電車のなかで知り合った女性の女友達とハプニングバーへ行った話

ふかし

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 私は「ふかし」という芸名で、顔を出さずに、カバーソングを発表する歌手活動をしている。本名はあつしという。
 電車に乗っていた。他にも席は空いているにも拘らず、女性が私の隣に腰を下ろした。彼女はスマートフォンに夢中だった。
 彼女のひじが軽く触れた。初めは気にしていなかったが、何度か触れ合うので、そちらへ目を向けた。
 彼女と目があった。綺麗な瞳をしていた。彼女は目線を下げた。そこにはスマートフォンがあった。
 「良かったら、連絡先を教えて頂けませんか?」とスマートフォンのメモ機能の画面に書かれてあった。
 私もメモを開き、LINEのIDを打ち込んで、それを彼女に見せた。
 しばらくして、LINEが届いた。名前はユカというらしい。「タイプだったんで声かけちゃいました。私は次の駅で降ります。また日にちを改めて飲みでも行きませんか?」とのことだった。
 私はお酒が飲めないが、あなたは飲んでくれて構わない、と返事をした。LINEで「それではまた」と彼女は送り届け、無言で電車を降りていった。私はその背を見送った。腰から臀部にかけてのラインが好みだった。
 私はR駅で降り、事務所へ向かった。

 打ち合わせはシングル曲についてだった。会社にカラオケがあるので、私は何曲も歌った。満場一致で女性歌手Iさんのカバー、Mに決まった。知り合いの元彼をなんとかして手に入れてやろうという心情を歌った、昭和の名曲だ。低音を得意とする私なので、キーは14個下げることになった。
 喫煙所で電子タバコを吸っていると、マネージャーのナナさんがやってくるのが見えた。ガラス張りの向こうから、彼女自身のスマートフォンを指差し、こちらにLINEをチェックするように合図を送ってきた。ズボンからスマートフォンを取り出すと、「今日これからあつしの家に行っていい?」とメッセージが届いていたので、「いいよ、練習してるかもだから、合鍵で勝手に入ってきて」と返した。
 電車に乗って帰った。今度は混んでいたので、席に座れなかったし、ナンパもなかった。
 防音設備が整う、24時間いつでも歌える自宅のマンションで練習をした。デビューアルバムは昭和のカバーだけだったのだが、最近は令和の曲もカバーしていたので、大人気バンドMさんの楽曲たちを歌った。原曲はキーが高いので、大幅に下げた。
 しばらくして、玄関が開く音がした。ナナさんは、コンビニへ寄ってきたらしく、プリンとMというメーカーのカフェオレをくれた。感謝を伝え、私はそれらを楽しんだ。
 「髭面にプリンって、簡単なギャップの演出ね」とナナさん。
 「意識してないよ、小さい頃からプリンは好物だから」と私。
 「社長に、私たちの仲、疑われたわ」と溜息混じりの彼女。
 「そう、もうセックスするのやめとく?」
 「いや、疑われただけで、注意されなかったの」と息は更に深くなった。
 「そう、じゃあ認めちゃえばいいじゃん」
 「私はあなたほど、あけすけな人間じゃないわ、付き合ってはないとしても、肉体関係があるって知られたくない」
 「じゃあ、引き続き内緒で」
 「あなたの口の固さ、信じてるわ」と頭を撫でられた。プリンを食べているということもあって、童心に返ったようだった。
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