剣豪、未だ至らぬ

萎びた家猫

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侮辱の代償は接吻で

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 魔道具店を後にしたロイとレヴィルは闘技場へと向かっていた。

「レヴィルさんがさっき言っていた賭けって具体的にどういうものなんですか?」

「基本的には出場者の勝敗と決着方法を賭ける形式になっています」

「勝敗はわかりますけど、決着方法って具体的にどんな物があるんですか?」

「決着は6種類に分類されています。1つ目は挑戦者が戦闘不能による決着。2つ目は意識の喪失による決着。3つ目は時間切れによる決着です」

「4つ目と5つ目は1と2の決着方法とは逆に相手側が戦闘不能のもしくは意識不明での決着です」

「なるほど。でもそれだと勝敗の賭けと被っちゃいませんか?」

「勝敗と決着方法の賭けは別個で行われ、最終的に当選した倍率を足した倍率で払い戻し金額を決める方式になっています。」

「なるほど。じゃあ最後の6つ目の決着方法は何なんですか?」

「6つ目の決着は…死亡または致命傷となる攻撃を加えた場合での決着です」

「それもそうか。そりゃあ死ぬ可能性もありますよね…」

「ええ、しかし闘技場の性質上、出場者が死亡する可能性は限りなく低いといえます」

「え?そんな事あります?」

「まあそれは見てもらえれば分かると思いますよ。それから賭けの商人金額は最終的に全体のかけ率を集計した倍率がわかるので難しい計算はしなくても大丈夫ですよ」

 困惑するロイにレヴィルは淡々と答える。そうして二人が話をしながら歩いていると、大きな建物が見えてきた。

「ロイ様。あれが今回の目的地である…ヘルメの闘技場になります。」

「はえぇ…すっごい大きいですね?王都のお城くらいありませんかこれ?」

 その建物はレンガ造りの円柱状の建物が街のど真ん中に突如出現する形で建造されておた。その大きさは少し離れた場所から見ても、見上げる程の大きさをしている。

 闘技場周辺ではなにかのお祭をやっているのか、色々な屋台が並んでいた。それに集まる民衆…そして明らかに手練れとわかる人など多種多様な人々で賑わっていた。

 そんな周辺を見た後に顔を上げまじまじと闘技場を見つめながら、感嘆の声を上げるロイを見てレヴィルは笑いながら首を横にふる。

「流石にお城よりは小さいですが、そうですね。この国でもトップクラスに大きいことは確かです」

「それでもやっぱりトップクラスなんですね。お城もそうですけど本当に人が作り上げたのか疑問に思うくらい大きいですよね?」

「それこそ職人が汗水流して作ったものなのでしょう」

 そう言いながらレヴィルは闘技場の入口へと向かっていく。ロイはそれに遅れないよう周囲の人を気にしながらついていく。

 二人が闘技場の中に入るとそこは先程までとはまったく違う雰囲気の空間であった。

 外にいた民衆は殆どおらず、いるのは体格の良い男や風格のある剣士などのひと目みてここの出場者だとわかる人達で溢れていた。

「どうですかロイ様。ここは出場者専用の入口ですが、ロイ様からみて彼らはどう見えますか?」

 レヴィルはロイに対しこの場にいる者たちを見ての感想を聞いてきた。

「みんな強そう…いや、確実に強いと思います」

 その発言を聞いてレヴィルはさらなる質問をしてきた。

「ではロイ様は…彼らに勝つ自信はお有りですか? ここにいる方たちは殆どが何度もこの闘技場に出場者し勝ちを積み重ねてきた者たちです。そんな彼らを見て…」

 レヴィルの質問を遮るようにロイは断言する。

「勝てる勝てないは戦ってみないとわかりません。ですが…負ける気はサラサラありません!!」

 ロイは高らかにそう宣言する。すると近くにいた大柄な男が睨みを聞かせながらこちらに近づいてきた。

「おうおう、さっきから聞いてればいい度胸じゃねえか?お前らみたいなガキとヒョロガリ坊やに何が出来るんってんだ!!」

 男が煽るように大声で叫ぶと、周りの人々が一斉に笑い出す。

「そうだぞ!!ここはおめえらの来るような場所じゃねえぜ!!」

「ガキは帰ってママの胸でもしゃぶってな!!」

「そんなバラの茎みたいな細い腕で何が出来るってんだイケメン君?!」

 周囲にいる者たちが二人を馬鹿にし、目の前の大柄な男もニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべている。

「お前…よくみたらいい顔してるじゃねえか?もしかして男娼か? そんな餓鬼相手にして楽しいかよ!!」

 大柄な男はレヴィルに対して侮辱的な発言を飛ばす。そして周りの男共も同じ気色の悪い目でれを見る。

「何ならオレが相手して…」

 そう言って手をレヴィルへ伸ばしながら近づき、方に触れる。だが次の瞬間には男は地面に顔から叩きつけられていた。

「ッ!?」

「お前みたいなクズがレヴィルさんを侮辱するな!!」

 そう言いながらロイは男の腕を締め上げる。男の腕は次第にミシッ、メシッとなってはいけない音がし始め、止めるよう声を上げる。

「ロイ様。離してあげてください」

「で、でもこいつは…」

 手を離すことを渋るロイにレヴィルはほほえみながら…

「ありがとうございますロイ様。私は大丈夫ですからその方を離してあげて下さい。今回はここで喧嘩をしに来たのではなく見学しに来たのでしょう?」

「…そうですね、わかりました」

 そう言いながらロイは渋々男の腕を離すと、男は腕を抑えながら立ち上がる。

「ああ、それと...」

 レヴィルは立ち上がった男の方を向きそして…大回しで踵を男の側頭部に直撃させる。突然のことに男の体が大きく揺らぎ、膝をつきながらボーとしている。

「グガッ!?」

 そこに追い打ちをかけるように踵を頭の上から落とし顔面を石の床に強打させる。

「貴方、私のことを男娼と言いましたよね?それは許す気はありませんので、せいぜい地面と接吻でもしていてください!!」

 その言葉を最後に男は完全に動くことはなくなった。

「ひえぇ…レヴィルさん僕よりやってることえげつないですよ」

「フフッ、貴族に喧嘩を売ってこれで済むならやすいものですよ?」

 貴族という言葉に周囲がざわつき始めたがそれを無視して、二人が受付に進もうとすると周囲にいた人集りが一瞬で捌け道ができる。

「流石は貴族ですね…さっきまでのみんなの威勢が嘘のようになくなりましたね?」

「ロイ様は今まで通り気にせず接していただいて構いませんよ?」

「ほんとに後で死刑とかありませんよね?」

「私そんな風に見られていたのですか!?流石にロイ様でも怒りますよ!?」

「いや、だってレヴィルさんって結構抜けてるとこあるっていうか…なんか先生と少し似ているんですよね」

「ッ…ちょっと否定はできませんね」

 そう言いながら二人は顔を見合わせ笑った。

「あのー御用は何でしょうか...?」

 眼の前でそんな二人のイチャつきを見ていた受付さんは、困惑と貴族への緊張が入り混じったなんともいえない表情で

(早く要件を済ませて帰ってくれないかなぁ...)

...と心のなかでつぶやくのであった。
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