THIEF -シーフ-

SIVA

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事件発生

5-2

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***


あの日、ライトたちがお宝を頂戴しようとベンジャミン邸へ忍び込んだ時、不覚にもエリカと遭遇してしまった。


『チップ。お前ちゃんと報告しろよな。なんで屋敷の令嬢がここにいるんだ』



『そりゃこっちが聞きたいよ!今日令嬢はクルーザーでプライベートパーティーのはずだ』



『だが、ここにいる・・・』




ライトは、インカムから手を離しエリカを見下ろした。




『お願い!私を誘拐して』



彼女はライトを見つけるや否や彼にしがみつき声を上げた。



『は?!』


突然大きな声をあげられ焦ったライトは、あたりを見回しながらエリカの肩を掴んだ。



『おいおい、そりゃさすがにやばいぜ。そんなお荷物抱えて、逃げ切れるわけがない』



『わかってる』



『お願い!あんなものより、私を誘拐して』


エリかの言葉に、視線を彼女に戻すと首を傾げ『あんたに、それだけの価値があるのか?』低い声で問うた。


『・・・あなた、私を覚えていないの?』


エリカは、意味深げに言いライトの目をじっと見つめた。


暫く見つめ合った形になった二人はどちらが視線を離すかそんな奇妙な駆け引きをしていた。



『さぁね』


折れたのはライトの方だった。



視線を逸らし、インカムに手を当てながら今後のプランの練り直しを考えた。


『そぉ・・・』


エリカは、少しさびしげに下を向いた。


ライトはまた首を傾げながら彼女を見たが、彼女は最後の訴えかのように大きな瞳でライトを見上げた。


『覚えていないのなら、それならそれで構わないわ。いいから私を誘拐して』



『誘拐って、あんたわかってんのか!!?バレたら俺達が誘拐犯にされるんだぞ!?』


チップはライトに向かって叫んでいる。



その声が煩いのか首を傾げながら、インカムを耳から少し離した。



『チップ・・・。お前の声は彼女には聞こえん』



『あぁそ、そうだな。すまない』


ライトは、しばらく考え辺りを見回した。


『この厳重な警備の中、あんたも見つからずにここにいるってことは、秘密の通路的なものがあるってことか』


エリカは小さく頷いた。


『父から逃げたい時はいつもその場所を使ってるわ』


『チップ。彼女から逃げ道を聞いておけ』


『どうやって!?』


ライトは、ポケットからインカムを取り出し彼女に渡した。


『話に乗ってくれるってこと?』



『あぁ。半分な』



チップは、インカム越しにギャーギャー騒いでいたが、ライトとエリカは、それを無視して話を進めた。
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