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キミに託す【第二部】
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あれからどれほどの時間が経ったのだろう、俺は小鳥のさえずりが聞こえたためゆっくりと重々しく瞼を開ける。
病室内は窓から入ってくる太陽光によって照らされ電気は不要なほど明るかった。
寝る前の騒々しかった病室とは打って変わって静寂が支配しており、壁に掛かられている時計の針の音が響くほどに。
「っ……こりゃすっげぇや」
体全体に走る激痛に歯を噛み締めて何とか耐える。あまりの激痛になぜか感動すら覚える。
本当になんでなのか分からないが。
まあもしかすると俺が自覚していないだけでMなのかもしれないが……気にしないでおこう。その方が身の為だと思うから。
「いやしかし、なんで寝る前は親が来ずにあの同じ高校の制服を着た女子が来たんだ?」
普通なら、というかアニメやドラマなら目覚めたらすぐ横に親がいて「よかった……」などと零すのが定番で、現実もうそうだと思っていたが、まあ両親共々所謂共働きでいつも夜遅くまで残業をしているからなのだろう。
あの少女は誰なのだろうか、いや、恐らく俺が轢かれる前に、迫る車に気が付かなかった少女か、と記憶を遡って確認する。
そんなことを考えてると横の方からブブブという振動音と共にテロリンテロリンと聞き覚えのある音が聞こえてくる。
音の聞こえる方へ視線を飛ばすと、画面がバッキバキに割れて四方八方に線が広がってしまっているスマホに着信が来ていた。
痛む腕と手何とか伸ばしてスマホを手に取ると、割れた画面に『オヤジ』と書かれていた。俺は応答ボタンを押して電話に出る。
「オヤジ? どうかした?」
「どうかしたって……お前事故に遭ったんだってな」
「あーうん。なんか車に轢かれた」
「病院から電話が掛かってきたから大体のことは知ってるんだが、なんで車に轢かれたんだ? お前はちゃんと信号は守るやつだろ?」
「えーっと、多分人を庇って? 轢かれた」
「いや、なんでそんな曖昧なんだよ」
「んーっと、まあ、事故ってからここまで殆ど寝てたからあんまし状況か分かってないんだよ」
「そうなのか……俺たちは仕事だから今は行けないけどお大事にな、母さんも心配してるはずだから」
「……うん、そっか、分かった。じゃあ切るよ?」
「おう」
電話の相手は父親の三上 久留田で、駅のホームにいるのか乗換案内の放送が微かに聞こえてくる。
そして久留田は俺を心配して電話を掛けてきたようで、最初は焦りがあるような声だったが、最終的には安堵したようで声が穏やかになっていた。
久留田との電話を切ると、ぼーっと白い天井を見上げる。そして心の中で深々と溜息を吐く。
(心配してるはず......か、なんで分かるんだろうな)
久留田が言っていた母さんは俺が中学の頃に癌で亡くなってしまった。だから久留田は母さんが天国から心配してると言いたかったのだろう。分かりにくいわけではないが、もうちょっと言葉を足してほしいのだが、まだ認めたくないからかと勝手に自己完結をするのだった。
起きて暫くすると病室の扉が開き白衣を着た女性が姿を現す。
「やあやあ三上さん、起きてたようだね」
「あ、あの、どちら様で?」
「もうこの姿を見て分からない? 医者だよ! ここの病院の医者!」
「そうなんですか............それで、俺の体ってどうなったんです?」
「え~っと三上、瑠木さんで合ってるかな?」
「あーはい、そうです」
「三上さんは車に轢かれたのと、それで高く飛んで落ちてしまったのが原因で全身複雑骨折」
「そうなんですか............今回の件で、その、癌って進むんですか?」
「んー正直まだちゃんと検査してないから分かんないけど、臓器に損傷があるだけだから進むことはないと思う。あ、それと、君の妹さんに癌の事教えちゃってよかったかな?」
「......は? 妹? 俺に妹なんて......」
「え? 君が庇ってあげたあの娘って君の妹じゃなかったの? 親が離婚したから苗字が違うって言ってたけど......今考えてみれば元家族って感じじゃ......」
「まあ、いいです。言っちゃったものは仕方ないですし、多分あの人は今日も来るでしょ、知りませんけど」
医師なのに患者の情報をほいほいと赤の他人の嘘に乗せられて流してしまうのはどうかと思うが、いずれあの女子生徒には会話を交わすことになるだろうし、その時にでも癌ではないと嘘を吐けばいい。
なので医師には他言無用とし、これ以上他の誰かに話すことがないよう釘を刺しておく。
医師はトボトボと元気をなくし、ゲッソリとした様子で病室を後にする。その直後、閉められたドアが大きな音を立てて開け放たれる。
噂をすればなのか、そのドアの前に立っていたのはさっきまで医師との会話で登場したあの女子生徒だった。
ぜえぜえと息を切らしながらもズカズカと歩み寄ってきて、俺が寝転んでいるベッドの隣にあるパイプ椅子へ腰掛ける。
「三上、さんでしたよね?」
「あ、ああ、そうだけど、なんで君がここに?」
「.........癌ってどういうことですか?」
