君と世界にたった1杯の珈琲を

にもの

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1章・箱庭

25.休暇とは名ばかりの休暇。

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「アルタイル、先の戦いでよくやってくれたと思っている。」
その時、ノアール元帥がアルタイルを呼び出し、要件を伝えるところだった。
「ありがとうございます。」
アルタイルが少しだけお辞儀をした。

「だが頬の傷はともかく、その手首、暫くは戦えないだろう。」
元帥はアルタイルの左手首を見て言った。アルタイルは軍服の裾で包帯を隠そうとしているが、やはり少しだけ見えてしまうのだ。
「……お恥ずかしい限りです。」
アルタイルは悔しそうな顔をしている。
「いや、アンタレスを討ったのだ。私はその傷を讃えようとも。して、提案なのだが。」
「なんでしょうか。」
「少し休暇を取ってはどうだ。」
「休暇…ですか。」
「うむ。セントレイスあたりなら羽を伸ばせるだろう。」
「セントレイス、といえばあそこは工業の盛んな国でしたか。確かにリゾート地としても有名ですが……かなり唐突な話ですね。本当に休暇ですか?」
アルタイルはあまりに突然すぎる話に困惑していた。
「やはり鋭いな。休暇とは別で気にかけておいて欲しいことがあってな、どうやらセントレイスで『イリスの箱庭』とよく似た石の目撃情報があった。聞いた限りでは石の性質はイリスの箱庭そのものだったので、まず間違いないかもしれん。」
「元帥殿、恐れ入りますが、それは休暇ではなく実質的には調査なのでは無いのですか?」
アルタイルは少し呆れた表情をしているが、元帥は顔色ひとつ変えずに話している。
「まぁそう言うでない。調査とはいえせっかくのリゾート地だ。戦いの傷も癒えきっていないだろう。だから親子で存分に羽を伸ばしてみてはどうだという提案でもあるんだ。」
「親子って、ベガもですか?!」
アルタイルはつい声を荒らげてしまった。
「左様。ベガの謹慎も解ける頃だ。育てると決めたならここらでしっかり親としての責務を果たす意味合いもあると思うが。」
元帥はニヤリと笑った。
「わかりました……ただし、費用は全額負担してください。それから護衛を選出させてください。」
アルタイルは元帥に対抗するようにそう言って笑った。
「よかろう。」
元帥からの承諾を得て、アルタイルは付き添いを2名同行させることにした。

_____________

「なるほど、それで俺とフレンの兄貴なんですね、団長。」
いつもの医務室でのことだ。アルタイルにナツメがそう言った。
ベガは医務室のベッドで贅沢にもお眠の時間だった。
そしてそこには珍しくフレンもいる。
「でもね団長、俺も負傷者なんです見えます?この包帯。左半身焼けてるんですよ俺。」
ナツメはそう言って包帯を見せた。
「そうだな。でもお前は火傷していてもそこらの兵士よりは役に立つだろう。それにリゾート地だ。傷も癒えよう。」
「まぁ……そこまで言うなら」
ナツメは渋々承諾してくれたが、あまり気は乗らないようだった。
「で、僕はなんで呼ばれたのかな」
フレンが間に入ってきた。
「あぁ、お前には調査を手伝ってもらいたいのと、あとは単純に戦闘力だ。」
「なるほど。つまり特別な理由は特にないのね…。まぁいいや。僕セントレイス行ってみたかったし。」
「決まりだな。ベガもいいな。」
「う~ん。」
ベガは医務室の布団で寝ていたが、急に起こされたので寝ぼけた返事をした。
「アルちゃん、今回はベガちゃんも居るんだし、もし何かあっても無理はしちゃダメよ。」
ルナがそう言いながら2杯目のコーヒーを持ってきた。
「あとね、人が多いわよ。ここ医務室よ?ベガちゃんとナツメくんとアルちゃんはともかく、なんでフレンさんが居るの?」
ルナは気に入らないといった顔でフレンを見た。
「えぇ…僕だけ扱い酷くない?!」
「なんだフレン、お前は前の戦いでも留守番してただけだろう?そりゃ肩身が狭くて当然だな。」
「アルタイルまで!?僕はあの時留守番だけじゃなくてベガちゃんに色々教えたりしてたんだよ?ね、ベガちゃん?」
ベガは寝ぼけた顔でヌンっと起き上がり、フレンの方を見てこう言った。
「誰?」
「えぇ??!!、ちょっとちょっと、フレンだよ、あの時魔法のこととか色々と教えてあげたじゃん。」
「……ん~、、、まぁそんなこともあったっけ。」
ベガはそう言いながらまたベッドに倒れ込んでスヤスヤ寝てしまった。

そうして突然ながら4人のセントレイス旅行が決まった。
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