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4.絶賛、文化祭準備中
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しおりを挟む「菊ちゃん!ちょっと待ってて」
部屋にいる菊ちゃんに指を指しながら声をあげ「今下に行くからそこで待ってろ!」電話の向こうの相手に大声をあげ、スマホを耳から離し勢いよく部屋を出た。
置き去りにされた菊ちゃんは、勢い良くしまったドアに目を向け、パチパチとしばたかせていた。
バタバタ階段を降りれば母さんが驚いた顔でキッチンから顔をのぞかせて「ちょっと、りん!!そんなに勢いよく降りてきて、階段から落ちないでよ?」
「はいはい、分かってるっ!」
早口でまくしたて見向きもせず玄関に向かった。
何でこんな急いでるかと言えば─────。
『早く来ないと、インターホン鳴らして勝手にうちに上がる』と部屋を出た途端言われたから……。
かかとを踏んだまま、ドアを開けるとちょうどそこにインターホンを鳴らそうとしている変態悪魔がニヤリと笑いながら立っていた。
俺を見下ろし左の口角をあげると「遅い」と一言。
息を切らせた俺を見降ろしたまま「どーしたぁ?何でそんな慌てちゃってんの?あ、それに気になったんだけど電話越しで言ってた、菊ちゃんって誰?」
「誰でもないっ」
「あ、そぉか。お前実はオタクだから、何かのアニメのいい子ちゃんか?」
それなら、そう思っててくれた方がいい。
「なんか用?」
「あ?用がなきゃ立ち寄っちゃいけないわけ?彼氏が恋人の顔を見たいって思うのはフツーだろ?」
「な、何言ってんだ?」
こい、びと?
誰が?
俺?
声に出していたつもりだけど、何故かポカンと首を傾げている有栖川がいた。
「お前、何で顔赤いの?熱でもあるのか?」そう言って、おでこに手を当てられた。
「はぁっ!?触んな!」
何でって、俺が知るか!その手を払って「用がなきゃくんな!」そう言って踵を返した。
「倫太郎っ」
腕を掴まれ呼び止められた。
なんだよ…帰れ……。
「ホント、お前どうした?」
意外なほどの心配そうな声に胸が痛んだ。
「何でもない、から、今日は帰って……」
「お前、最近冷たい」
冗談か否か。こいつの発言にいちいち反応してたらつけあがる。
睨み付けるように振り返って「なんだよ!俺にどうしろってんだよ!」
こいつに突然”俺の女にしてやる”とかわけわかんない事言われて、正直それがどう言う事なのか全然わかんなくて、付き合ってるって言う確かなものもないし、ただ、顔を見れば拉致られ、キスされ触られて……俺は、こいつの性欲を満たすための道具にすぎないのかって思ったり。
「俺はっ─────」
「ん?」
「俺は、お前の性欲を満たすための道具じゃないっ!」
腕を振りほどいてドアを閉め、鍵もちゃんとかけた。
しばらくしてから、カチャリと門が閉まる音が聞こえ、足音が遠くなっていった。
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