俺の質問にも答えて欲しいのだが、まあそれは今はどうだっていい。それよりもここで何とかうまくこの少女を騙せないと後々面倒になる気がする。
病室内は窓から入ってくる太陽光によって照らされ電気は不要なほど明るかった。
寝る前の騒々しかった病室とは打って変わって静寂が支配しており、壁に掛かられている時計の針の音が響くほどに。
「っ……こりゃすっげぇや」
体全体に走る激痛に歯を噛み締めて何とか耐える。あまりの激痛になぜか感動すら覚える。
本当になんでなのか分からないが。
まあもしかすると俺が自覚していないだけでMなのかもしれないが……気にしないでおこう。その方が身の為だと思うから。
「いやしかし、なんで寝る前は親が来ずにあの同じ高校の制服を着た女子が来たんだ?」
普通なら、というかアニメやドラマなら目覚めたらすぐ横に親がいて「よかった……」などと零すのが定番で、現実もうそうだと思っていたが、まあ両親共々所謂共働きでいつも夜遅くまで残業をしているからなのだろう。
あの少女は誰なのだろうか、いや、恐らく俺が轢かれる前に、迫る車に気が付かなかった少女か、と記憶を遡って確認する。
そんなことを考えてると横の方からブブブという振動音と共にテロリンテロリンと聞き覚えのある音が聞こえてくる。
音の聞こえる方へ視線を飛ばすと、画面がバッキバキに割れて四方八方に線が広がってしまっているスマホに着信が来ていた。
痛む腕と手何とか伸ばしてスマホを手に取ると、割れた画面に『オヤジ』と書かれていた。俺は応答ボタンを押して電話に出る。
「オヤジ? どうかした?」
「どうかしたって……お前事故に遭ったんだってな」
「あーうん。なんか車に轢かれた」
「病院から電話が掛かってきたから大体のことは知ってるんだが、なんで車に轢かれたんだ? お前はちゃんと信号は守るやつだろ?」
「えーっと、多分人を庇って? 轢かれた」
「いや、なんでそんな曖昧なんだよ」
「んーっと、まあ、事故ってからここまで殆ど寝てたからあんまし状況か分かってないんだよ」
「そうなのか……俺たちは仕事だから今は行けないけどお大事にな、母さんも心配してるはずだから」
「……うん、そっか、分かった。じゃあ切るよ?」
「おう」
電話の相手は父親の三上 久留田で、駅のホームにいるのか乗換案内の放送が微かに聞こえてくる。
そして久留田は俺を心配して電話を掛けてきたようで、最初は焦りがあるような声だったが、最終的には安堵したようで声が穏やかになっていた。
久留田との電話を切ると、ぼーっと白い天井を見上げる。そして心の中で深々と溜息を吐く。
(心配してるはず......か、なんで分かるんだろうな)
久留田が言っていた母さんは俺が中学の頃に癌で亡くなってしまった。だから久留田は母さんが天国から心配してると言いたかったのだろう。分かりにくいわけではないが、もうちょっと言葉を足してほしいのだが、まだ認めたくないからかと勝手に自己完結をするのだった。
起きて暫くすると病室の扉が開き白衣を着た女性が姿を現す。
「やあやあ三上さん、起きてたようだね」
「あ、あの、どちら様で?」
「もうこの姿を見て分からない? 医者だよ! ここの病院の医者!」
「そうなんですか............それで、俺の体ってどうなったんです?」
「え~っと三上、瑠木さんで合ってるかな?」
「あーはい、そうです」
「三上さんは車に轢かれたのと、それで高く飛んで落ちてしまったのが原因で全身複雑骨折」
「そうなんですか............今回の件で、その、癌って進むんですか?」
「んー正直まだちゃんと検査してないから分かんないけど、臓器に損傷があるだけだから進むことはないと思う。あ、それと、君の妹さんに癌の事教えちゃってよかったかな?」
「......は? 妹? 俺に妹なんて......」
「え? 君が庇ってあげたあの娘って君の妹じゃなかったの? 親が離婚したから苗字が違うって言ってたけど......今考えてみれば元家族って感じじゃ......」
「まあ、いいです。言っちゃったものは仕方ないですし、多分あの人は今日も来るでしょ、知りませんけど」
医師なのに患者の情報をほいほいと赤の他人の嘘に乗せられて流してしまうのはどうかと思うが、いずれあの女子生徒には会話を交わすことになるだろうし、その時にでも癌ではないと嘘を吐けばいい。
なので医師には他言無用とし、これ以上他の誰かに話すことがないよう釘を刺しておく。
医師はトボトボと元気をなくし、ゲッソリとした様子で病室を後にする。その直後、閉められたドアが大きな音を立てて開け放たれる。
噂をすればなのか、そのドアの前に立っていたのはさっきまで医師との会話で登場したあの女子生徒だった。
ぜえぜえと息を切らしながらもズカズカと歩み寄ってきて、俺が寝転んでいるベッドの隣にあるパイプ椅子へ腰掛ける。
「三上、さんでしたよね?」
「あ、ああ、そうだけど、なんで君がここに?」
「.........癌ってどういうことですか?」
俺の質問にも答えて欲しいのだが、まあそれは今はどうだっていい。それよりもここで何とかうまくこの少女を騙せないと後々面倒になる気がする。
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