やばい彼氏にご注意を

SIVA

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5. そして始まる文化祭

5-1

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体育館は、文化祭仕様になっていて少し薄暗くもやっぽくなってる。
スモークかなんかたいてんのか?
辺りをキョロキョロと見渡しながら歩いていると檀上の前でマイクの調整をしていた生徒会長が俺を見つけて手を振っているのが見えた。

遅かったね。みんな衣装の最終調整をしているよ。武田君も……って、後ろの人は?」
マイク越しに言っているせいで体育館中に生徒会長の話声がこだましている。
お陰で、チラホラいる生徒会員がこちらを見ながら作業をしている。
気まずい俺は、菊ちゃんの手を取り急いで壇上に向かった。
「あらやだっ。りんがあたしの手を取って……」
「変な想像してんな」そう言って、取った手を勢いよく離した。
「やぁん!繋いで!繋いでいてっっ!もう変な妄想しないからぁん?お・ね・が・い♡」
「煩い」
俺たちのやり取りをポカンとした表情で見つめている生徒会長。
「ごめん。ラインを見たのが朝で……。あ、こいつっっ……この人が昨日言ってた衣装づくりの─────「はじめましてぇ♡一応その道のプロでぇす!言われた衣装をちゃっちゃと作ってきたけど、これは誰が着るのかしら?」

(あ、そうだった。二神の話をするの忘れてた。そう言えば、菊ちゃん前に雑誌に載ってた二神をみてギャーギャー騒いでたな)

実物みたらこの人、気がおかしくなるんじゃないか?
菊ちゃんは、自分の作ってきた衣装の袋を生徒会長に掲げて見せた。
「あ、生徒会長、この人がっ―――――「この度は、お忙しいところを、ありがとうございました。本当に助かります。」
生徒会長は、俺を押しのけるように前に出ると姿勢を正しながら、深くお辞儀をした。
「やぁねぇ。お礼なんていらないわよぅ!あたしが好きで引き受けたんだから。それで?この可愛らしい衣装を着るのは誰かしら?」

俺、ズタズタにされた衣装しか見てないから、ちょっとどんな衣装か気になる。
菊ちゃんが持ってる袋の中を覗こうとしたら「あんた、何やってんのよ。見ちゃだめに決まってるでしょ」と袋を反対側にされてしまった。
「なんだよケチだな」
「どうとでもいいなさい。あなただってこの服の持ち主のライバルになるんでしょう?って、あなたの衣装もあたしが作ってるわけだけど……あぁ!もう!今はとにかく見せられないから!早くこの衣装を着る子連れてきなさい!!」
最終的に逆ギレをして舞台袖に入っていってしまった。
生徒会長は慌てた様子で菊ちゃんの後を追いかけた。
で、結局、菊ちゃんの紹介忘れたし……。

「おはよう。武田君。来ないと思ったよ」

背後から突然声をかけられ誰かと思いながら振り返ると二神が心なしか元気ないように見えた。
「お、おはよう。どうした?なんか元気ないみたいだな」
「昨日のあれを目の当たりにして、夜寝られると思う?」

まぁ、そうだけど……。

「衣装は出来上がってると思うから、舞台袖に行ってみるといいよ」
「え?」
目を丸くしている二神。

(ん?なんだ?この空気)

「いや、菊ち……あの人はその道のプロだから、いざとなったらこんなの一夜で作っちゃうから」
驚いた丸い目を一気に細めると「そうか。素晴らしい人なんだな。じゃあ行ってみるよ」そう言って、俺の肩を軽くたたいて横を通り過ぎていった。

「─────」

ん?
今……なんか聞こえた気がした。
通り掛けに囁いた二神の言葉に、無意識に背中の筋が凍った。
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