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二人の戦士と二匹の鬼
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マルチパーティーの申請を終えた5人だったが、デビットの提案で一度ウィルとロイの二人対、デビットとダレンの戦士2人で一度試合形式の戦闘をすることになった。人数の関係で、ソラは審判役を引き受けた。
5人は訓練場へ移動すると、各自の装備を揃えて各自の配置についた。
「勝利条件はどちらかのパーティーメンバーがゼロになるか、制限時間までにより多くのメンバーがいたほうの勝ちってことでいいですか?」
「それは構わんが、メンバーの脱落条件はどうする?」
ウィルの疑問にデビットが、頭の裏で腕を組みながら答える。
「わかりやすく申告制でいいんじゃ無いか? まさかやられたのに嘘の申告をする奴なんて居ないだろ。まあ、申告前にやられた場合も脱落ってことで」
「それもそうね。ロイ君も危ないから、ちゃん言わなきゃダメよ?」
「はい!! 正々堂々やります!!」
ソラが少し心配そうにロイに忠告するが、ロイは自信満々と言った感じで返事を返すと、ソラも満足そうに頷く。そしてその光景を見たダレンが開始の合図を始めた。
「じゃあ このコインが地面についたら、試合開始なので用意をしてください!!
そういうとダレンはコインを上に弾く。数瞬の後にコインが地面落ちると、各パーティーは動き始めた。
ウィル少し後ろで剣を構え、ロイがゆっくり左に展開する。一方のダレンは盾を構えながら、真っ直ぐウィルへと向かってきた。
ウィルの扱う武器は軽量な太刀であるため、盾との相性は悪い。その事はウィルも当然、気付いているため眉を顰める。
「先生!!」
ロイはすぐウィルの応援に向かおうとするが、デビットによって遮られてしまう。デビットの扱う武器は曲線を描く双剣。
「お前の相手は俺だぜ!!」
「え!? デビットさん、なんか持ってる武器変わってません!?」
先ほど外で見たときはロングソードを持っていたが、デビットが現在持っているのは全く違う武器だったため、ロイは驚いてしまう。
「俺は武器にこだわりはないからな!! さっき受付で借りてきた!!」
「そんなのありですかー!?」
ロイが絶叫しながら双剣から繰り出される連撃を、なんとかいなして攻撃の隙を見極める。しかしなかなか攻撃の手が止まらず、ロイは防御に徹しざるを得なくなっていた。
しかしその状況を抜け出す手立てが、早速やってきた。いや、正しくは飛んできたと言うべきだろう。
「うわ、あっぶね!?」
ウィルと戦っていたはずのダレンの盾が、デビットに向かって飛んできた。その盾を避けるために、攻撃を中断する。そしてデビットは一瞬だけ、ダレンの方に目を向けた。
ダレンは盾を失っているが、未だ余裕がありそうなのを確認するとロイに目を戻そうとする。時間にして0.1秒にも満たない一瞬。
しかしロイはその一瞬を見逃さず、攻めに転じた。ロイは剣を構えずにそのまま、デビットへ近づくと剣で切り上げる。
しかしデビットは腐ってもゴールドランクの熟練ギルドマン。ロイの攻撃は曲剣によって防がれてしまった。
「ははは!! 惜しかったなロイ君!!」
「くっそー今の防げるんですか!!」
しかしロイは諦めずに攻め続ける、双剣には手数は劣るが、ロイが使う剣は双剣よりも重さがある。次第にデビットの防御にも限界が近づく。
曲剣の防御はいなしが基本。しかしそれにも限界があった。剣自体の刃こぼれや振動による腕への疲労の蓄積はロイの比ではない。
(流石にこのままだとジリ貧だな。意外とロイ君は力が強いし、どうすっかな?)
