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4.絶賛、文化祭準備中
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しおりを挟む**有栖川side⑥**
振り向く前に、表情筋を張らないと。
小さく深呼吸をして口角を上げ振り返る……だが一瞬にして上げた口角が下がった。
ニヤリと笑う向かいの生徒。
「あれぇ。せんせー顔がこわぁい」
「煩い。消えろ。今すぐ俺の前からいなくなれ」
「んなこと言わないでさ。義兄さん」
反吐が出る。お前に義兄さんなんてまして学校で言われるなんて最悪だ。
「和。学校では他人のフリをするんだろ?義兄さんなんてお気楽な声で呼ぶなよな?」
舌を出しながらとぼける目の前の生徒は、俺の義弟の二神和。
あぁ、今父親の事を思い出すのはイライラをさらに募らせるだけだ。
何時もの俺じゃなきゃダメだ。
手に持っていた社会の教科書を掲げながら「和くぅん、用があるなら準備室につくまでに行ってくれよな?」
いつもの様にヘラッとしながら席を離れた。
「ちょいっ!待ってよ!あのさ、武田君の事なんだけど」
掴まれた腕を振り払おうとした瞬間に口に出された名前に、うっかり反応してしまった。
和の顔を見るまでもない、何か企んでるに違いない。
瞬間的に思考が廻り「武田がどうかした?お前、クラス違うだろ」平然と接したつもりだけどこいつも察しがいい方だから何か勘付いたかもしれない。
「あぁ、まぁクラスは違うけど、コンテスト一緒に最終選考まで残ってる子がいるからどんな子かなって思って義兄さん……有栖川先生に聞きたくてね?」
「なんで俺にだよ」
「だって生徒でしょ?あれ?それ以上の存在だったりするのかな?」
俺の反応を見て楽しむのは、昔から変わってない。
大体二十歳も過ぎて高校生活をもう一度満喫してみたいとか親父に言って、何故か俺の赴任先に入学とか何考えてんだ。
年相応の時にちゃんと満喫しておけっての。
応援ありがとうございます!
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