キミがまた笑える日が来るまで

空野そら

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第一章:僕らに慣れるまで

第一章:第六話【ゴミ袋】

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 各々朝食を取り終わりそれぞれ自由にしていたのだが、突然智美紀ちみきが予想外の事を言い出す。


「そうだれい菜美なみちゃんと一緒にお買い物行ってくれる?」
「......無理だ。俺も菜美も予定がある」
「あら、そうなの?」
「菜美の部屋を掃除するからな、そんな買い物よりも大事な予定だ」
「ん~、でも瑠偉ができるの? お掃除苦手だったじゃない」
「いつの話だよ......さすがにこの年になったら掃除くらいはできるようにはなってる。いつまでも子供じゃないんだよ」


 シュンと分かりやすく落ち込む智美紀を横目に見ながら俺はリビングを後にすると洗面所の引き出しの前に立つ。そして片っ端から引き出しを開けて特大サイズのゴミ袋を捜索し始める。
 次々と開けていくも悉く入っておらず、やがて最後の一つになってしまった。ここに入っていなければどこにあるのか皆目見当つかない。
 そこまで緊張する必要はないのだが、内心話題を飛躍させ過ぎているのか鼓動が早く打ち付けるのを感じる。


「......ッ」


 一度深呼吸をしてから思いっきり取っ手を引っ張る。細くしていた目をバッと開けると、そこには籠の中に畳まれたタオルが何個も積まれている光景があった。その瞬間頭の中は「どこにある?」という疑問に支配されるのだった。




「もう、私に聞いてくれたら直ぐに教えるのに、零ったら強がりよねぇ」
「うるせぇ、仕方ねぇだろ......」
「ん? 何が仕方がないの?」
「うるせぇ! もういいだろ、ほら菜美も行くぞ」
「............」


 智美紀が詮索しているのを無理やり断ち切ると、俺は菜美に言葉を掛けて共に菜美の部屋へ向かう。部屋の前で「今から菜美の部屋に入るのか」と少しばかり緊張をする。まあ緊張するのは仕方がないだろう。なんたって今まで母親くらいしか異性との関りがなかった俺がいきなり異性の部屋に入るのだから。
 さらに言えば菜美は引きこもりになる前は学校の美少女とも謳われた女の部屋、それで緊張しないという男の方が少数なのではないだろうか。俺は覚悟を決めて、ドアの取っ手を捻って引っ張る。
 そこに広がっていた光景は、照明が付いていなくとも分かるほどに床にゴミが散乱している様子だった。
 良い言い方にするならば片付けがいのある部屋、悪い言い方をするならばゴミ屋敷。そう言えるぐらいの状態だった。
 俺は一つ息を吐いてから、かぶりつくようにゴミの清掃と、断捨離を始めていく。
 ......なぜ、出てきたばっかりの引きこもり幼馴染の部屋を掃除することになったのか、それは全く分からない。だがこれで菜美が少しでも元の生活に戻ることができるのならば、俺はなんでも尽くすと誓ったのだ、あの日に。
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