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幸薄な青年
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ウィルとロイがグラズバで生活して、2週間程が経過した。ウィルの怪我も十二分に回復したが、ロイと訓練をしている中で身体が鈍っている事を強く感じていた。
「先生どうしたんですか? 準備ができたなら出発しましょうよ!!」
「……ああそうだな」
普段は起床の遅いロイであるが、今回は何故かウィルよりも早く目を覚まし、あまつさえ1人で基礎鍛錬をしていた。
「今日はやけに起きるのが早かったな?」
「何を言っているんですか? 僕が早くおきたんじゃなくて、先生が起きたのが遅かったんですよ?」
ロイは一度荷物を床に置くと、心配そうにウィルの顔を覗き込む。その反応に一瞬眉をひそめ、ロイの顔面を鷲掴みにする。
「い゛っ゛て゛て゛て゛!?」
「っ!? す、すまん......」
ロイの反応を見たウィルは咄嗟に手を離す。
そして手を顔面から離されたロイは、指の跡がクッキリと残った顔をさする。
「先生、本当に大丈夫ですか? まだ体調が悪いのなら、もう少し休んでから出発でも......」
「いや、問題ない。準備ができたなら行こう」
未だ心配そうに顔色をうかがうロイは、納得できない表情で荷物を持つ。
「先生。無茶だけはしないでくださいね?」
「問題ないと言っている」
「なら良いんですが......」
そうして旅の支度を終えた二人は、宿屋を後にする。
「それにしてもレヴィルさん達も急ですよね? いきなり王都に戻らないといけないだなんて」
二人が旅を再開する2日程前、ウィルとロイの元に、騎士団が王都へ帰還するとの伝えをレヴィルが持ってきていた。
その前日に二人に会っていた騎士団のメンバーも、そう言った事を話していなかったことから、本当に急遽決まった事なのだろう。
「そもそもオレたちにここまで付き従う事自体、普段ではありえない事だったんだ。何故あそこまで肩を持っているのかは不可解ではあるが、彼方にもそれなりに理由があるのだろう」
「やっぱ騎士団て大変なんですねぇ?」
宿屋を後にして大通りを歩いているウィルとロイは、途中で異様なほど人が集まっている建物が目が入った。
「なんか凄い人が集ってますけど、なにかやってるんですかね?」
「さあな。集まっているのが怪我人や老人が多いから、恐らく診療所かなんかだろう。あまりここらじゃ民間の医療機関を見なかったからな」
「それじゃあ先生も見てもらったら良いんじゃないですか? ちょうど体調が悪いみたいですし?」
ロイは先ほどから調子の悪そうなウィルに、診療所で診察をしないかと尋ねる。
「流石にこの人数の中に行くのはな......」
「あはは、確かにすごい人数ですもんね?」
診療所と思われる建物の入り口には、まるで祭りでも行ってるのではないかという程の人が集っている。
そうして二人が立ち去ろうとした時、入り口から幸薄そうな雰囲気を漂わせている青年が、人ごみを掻き分け外に飛び出してきた。
「ちょっと皆さん避けてください!! すみません避けてください!!」
なんとか人混みから抜け出した青年は何故かびしょ濡れになっており、二人の近くを通り過ぎる際に微かに薬草の匂いが香ってきた。恐らく薬か何かを頭から被っているようだ。
「なぜあの男は薬を被っているんだ......?」
「さ、さあ? もしかして泥棒とかだったんですかね?」
既に遠くまで走り去っていった青年を眺めながら二人は、微妙な表情で見つめる。
「やはり入るのは辞めておこう」
「そ、そうですね」
先ほどまでの身体の不調を、一瞬忘れるほどの不可解な青年を目撃した二人は、再度グラズバの出口へと歩き始めた。
グラズバにきてまだ間もない二人には、あの青年がなんであったのかは知る由もないが、きっと“性悪な魔女医”にでも酷使されているのであろう。
「先生どうしたんですか? 準備ができたなら出発しましょうよ!!」
「……ああそうだな」
普段は起床の遅いロイであるが、今回は何故かウィルよりも早く目を覚まし、あまつさえ1人で基礎鍛錬をしていた。
「今日はやけに起きるのが早かったな?」
「何を言っているんですか? 僕が早くおきたんじゃなくて、先生が起きたのが遅かったんですよ?」
ロイは一度荷物を床に置くと、心配そうにウィルの顔を覗き込む。その反応に一瞬眉をひそめ、ロイの顔面を鷲掴みにする。
「い゛っ゛て゛て゛て゛!?」
「っ!? す、すまん......」
ロイの反応を見たウィルは咄嗟に手を離す。
そして手を顔面から離されたロイは、指の跡がクッキリと残った顔をさする。
「先生、本当に大丈夫ですか? まだ体調が悪いのなら、もう少し休んでから出発でも......」
「いや、問題ない。準備ができたなら行こう」
未だ心配そうに顔色をうかがうロイは、納得できない表情で荷物を持つ。
「先生。無茶だけはしないでくださいね?」
「問題ないと言っている」
「なら良いんですが......」
そうして旅の支度を終えた二人は、宿屋を後にする。
「それにしてもレヴィルさん達も急ですよね? いきなり王都に戻らないといけないだなんて」
二人が旅を再開する2日程前、ウィルとロイの元に、騎士団が王都へ帰還するとの伝えをレヴィルが持ってきていた。
その前日に二人に会っていた騎士団のメンバーも、そう言った事を話していなかったことから、本当に急遽決まった事なのだろう。
「そもそもオレたちにここまで付き従う事自体、普段ではありえない事だったんだ。何故あそこまで肩を持っているのかは不可解ではあるが、彼方にもそれなりに理由があるのだろう」
「やっぱ騎士団て大変なんですねぇ?」
宿屋を後にして大通りを歩いているウィルとロイは、途中で異様なほど人が集まっている建物が目が入った。
「なんか凄い人が集ってますけど、なにかやってるんですかね?」
「さあな。集まっているのが怪我人や老人が多いから、恐らく診療所かなんかだろう。あまりここらじゃ民間の医療機関を見なかったからな」
「それじゃあ先生も見てもらったら良いんじゃないですか? ちょうど体調が悪いみたいですし?」
ロイは先ほどから調子の悪そうなウィルに、診療所で診察をしないかと尋ねる。
「流石にこの人数の中に行くのはな......」
「あはは、確かにすごい人数ですもんね?」
診療所と思われる建物の入り口には、まるで祭りでも行ってるのではないかという程の人が集っている。
そうして二人が立ち去ろうとした時、入り口から幸薄そうな雰囲気を漂わせている青年が、人ごみを掻き分け外に飛び出してきた。
「ちょっと皆さん避けてください!! すみません避けてください!!」
なんとか人混みから抜け出した青年は何故かびしょ濡れになっており、二人の近くを通り過ぎる際に微かに薬草の匂いが香ってきた。恐らく薬か何かを頭から被っているようだ。
「なぜあの男は薬を被っているんだ......?」
「さ、さあ? もしかして泥棒とかだったんですかね?」
既に遠くまで走り去っていった青年を眺めながら二人は、微妙な表情で見つめる。
「やはり入るのは辞めておこう」
「そ、そうですね」
先ほどまでの身体の不調を、一瞬忘れるほどの不可解な青年を目撃した二人は、再度グラズバの出口へと歩き始めた。
グラズバにきてまだ間もない二人には、あの青年がなんであったのかは知る由もないが、きっと“性悪な魔女医”にでも酷使されているのであろう。
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