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5. そして始まる文化祭
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「うん。綺麗な子がプラカード持って歩いてるねぇってなって、見たことないけど、どこのクラスだろうって話になって、誰かが偵察に行って帰ってきたら興奮しながら、女子じゃなくて女装した男子だったよって大騒ぎ。プラカードもって有栖川先生と歩いていたのって、倫太郎君でしょ?」
えらいこっちゃ。とんでもない事になってるじゃんか。
今している自分の格好が恥ずかしい。
多分誰が見ても耳まで真っ赤になってるだろう。
だって自分でわかるくらい顔から火が出てる感じがしている。
「あぁ、まぁ仕方なく……」
しどろもどろになりながら返事を返した。
「プラカード持って有栖川先生と歩いていたからさ、普通に女子生徒と先生って感じで後ろから見たらいい感じだったってクラスの子が言ってたんだよぉ」
「普通に……女子と、いい感じ……」
なんだかズキッと胸のあたりが重たくなった。
クスクス笑う園崎さんは「まさか倫太郎君の事だとは思わなかったな。ホントに綺麗♡」
俺の姿を今一度足の先から舐めるように見ながら言った。
褒められてもちっとも嬉しくないこの現状をどうしてくれる。作り笑いとばれそうなくらいの笑顔で「あ、ありがとう」と言っておいた。
整理券を渡して後ろに並んでいる人の方へ向かった。
「ねぇ。これって倫太郎君もいるの?」
後ろからまた園崎さんに声をかけられ振り返りながら首を横に振った。
「え?どうして?」
「俺、コンテストがあるから」
小さくお辞儀をして急いでその場を後にした。
ダメだ。ダメだダメだ。
なにやってんだ俺は。
こんな恰好早く着替えたい!
「はい。整理券配り終わったから、もういいかな」
早口でまくしたて、視線も合わさずに整理券を突き返し教室を飛び出した。
「ありがとう。倫太郎君。コンテスト頑張ってね」なんて言葉は、飛び出した俺の耳には入ってこなかった。
***
「あれ、武田は?」
ひょっこり戻ってきた有太が、女子に整理券を返しながら質問している。
「あ、うん。なんか凄い青ざめた顔してたけど、大丈夫かな。着慣れない物を着たから、嫌になるのも当然だよね。でも、武田君効果は抜群だったんだよねぇ。あ、相良君も意外とイケてるよ?」
「取ってつけたみたいに言うなよ。けど、ま、ありがと」
女子はきょとんとした顔をしている。
「なんだよ」
「相良君って、見た目と全然印象が違うよね。びっくりした。話してみないとわからないことって本当にあるんだね」
目をしばたかせ言葉を失っている有太。
くすっと笑った女子は、整理券を持っている手を小さく上げて前を通り過ぎていった。
思いがけない言葉に、耳まで真っ赤にしている有太。
「オレ、オレには、倫太郎がいるから無理……」
とんだ勘違い男は、その後もメイド服を着たままクラスの出し物に参加していた。
えらいこっちゃ。とんでもない事になってるじゃんか。
今している自分の格好が恥ずかしい。
多分誰が見ても耳まで真っ赤になってるだろう。
だって自分でわかるくらい顔から火が出てる感じがしている。
「あぁ、まぁ仕方なく……」
しどろもどろになりながら返事を返した。
「プラカード持って有栖川先生と歩いていたからさ、普通に女子生徒と先生って感じで後ろから見たらいい感じだったってクラスの子が言ってたんだよぉ」
「普通に……女子と、いい感じ……」
なんだかズキッと胸のあたりが重たくなった。
クスクス笑う園崎さんは「まさか倫太郎君の事だとは思わなかったな。ホントに綺麗♡」
俺の姿を今一度足の先から舐めるように見ながら言った。
褒められてもちっとも嬉しくないこの現状をどうしてくれる。作り笑いとばれそうなくらいの笑顔で「あ、ありがとう」と言っておいた。
整理券を渡して後ろに並んでいる人の方へ向かった。
「ねぇ。これって倫太郎君もいるの?」
後ろからまた園崎さんに声をかけられ振り返りながら首を横に振った。
「え?どうして?」
「俺、コンテストがあるから」
小さくお辞儀をして急いでその場を後にした。
ダメだ。ダメだダメだ。
なにやってんだ俺は。
こんな恰好早く着替えたい!
「はい。整理券配り終わったから、もういいかな」
早口でまくしたて、視線も合わさずに整理券を突き返し教室を飛び出した。
「ありがとう。倫太郎君。コンテスト頑張ってね」なんて言葉は、飛び出した俺の耳には入ってこなかった。
***
「あれ、武田は?」
ひょっこり戻ってきた有太が、女子に整理券を返しながら質問している。
「あ、うん。なんか凄い青ざめた顔してたけど、大丈夫かな。着慣れない物を着たから、嫌になるのも当然だよね。でも、武田君効果は抜群だったんだよねぇ。あ、相良君も意外とイケてるよ?」
「取ってつけたみたいに言うなよ。けど、ま、ありがと」
女子はきょとんとした顔をしている。
「なんだよ」
「相良君って、見た目と全然印象が違うよね。びっくりした。話してみないとわからないことって本当にあるんだね」
目をしばたかせ言葉を失っている有太。
くすっと笑った女子は、整理券を持っている手を小さく上げて前を通り過ぎていった。
思いがけない言葉に、耳まで真っ赤にしている有太。
「オレ、オレには、倫太郎がいるから無理……」
とんだ勘違い男は、その後もメイド服を着たままクラスの出し物に参加していた。
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