君と世界にたった1杯の珈琲を

にもの

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1章・箱庭

26.変質者

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「こんにちはベガさん。お出かけですか?」
渡り廊下で走っていくベガを見かけ、ラーナが声をかけた。
「うん!どう?可愛いでしょ。」
「大変麗しいです。」
ベガはヒラヒラの白いワンピースをラーナに見せた。白が陽の光に当てられて眩しいようだった。
「今からお出かけなんだ。アルとナツキとフレンさんも一緒なの。」
「そうでしたか。どちらに行かれるのですか?」
「どこって言ってたっけ…なんかリゾートなんだって。」
「もしやセントレイスではありませんか?」
「そう、それ!」
「セントレイスはドワーフが多く在住する中立国家で、工業が発達した街とも聞きますね。」
「そうなんだ…!ドワーフって見たことないや。」
「きっと皆さんいい方たちですよ。沢山楽しんできてくださいね。」
「うん!」
ラーナは終始変わらず作ったような笑顔をしていた。だがベガはコロコロと表情を変えていた。これは周りから見れば異様なコミュニケーションかもしれない。

_____________
同日、帝国にて。
「クロノが死んだ。オマケにファーレまで捕まった。主戦力が2枚も欠けたのだ。この先どう立て直すつもりだ。」
皇帝の玉座の間で、薄暗い大部屋の中には帝国の皇帝ザック・バーンド・アルバーが1人玉座に座し、その前には黒いローブにフードを深く被った男かも女かも分からないような人物、いかにも変質者のような者が跪く訳でもなくて立っていた。

「まぁザック皇帝、落ち着いてください。ティアラ家の娘に関しては想定外でしたがクロノ・アンタレスの損失はある程度想定の範囲。それにあの娘には私の眷属になってもらっています。つまりあの娘がティアラ家の話をすることは無い。」
「本当か…。」
「本当ですとも。それに、兆しはあります。イリスの箱庭は今、セントレイスにある。」
「それがその兆しだと?」
「えぇ、そうです。あの石さえあればあなたの悲願は達成されます。」
変質者は余裕そうな顔でニヤついた。
「あぁ、それからカインはもう使えなくなってしまいました。王国の女にいたぶられて酷く精神を病んでしまった…。あの人には少し違う形で役に立って頂きます。」
「……そうか。」

「おい、本当に帝国は悲願を達成できるんだろうな。」
「ええ出来ますとも。ただ……」
「ただ、なんだ」
「ただ王国に変なものが湧いて出た可能性が捨てきれません……」
「変なもの?どういう意味だ」
「そのままの意味です。私と似て非なる存在……帝国を脅威に陥れることになるかもしれない存在です。」
「そんな…!誰なんだそいつは!」
「…まだお教えできないですね。その存在が王国に居るともまだ断定できない。ただし、居たとしても帝国には私がいます。まぁ少し厄介な相手ではありますが、私の敵ではありません。ご心配なく。」
「本当なんだろうな……」
皇帝は怪訝な顔つきをしていた。
「もちろん。全てお任せ下さい。」
皇帝ザックが瞬きをする間に、そう言って変質者は皇帝の前から居なくなっていた。
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