THIEF -シーフ-

SIVA

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名探偵 レニー

2-2

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「みなさん、適当に座ってください。今から、資料を渡します」


レニーは、テキパキと資料を手渡していった。


「資料にもあるように、昨日「knock」がアイザック・ベンジャミン邸に忍び込みました。しかし彼らは、ベンジャミン氏によって罠にかかりました」



「罠にかかったって、逃げられてるじゃないか」


レニーと向かい合っている、男たちの中から罵声が飛んだ。


レニーは、声のする方に視線をやりながら「彼らは、ベンジャミン氏の罠にあえてかかったものと思われます」と、落ち着いた声で言った。


「どういう事?」


隣で話を聞いていた、オーエンが、小声でレニーに話しかけた。


レニーは、ほとほとあきれた顔でオーエンを見た。


「先輩。まず「knock」のメンバー分かってます?」


突然言われ、オーエンは小さく首をかしげた。


オーエンは殺人課の刑事。
「knock」の存在を知らないはずはないが、彼のこのおっとりとした性格上、知らなくても無理な気はしていた。


「俺さ、資料昨日もらったんだよね……それまで、連続切り裂き魔の捜査してたから……」


何故オーエンが、その捜査からはずされたのか、レニーは理由を知っていた。


オーエンは、連続殺人犯と対峙していた。


しかも、犯人から接触をしてきた。


それに気づかなかったオーエンは、犯人にまんまと襲われ全治三カ月のけがを負ったのだった。


「そんなの、理由になってません。ここにいる人たちは、先輩以上に仕事をこなしてるんですよ?」


負傷した右足を見ながら言った。


「そうだよな、悪いっ。それで?」


レニーは、会議室をぐるりと見渡したあと「詳しい話をする前に、このチームに初参加の人もいるようなので簡単に「knock」のメンバー等の説明をします」言いながら、立ち上がりオーエンを見下ろした。


「「knock」の結成時は不明ですが、一番初めの窃盗は、トマス邸の時価数億円のシャンデリア―――――」


「シャンデリア!?あんなもんどうやって・・・」


「あれは、6年前の事です―――――」


レニーは、持っていた資料をいったん机に置いた。


***


当時のレニーは、新前の刑事だった。


『おいっレニー!俺についてこい!』


レニーの面倒を見ていたのは、ひげ面の男。


「ビル。わたし……もう……無理です……」


真夏の炎天下の中、肩で息をしているレニー。


「お前、そんなんでへばってたら、一人前の刑事になれないぞ!」


ひげ面の男、ビルは、レニーの肩をガシガシ叩きながら、薄くなり始めた額の汗をぬぐった。


「一人前にならなくていいです……」


レニーは、その場に座り込み、大きくため息をついた。


ふと、顔を横に向けるとこの時期にしては不釣り合いな恰好をした女が歩いていた。


首をかしげながら、その女の行動をじっと見ていると、道路を挟んだ向かいに、ひときわ目立つ大柄な男を見ていた。


「あぁ……ビル?あの、なんか不審な人物がいるんですけど……」


ビルは、神妙な面持ちで、携帯で誰かと話をしていた。


レニーは、立ち上がり女の後をつけることにした。


「ビル!わたしちょっと尾行してみますけど……」


ビルは、片手をあげてレニーに背中を見せてしまった。


一応確認はとった……。


レニーは、自分にそう言い聞かせ誰となくうなずくと、女の後をつけた。


前にいる女と平行して、向かいの大柄な男も一緒に歩いていた。


レニーは、気づかれないように、見失わないように、必死に尾行を続けた。


途中、女が振り返り冷やりとした場面があった。


レニーは、急いで人影に隠れた。


一呼吸をして歩き出したが、すぐに足がとまった。


「あれ……」


前にいたはずの女の姿が忽然となくなっていた。


更に向かいも見たが、向かいの男の姿も消えていた。


「あなた、何者?」


辺りを見回していると、レニーの真後ろから低い声が聞こえた。
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