君と世界にたった1杯の珈琲を

にもの

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1章・箱庭

15.「お手数ですが死んで頂きます」

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「ラグウン自治区に敵襲!!!」
「敵は王国か!何人だ!」
帝国は騒ぎになっていた。

「来たか……!クロード・F・アルタイル!」

ただ1人、高揚が顔に出ている者を除いて。

_____________

「魔剣士は地上で一般兵を率いてかかれ!魔導師は援護!!」
アルタイルが声を張り上げていた。
12年前のあの日以来、治安が地の底まで落ち、ほとんどスラム街のようになっていたラグウン自治区へ、王国が攻め入る。当時の激戦のまま放置された箇所もあり、12年経った今でもその激戦の様子を物語っている。
開戦して間もなく12年前と同じく、悲鳴、殺意、血飛沫、死体、戦争の闇がすぐ足元に転がっている。
「どこだクロード。姿を見せろ。」
クロノは殺意をむき出しにしながら無気力な声で喋り、片手であしらうように人を斬っていた。

「奴はまだ姿を見せないか。」
アルタイルも同じくクロノを探していた。
「……そうっすね……それはそうと団長、なんですかアイツ…」
一緒にいたナツメが突然そう言って空を指さした。
そこには王国兵の首を両手に持ち、魔力をダダ漏れにしながらとてつもないオーラを放つ女兵士が浮いていた。髪は透明感のある長い金髪で、話し方と姿勢から育ちの良さが伺えた。
「あぁ、私も気になっていた。どうやら只者では無いらしい。」
そう言ってアルタイルは剣を構えようとした。
「こんばんは。」
すると女兵士はそう言ってナツメとアルタイルに向かって高火力の火炎魔法をぶつけてきた。

「あらぁ……避けられてしまいましたか。」
そして女兵士が困った顔をしながらもう一度同じ魔法を放った。
「団長!行ってください!俺がやります!」
ナツメはそう言って女兵士が放った魔法を剣で受け止めた。
「任せたぞナツメ。」
アルタイルはナツメと目を合わせて先を急いだ。

「今度は受けられましたか……。そこそこ力を入れて放ったんですけど…」
「嘘言え…どでけぇ魔力込めやがって……」
ナツメが踏ん張った場所は地面が割れていた。
「あなた、その辺の兵士とは少し違うようですね。大隊長…といったところでしょうか。だとすると部下の皆さんが見当たりませんが……」
「あぁ、あいにく今回は俺一人で参戦だ。うちの隊員は今回は別の隊に混ざってるもんでな。」
ナツメはそう言いながら剣を肩に乗せた。
「そうですか。まぁでも王国の方には変わり無いでしょうし、お手数ですが死んで頂きます。」
女兵士はそう笑ってまた高火力の魔法をナツメに放った。
「2度も同じ魔法は喰らわねぇよ!まぁ一回目も喰らってねぇけど。」
ナツメはそう言って魔法を避けた。
「あんた剣持ってねぇってことは魔導師か。大した火力じゃねぇの。でもそんなにバンバン高火力の魔法ぶっぱなしてると魔力切らして倒れるんじゃねぇか?」
「うふふ……ご忠告感謝致します。しかし私、魔力量には少々自信がありますので、心配しなくてもすぐ殺して差し上げますよ。」
「多重・複数魔法展開」
女兵士がそう言うと彼女の周囲にはいくつもの魔法陣が展開された。
「そんな何個も同時に魔法って使えるもんなのかよ…。でもまぁ攻撃が来ないってことはこっちから行っていいよな!」
ナツメはそう叫びながら剣に魔力を込めて斬りかかったが、ナツメの剣は見えない何かに阻まれた。
「なるほど……魔力で壁を作ったと……ってことはほかの魔法陣もなんか仕込んでるってことだよなぁ。」
「うふふ。お教えしかねますね。」
「そうかよ!」
ナツメはもう一度斬りかかり、今度は壁を破り、通り過ぎた。そして女兵士の頬には小さな切り傷が残った。
さっきと違ったのは、ナツメが剣に込める魔力の濃度を恐ろしく高密度にしたということだった。
「なんですかその気持ちの悪い剣は。普通そんなに高密度の魔力を一度に込めると原子同士の結合が崩壊して剣は耐えられないはずです。」
女兵士は顔を顰めた。
「だろうな。でも教えねぇ。」
ナツメはさっきのお返しだと言わんばかりに煽るように言った。
「そうですか。あなたはやはりほかの兵士とは違うようですね。お名前を聞いても宜しくて?」
「いいけどよ。人に名前を聞く時はまず自分が名乗れよな。」
「うふふ、これは失礼致しました。私、帝国軍魔導第一師団・副団長、ファーレ・ティアラと申します。」
「副団長様とは、どうもお強いわけですね。」
「そう言っていただけて何よりです。改めまして、あなたのお名前を聞いても宜しくて?」
「ナツメ・スエナガだ。」
「あら、東国のお方ですか?」
「東国…まぁそんなとこだ。」
「やはりそうでしたか、とても良いお名前ですこと。それでは死んでください。」
ファーレと名乗った女はそうしてまた高火力の魔法を複数放った。
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