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1章・箱庭
17.不死身のど素人。
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「なんせ興が冷めたのに変わりはねぇ。本当に降参でいいんだな?」
「……はい。殺すなり捕虜にするなりご自由にして頂いて構いません。」
「あぁそう。まぁこれは別に俺らの知ったことじゃねぇけどさ、魔導師団副団長なんて人が急に居なくなったら、帝国軍も大慌てなんじゃねないの?」
「そうですね。しかし、私には自分の初恋の相手を斬るなどという惨いことはできません。」
「……じゃあ今ここで俺がお前を殺すって言っても同じこと言えんのか?」
ナツメの言葉にファーレは膝をつき、首を差し出すように屈んで少し表情を変えた。
「………後悔が無いと言えば嘘になります、もちろん私だって死にたくはありませんもの。ですがこのような気持ちを持ってしまった時点で私の負けなのです。殺すのならどうか一思いに斬って頂ければ。」
「なるほどな。もういい。お前は捕虜にする。俺としちゃこの火傷のおとしまいつけて欲しいところだでもあるけどな。ただ、恐らく捕虜にした方が敵を釣れる気がする。あんた、言葉遣いだの振る舞いだのから察するに、帝国じゃそこそこの身分なんだろ?」
「なるほど……分かりました。良いでしょう。」
ファーレは立ち上がり、両手を差し出した。
「下手な真似はすんなよ?まだ俺はお前を信用してる訳じゃねぇからな。」
ナツメはファーレを睨みつけて手枷の魔道具をファーレの腕に着けた。
一方その頃、ナツメから1キロほど離れた場所では、ラーナが戦場を無表情で歩いていた。ラーナが歩いている場所、その足元には沢山の死体、誰のものかわからない体の部位、血に染った剣がそこらじゅうに転がっている。全て王国兵のものだ。
ラーナが歩く先には一人の男が立っていた。目は大きく狂気に満ちた表情の男だ。
男には、顔を縦に大きく割くように縫い目が入っている。
「これは……全てあなたがやったと思っていいんですね。」
「……あぁ?誰あんた。メイド?ブッハハハハ!マジかよ?!王国も人手不足なんだなぁ!」
男はラーナの姿を見てヘラヘラ笑っている。
「不愉快です。」
ラーナはそう言うと一瞬で男の首をかき斬ってしまった。男の首からは血飛沫が飛び、男は倒れた。
ラーナはその場から去ろうとした。
しかしその時、首を斬って殺したはずの男が立ち上がったのだ。
「あーあ、メイドさん速いねぇぇww。俺久々に首斬られたわ。でもざぁんねぇん!俺死なないのw」
「そうですか。それは……なんとも可哀想ですね、同情します。」
ラーナは振り向いて笑った。
「可哀想?俺が?なんで」
男は急に血相を変えた。
「俺ァ不死身だぞ!帝国の宮廷魔剣士、不死身のカインだ……俺を殺せる奴は居ねぇんだよ……!舐めてんじゃねぇぞクソアマァァ!!」
そう言って男はラーナに向かって突進してきた。しかし男の剣は尽くラーナには当たらなかった。
「不死身のカインさんですか……なんというかまぁ、陳腐な2つ名ですね。不死身なだけで剣はお粗末、死なないからいずれ剣を当てれば相手を殺せるというだけでしょう。でも当たらなければ不死身だろうがあなたはまるでど素人ですよ?」
ラーナはカインと名乗る男が振り回す剣を可憐に避けながら喋っていた。
「舐めんじゃねぇ!クソが!このォ!ガァァァァァ!!クソッ!」
カインは頭に血がのぼり、叫びながら剣を振り回している。
「うるさい……不愉快極まりないです……」
ラーナは蔑むような顔をして突然速くなり、カインのみぞおちに綺麗な蹴りを入れた。
「グゴォ……」
カインはもろに受けてしまい、その場にうずくまった。
「……あなた、それで魔剣士を名乗っていたんですか……?剣の扱いはお粗末、剣に込められた魔力も魔法のバフも申し訳程度、挙句立ち回りがど素人な上に頭に血が上って暴れるだけ…………まるで理性を覚える前の子供ですね…」
