹も親も戦友もォ!!」
クロノは声を荒らげた。
「お前…自分の妹になんてことを…!」
「だったらなんだよ!!お前ならなんの犠牲も出さずに救えるのかよ!この戦争を終わらせられんのかよ!!!どうなんだよクロード・F・アルタイル!!!!」
クロノはそう言ってアルタイルに向けて魔法を放った。
アルタイルはそれを避けて心を鬼にして剣を振るった。

「俺は強くあるべきなんだよ!俺が強くならねぇと意味ねぇんだよ!!俺は強くならなきゃならねぇんだよ!!!なのに!いつも目の前にはお前がいる!!どうしてなんだっ!俺は強く在らなければならない!俺はお前より前を行くべきなんだよ!」
「クロノ…!お前は充分強いだろ!!」
剣を交えながら2人は感情をぶつけあった。

「俺が強いだぁ??1度もお前に勝てたことの無いこの俺が、強いだァ???お前はいつもそうやって俺を下に見ていたのか???舐めやがって!!」
「なぜそう解釈する!!ただ単純にお前は強いと言っているだろ!聞く耳も失ったかクロノ!!」
「黙れ!お前がいるせいで!俺は妹を…セシアを救えなかった!!俺が弱かったから!!」
「セシアが死んだのは私のせいでもお前のせいでもないだろう!!」
「そんなことはわかってるんだよォォ!!!!だから俺は、お前を倒すことで妹の死を否定するんだ!!俺が強くなってセシアを弔う!」
「クロノ貴様……とち狂ったかァァァァ!!」

アルタイルとクロノの抱えるとある過去、そして2人の感情のぶつかり合い、それらは2人が剣を交えると共に肥大化し、2人の半日続いた闘いに巻き込まれた両国の兵士共に死者が数万人も出た。そして最後にラグウンの街はたったの一日で跡形もない瓦礫野原と化した。

戦いが終わる頃、戦場となったラグウンの街には雨が降り注いでいた。
薄暗い空と冷たい雨の中、2人は決別となった。
「クロード・F・アルタイル……俺は……貴様を殺すことで俺を正当化する。」
「クロノ…………今のお前は私には勝てない…。」
2人が息を切らしながら無気力に最後に語り合った言葉だった。そして、クロノの目からは涙が零れ落ちた。

その後、王国にあったラグウンの街はラグウン自治区となり、帝国の支配下に置かれ、第二次魔境戦争が終わりを迎えた。
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