デビットはそう考えながら、一度距離を取ろうとする。しかしその行動は結果的に失敗であった。
「デビット!! 後ろに気をつけろ!!」
離れた位置から聞こえるダレンの声に一瞬気を取られ、後ろを向いてしまう。後ろにはウィルは迫って来ており、さらにそれを追う様にダレンも走って近づいてくる。
「マジかよ!? タイミングが......ッ!?」
そこまでいるとデビットの体に激しい衝撃が響き、後方に飛ばされた事でバランスを崩し尻餅をついてしまう。
「ッ!?」
そしてちょうど尻餅をついた瞬間、後頭部へと新たな衝撃が来る。気を失う寸前に目に映ったのは、視界一杯を埋め尽くす靴底であった。
・
・
・
「これであとはダレンだけだな?」
ウィルのあまりの容赦なさに、仲間であるはずのロイがドン引きしていた。
ウィルは一度後頭部を蹴り飛ばした後に、仰向けに倒れたデビットの顔面を、なんの躊躇いもなく踏んでいた。
「うっへぇ......先生、容赦なさすぎません?」
「戦士職は下手に加減すると痛い目を見るからな。それにこれくらいでは死なん」
淡々と答えるウィルは一切の油断を見せる様子なく、ダレンへと剣先を向けて構えていた。その様子を見たダレンは、苦笑いを浮かべた。
「あはは......ウィルさん。強いとは思ってはいましたが、ここまでとは思いませんでしたよ」
「これでも一人で旅をしていたからな。ある程度は強くないと話にならん」
「先生の強さは、そう言う次元ではない気がしますけど......」
ロイは今までの旅の最初は、明らかに他のものと異質な強さを持っている、ウィルへ違和感を持っていた。しかしそれも最近では鳴りを潜めていた。
最初に会ったウィルであれば、恐らくもっと容赦のない一撃を加えていたと確信できたであろう。しかし今ではそれなりの手心を加えるくらいには、ウィルの何かが変わっていた。
「さあ、人数は不利ですがまだあきらめませんよ!!」
ロイは今まで考えていた事を一旦頭から追い出し、目の前の戦闘に集中するよう意識を切り替える。
「行きます!!」
「......ああ」「容赦はしません!!」
1対2の攻防は長くは続かなかず、いつの間にか静まりかっていた訓練場に、サラの勝利宣言が響き渡った。
5人は訓練場へ移動すると、各自の装備を揃えて各自の配置についた。
「勝利条件はどちらかのパーティーメンバーがゼロになるか、制限時間までにより多くのメンバーがいたほうの勝ちってことでいいですか?」
「それは構わんが、メンバーの脱落条件はどうする?」
ウィルの疑問にデビットが、頭の裏で腕を組みながら答える。
「わかりやすく申告制でいいんじゃ無いか? まさかやられたのに嘘の申告をする奴なんて居ないだろ。まあ、申告前にやられた場合も脱落ってことで」
「それもそうね。ロイ君も危ないから、ちゃん言わなきゃダメよ?」
「はい!! 正々堂々やります!!」
ソラが少し心配そうにロイに忠告するが、ロイは自信満々と言った感じで返事を返すと、ソラも満足そうに頷く。そしてその光景を見たダレンが開始の合図を始めた。
「じゃあ このコインが地面についたら、試合開始なので用意をしてください!!