ラーナは蔑むような目で男を見下ろしていた。もはやいつもの作ったような笑顔は見る影もない。
そしてうずくまって唸るカインの頭を足で踏んづけて続けた。
「あなたがこれまで生き残ってきた理由は単純明快、致命傷になるような攻撃を受けても死なないからですよ。恐らく自分より弱い相手をいたぶるような戦い方しかしてこなかったんでしょう……だから自分より強い相手にはまるで手も足も出ないと……。その不死身という能力、どこで手に入れたのか知りませんが、過信し過ぎです。あまりにも愚か……」
カインは恐怖からか、目から涙を流しはじめた。自分が負け、このままではまずいと感じているようだった。しかしラーナの蹴りがみぞおちにモロに入ってしまい、唸ることしかできない。
「ところでその不死身という能力……少し興味があります。痛みはあるようですが、どんなに刺しても斬っても死なないんでしょうか……それともある一定のダメージのみを無効化しているのか……だとすると細かく微塵切りにすれば死ぬのでしょうか……?」
ラーナはそう言ってニヤけているが、目が全く笑っていない。
「……うぅ……や……やめ………て……くd……」
男は呂律も回っていないようで、ただひたすらみぞおちの痛みと恐怖に苦しんでいた。
「黙れ。誰が喋っていいと言ったんですか」
ラーナはカインを踏みつける力を強くした。
「た……たすけ……r」
カインはラーナに踏まれながらも、恐怖のあまり必死のようだった。
「そんなに助けて欲しいんですか……必死ですね。じゃあいいですよ、助けてあげます。」
ラーナのその言葉にカインは少し喜んだような表情を浮かべた。しかしその期待は一瞬で砕かれた。
「ただし先程言ったように、私不死身というものに興味がありまして、少し色々と試してみたいので、私が満足するまで付き合ってくれたら、逃がしてあげます。」
ラーナはまた少しニヤけているが、目は相変わらず全く笑っていない。
同時にカインの表情は絶望そのものだった。
その後、カインはラーナに何度も何度も色々な方法で殺され続け、その数は数百回にも至った。
この『不死身』という謎の能力が一体なんなのか、それはまた後に波乱を巻き起こす種になるとは、まだ誰も知らなかった。
「……はい。殺すなり捕虜にするなりご自由にして頂いて構いません。」
「あぁそう。まぁこれは別に俺らの知ったことじゃねぇけどさ、魔導師団副団長なんて人が急に居なくなったら、帝国軍も大慌てなんじゃねないの?」
「そうですね。しかし、私には自分の初恋の相手を斬るなどという惨いことはできません。」
「……じゃあ今ここで俺がお前を殺すって言っても同じこと言えんのか?」
ナツメの言葉にファーレは膝をつき、首を差し出すように屈んで少し表情を変えた。
「………後悔が無いと言えば嘘になります、もちろん私だって死にたくはありませんもの。ですがこのような気持ちを持ってしまった時点で私の負けなのです。殺すのならどうか一思いに斬って頂ければ。」
「なるほどな。もういい。お前は捕虜にする。俺としちゃこの火傷のおとしまいつけて欲しいところだでもあるけどな。ただ、恐らく捕虜にした方が敵を釣れる気がする。あんた、言葉遣いだの振る舞いだのから察するに、帝国じゃそこそこの身分なんだろ?」
「なるほど……分かりました。良いでしょう。」
ファーレは立ち上がり、両手を差し出した。
「下手な真似はすんなよ?まだ俺はお前を信用してる訳じゃねぇからな。」
ナツメはファーレを睨みつけて手枷の魔道具をファーレの腕に着けた。
一方その頃、ナツメから1キロほど離れた場所では、ラーナが戦場を無表情で歩いていた。ラーナが歩いている場所、その足元には沢山の死体、誰のものかわからない体の部位、血に染った剣がそこらじゅうに転がっている。全て王国兵のものだ。
ラーナが歩く先には一人の男が立っていた。目は大きく狂気に満ちた表情の男だ。
男には、顔を縦に大きく割くように縫い目が入っている。
「これは……全てあなたがやったと思っていいんですね。」
「……あぁ?誰あんた。メイド?ブッハハハハ!マジかよ?!王国も人手不足なんだなぁ!」
