THIEF -シーフ-

knock現る！

1-2

「俺を誰だと思ってんの？」


『そうね。失礼しました』


皮肉交じりの言葉に、インカム越しの声の人物は、ルパンの後ろに立った。


「後ろは任せて」


すぐ後ろで声を出した、スレンダーな美女。


黒い服装に赤毛、ヒップのラインがくっきりと見える。


「ベス。今日は、楽勝だな」


「気を抜くと、つかまるわよ」


突然、ルパンの手がとまった。


「確かに、気を抜くとやばいな」


ガシャン


ガシャン


ルパンは、壁に埋め込まれている金庫から離れながら、手を挙げた。


「なに？どうしたの？」


「くそオヤジめ」


金庫は、見る見るうちに形を変え、頭上高くそびえるビルのようになった。


「がっはっはっは！さすがの怪盗紳士も、このシステムにはお手上げかな？」


突然大きな声が屋敷中に響き渡った。


その声を聞きつけ、屋敷中の警備の人間が、ぞろぞろとまるで、軍隊アリのような群れを作って集まり始めた。


「参ったねぇ。どうするか……」


「まったく。のんきな事を言って！！チップ！すぐに、脱出経路を確保して」


『了解、姫』


「あいつ。調子乗ってるわね。後で痛い目に・・・」


「ベス」


ルパンに呼ばれ、振り返るとはるか先に、体つきがほかの警備の人間よりもしっかりとした男が、仁王立ちしているのが見えた。


「アイザック・ベンジャミン」


ベスは、低い声で言った。


「だから、この屋敷はいやだって言ったのよ。ライトどうするの？」


「どうするって、逃げるにきまってるだろう？俺たちがつかまったら、記者にぼろくそかかれるぞ？」


「こんなときにも、世間の目を気にする余裕があるなんて、信じられないわ」


「ま、そうカリカリするなよ。目的のものを頂いたんだ。後は、チップに任せよう。チップ！どうだ？」


『完璧！今から案内するよ』


「さすが」


『おほめの言葉は、後で。すぐに来た道を戻ってくれ。10メートル先に、隠れ扉がある』


「了解」


インカムから手を離し、ルパンは、仁王立ちしている男を見据えた。