そういうとダレンはコインを上に弾く。数瞬の後にコインが地面落ちると、各パーティーは動き始めた。
ウィル少し後ろで剣を構え、ロイがゆっくり左に展開する。一方のダレンは盾を構えながら、真っ直ぐウィルへと向かってきた。
ウィルの扱う武器は軽量な太刀であるため、盾との相性は悪い。その事はウィルも当然、気付いているため眉を顰める。
「先生!!」
ロイはすぐウィルの応援に向かおうとするが、デビットによって遮られてしまう。デビットの扱う武器は曲線を描く双剣。
「お前の相手は俺だぜ!!」
「え!? デビットさん、なんか持ってる武器変わってません!?」
先ほど外で見たときはロングソードを持っていたが、デビットが現在持っているのは全く違う武器だったため、ロイは驚いてしまう。
「俺は武器にこだわりはないからな!! さっき受付で借りてきた!!」
「そんなのありですかー!?」
ロイが絶叫しながら双剣から繰り出される連撃を、なんとかいなして攻撃の隙を見極める。しかしなかなか攻撃の手が止まらず、ロイは防御に徹しざるを得なくなっていた。
しかしその状況を抜け出す手立てが、早速やってきた。いや、正しくは飛んできたと言うべきだろう。
「うわ、あっぶね!?」
ウィルと戦っていたはずのダレンの盾が、デビットに向かって飛んできた。その盾を避けるために、攻撃を中断する。そしてデビットは一瞬だけ、ダレンの方に目を向けた。
ダレンは盾を失っているが、未だ余裕がありそうなのを確認するとロイに目を戻そうとする。時間にして0.1秒にも満たない一瞬。
しかしロイはその一瞬を見逃さず、攻めに転じた。ロイは剣を構えずにそのまま、デビットへ近づくと剣で切り上げる。
しかしデビットは腐ってもゴールドランクの熟練ギルドマン。ロイの攻撃は曲剣によって防がれてしまった。
「ははは!! 惜しかったなロイ君!!」
「くっそー今の防げるんですか!!」
しかしロイは諦めずに攻め続ける、双剣には手数は劣るが、ロイが使う剣は双剣よりも重さがある。次第にデビットの防御にも限界が近づく。
曲剣の防御はいなしが基本。しかしそれにも限界があった。剣自体の刃こぼれや振動による腕への疲労の蓄積はロイの比ではない。
(流石にこのままだとジリ貧だな。意外とロイ君は力が強いし、どうすっかな?)
デビットはそう考えながら、一度距離を取ろうとする。しかしその行動は結果的に失敗であった。
「デビット!! 後ろに気をつけろ!!」
離れた位置から聞こえるダレンの声に一瞬気を取られ、後ろを向いてしまう。後ろにはウィルは迫って来ており、さらにそれを追う様にダレンも走って近づいてくる。
「マジかよ!? タイミングが......ッ!?」
そこまでいるとデビットの体に激しい衝撃が響き、後方に飛ばされた事でバランスを崩し尻餅をついてしまう。
「ッ!?」
そしてちょうど尻餅をついた瞬間、後頭部へと新たな衝撃が来る。気を失う寸前に目に映ったのは、視界一杯を埋め尽くす靴底であった。
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「これであとはダレンだけだな?」
ウィルのあまりの容赦なさに、仲間であるはずのロイがドン引きしていた。
ウィルは一度後頭部を蹴り飛ばした後に、仰向けに倒れたデビットの顔面を、なんの躊躇いもなく踏んでいた。
「うっへぇ......先生、容赦なさすぎません?」
「戦士職は下手に加減すると痛い目を見るからな。それにこれくらいでは死なん」
淡々と答えるウィルは一切の油断を見せる様子なく、ダレンへと剣先を向けて構えていた。その様子を見たダレンは、苦笑いを浮かべた。
「あはは......ウィルさん。強いとは思ってはいましたが、ここまでとは思いませんでしたよ」
「これでも一人で旅をしていたからな。ある程度は強くないと話にならん」
「先生の強さは、そう言う次元ではない気がしますけど......」
ロイは今までの旅の最初は、明らかに他のものと異質な強さを持っている、ウィルへ違和感を持っていた。しかしそれも最近では鳴りを潜めていた。
最初に会ったウィルであれば、恐らくもっと容赦のない一撃を加えていたと確信できたであろう。しかし今ではそれなりの手心を加えるくらいには、ウィルの何かが変わっていた。
「さあ、人数は不利ですがまだあきらめませんよ!!」
ロイは今まで考えていた事を一旦頭から追い出し、目の前の戦闘に集中するよう意識を切り替える。
「行きます!!」
「......ああ」「容赦はしません!!」
1対2の攻防は長くは続かなかず、いつの間にか静まりかっていた訓練場に、サラの勝利宣言が響き渡った。
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