男はラーナの姿を見てヘラヘラ笑っている。
「不愉快です。」
ラーナはそう言うと一瞬で男の首をかき斬ってしまった。男の首からは血飛沫が飛び、男は倒れた。
ラーナはその場から去ろうとした。
しかしその時、首を斬って殺したはずの男が立ち上がったのだ。
「あーあ、メイドさん速いねぇぇww。俺久々に首斬られたわ。でもざぁんねぇん!俺死なないのw」
「そうですか。それは……なんとも可哀想ですね、同情します。」
ラーナは振り向いて笑った。
「可哀想?俺が?なんで」
男は急に血相を変えた。
「俺ァ不死身だぞ!帝国の宮廷魔剣士、不死身のカインだ……俺を殺せる奴は居ねぇんだよ……!舐めてんじゃねぇぞクソアマァァ!!」
そう言って男はラーナに向かって突進してきた。しかし男の剣は尽くラーナには当たらなかった。
「不死身のカインさんですか……なんというかまぁ、陳腐な2つ名ですね。不死身なだけで剣はお粗末、死なないからいずれ剣を当てれば相手を殺せるというだけでしょう。でも当たらなければ不死身だろうがあなたはまるでど素人ですよ?」
ラーナはカインと名乗る男が振り回す剣を可憐に避けながら喋っていた。
「舐めんじゃねぇ!クソが!このォ!ガァァァァァ!!クソッ!」
カインは頭に血がのぼり、叫びながら剣を振り回している。
「うるさい……不愉快極まりないです……」
ラーナは蔑むような顔をして突然速くなり、カインのみぞおちに綺麗な蹴りを入れた。
「グゴォ……」
カインはもろに受けてしまい、その場にうずくまった。
「……あなた、それで魔剣士を名乗っていたんですか……?剣の扱いはお粗末、剣に込められた魔力も魔法のバフも申し訳程度、挙句立ち回りがど素人な上に頭に血が上って暴れるだけ…………まるで理性を覚える前の子供ですね…」
ラーナは蔑むような目で男を見下ろしていた。もはやいつもの作ったような笑顔は見る影もない。
そしてうずくまって唸るカインの頭を足で踏んづけて続けた。
「あなたがこれまで生き残ってきた理由は単純明快、致命傷になるような攻撃を受けても死なないからですよ。恐らく自分より弱い相手をいたぶるような戦い方しかしてこなかったんでしょう……だから自分より強い相手にはまるで手も足も出ないと……。その不死身という能力、どこで手に入れたのか知りませんが、過信し過ぎです。あまりにも愚か……」
カインは恐怖からか、目から涙を流しはじめた。自分が負け、このままではまずいと感じているようだった。しかしラーナの蹴りがみぞおちにモロに入ってしまい、唸ることしかできない。
「ところでその不死身という能力……少し興味があります。痛みはあるようですが、どんなに刺しても斬っても死なないんでしょうか……それともある一定のダメージのみを無効化しているのか……だとすると細かく微塵切りにすれば死ぬのでしょうか……?」
ラーナはそう言ってニヤけているが、目が全く笑っていない。
「……うぅ……や……やめ………て……くd……」
男は呂律も回っていないようで、ただひたすらみぞおちの痛みと恐怖に苦しんでいた。
「黙れ。誰が喋っていいと言ったんですか」
ラーナはカインを踏みつける力を強くした。
「た……たすけ……r」
カインはラーナに踏まれながらも、恐怖のあまり必死のようだった。
「そんなに助けて欲しいんですか……必死ですね。じゃあいいですよ、助けてあげます。」
ラーナのその言葉にカインは少し喜んだような表情を浮かべた。しかしその期待は一瞬で砕かれた。
「ただし先程言ったように、私不死身というものに興味がありまして、少し色々と試してみたいので、私が満足するまで付き合ってくれたら、逃がしてあげます。」
ラーナはまた少しニヤけているが、目は相変わらず全く笑っていない。
同時にカインの表情は絶望そのものだった。
その後、カインはラーナに何度も何度も色々な方法で殺され続け、その数は数百回にも至った。
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