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第25話 聖女は幸せをみつける
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エスティナ率いる神殿騎士たちとヴァイス率いるレイドルフとディアナは互いに構えてタイミングを伺うも、レイドルフの方が先に動き、目にも止まらぬ速さで護衛の神殿騎士の前へと現れた。
「なっ!?」
「遅いッ!」
レイドルフは神殿騎士が防御態勢を取る前に闘気を込めた右手を神殿騎士の胴体へと叩き込む。神殿騎士は大きく後方へとふっ飛ばされ、木にぶつかるとそのまま崩れ落ちた。レイドルフによって一撃でやられた神殿騎士は決して弱い方ではなかったが、それ以上にレイドルフの武勇が勝っていた。
「ふん、レイドルフに負けてられんな。……【風刃烈破】!!」
ディアナがそう呪文を唱えると、空気の刃を伴った旋風が神殿騎士たちを襲った。神殿騎士たちは空気の刃によって体のいたる所を切り裂かれ、さらにその風によって次々に吹き飛ばされ後方の岩の壁に激突させられた。神殿騎士たちはその場に倒れ、意識を失う。
エスティナは護衛の騎士を守ろうとするも、レイドルフとディアナの連携攻撃の前に右往左往するだけだった。近接戦闘のエキスパートである獣人王と最高クラスの魔法の使い手であるエルフの女王が相手では、いくら聖女エスティナといえど味方を守りながら戦うのは不可能に等しかった。その間にもレイドルフとディアナは他の護衛の神殿騎士を倒していき、気がつけば護衛は全滅してエスティナ一人となっていた。
「く、みんな……」
「ふん、こんなものか……全く骨がないな。……聖女よ、次はお前の番だ」
レイドルフはそう言うと、エスティナに向かって目にも止まらぬスピードで蹴りを繰り出した。
「ぐっ……」
エスティナはそれをかろうじて防ぎ、反撃の右ストレートを放つ。しかし、それは避けられ空を切った。
「ほぅ、これを防ぐとは……少しはやるようだな!」
それからレイドルフとエスティナの打撃の応酬が始まった。エスティナはさすが聖女姉妹の中でも武闘派と言われるだけあって、レイドルフの攻撃にもなんとか対処ができていた。しかし、総合的な近接戦闘力はレイドルフの方が上であり、エスティナは徐々に押されていった。
「ほらほら、どうした? さっきから防戦一方だぞ?」
レイドルフは絶え間なく攻撃を放ちながらそう言った。エスティナは獣人王の攻撃を捌くことで手一杯だった。
(くっ、さすがに強いわね……。できれば切り札は取っておきたかったけど……そうも言ってられないか)
エスティナは獣人王から少し距離を取ると、今までとは違う構えを取った。
「正直、ここまでやるとは思わなかったわ……。さすが獣人王といったところかしら? 仕方ないから、私の本気を見せてあげる」
エスティナはそう言うと、すぅっと息を吸いて吐き、自身に意識を集中させた。
「――【聖闘気】解放!!」
エスティナがそう言った次の瞬間、光のオーラがエスティナの体を纏い始めた。傍目からもわかるほどに、エネルギーに満ちたオーラだった。それはレイドルフの闘気と似たものであったが、エネルギーの質量は【聖闘気】の方が闘気を大きく上回っていた。
レイドルフは聖闘気を纏ったエスティナを見て、「ほぅ……」と呟いた。エスティナはそんなレイドルフに向かって言った。
「これからが本番ってね! ――いくわよ」
そう言ってエスティナは目にも止まらぬ速さで獣人王に近づくと、渾身の右ストレートを繰り出す。
「ぐっ!」
レイドルフはこれを防御するもその威力と速さは今までとは桁違いだった。今度はレイドルフが完全に防戦一方となり、エスティナの一方的な攻撃が続いた。
「はぁっ!」
エスティナがレイドルフの隙をついて右ハイキックを獣人王の顔に叩きつける。
「ぐはっ!」
レイドルフは大きく後方に吹き飛ばされた。レイドルフは地面に倒れるもよろよろと起き上がる。ヴァイスとディアナは特に気にすることなくレイドルフを見ていた。二人はレイドルフがエスティナと一騎打ちになってからは全く戦闘には手を出さず、ただ面白そうにレイドルフとエスティナの闘いを見物していた。
「……やるじゃないか」
レイドルフは起き上がると肩で息をしながらそう呟いた。
「――では、オレも本気を出すとしよう」
そう言ってレイドルフがニヤリと笑うと、レイドルフの身体は大きく変化し始めた。腕や足はより太くなり、背丈も大きくなる。さらに信じられないことに、レイドルフの両肩の辺りから何かがずりゅずりゅと生えていくる。……それは新たな『腕』だった。
エスティナは獣人王レイドルフの変化を驚愕した顔で見つめていた。四本の腕を持つ獣人族など聞いたことがないし、そもそもこんな変化は異常だとエスティナは思った。
さらにレイドルフは今までとは違う禍々しい黒いオーラを纏い始めた。それはレイドルフの闘気が寄生生物となることによって変化した【蝕闘気】と呼ばれるものであった。
「くく、これが寄生生物となったオレの力だ。素晴らしいだろう? お前相手では十分に本気が出せそうだ。……では続きを始めるとしようか」
レイドルフはそう言うと、エスティナに襲いかかった。……それからはただ一方的な展開が続いた。蝕闘気を纏い、変異したレイドルフはエスティナに猛攻を加え、エスティナはそれをなんとか防御するので一杯一杯だった。変異後の獣人王レイドルフの力は圧倒的で聖闘気を解放したエスティナですら歯が立たなかった。聖闘気でダメージを軽減しつつも徐々にエスティナにダメージが蓄積していく。
「はぁっ!!」
レイドルフの繰り出したボディーブローがエスティナの脇腹に綺麗にヒットする。
「がっ……はっ……」
耐えきれずにエスティナが腹を押さえて悶絶する。そこにさらにレイドルフが左アッパーを繰り出し、エスティナの顎を完璧に捉えた。エスティナは大きく後方に弾き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。エスティナは満身創痍で意識は朦朧としていた。もはやエスティナにはこれ以上戦闘を続けるだけの力は残っていなかった。
(くっ……ここまで……強い……なんて……。イザリア姉……ルーフィ……ごめんね……)
ヴァイスはきっと自分にトドメを刺しに来るだろう。そのときが自分の命が尽きる時なのだとエスティナは思った。エスティナが動けないでいると、何やら地面が盛り上がり、壁のようになると、壁から出現した鎖によってエスティナは壁に磔にされた。それはヴァイスの錬金術によるものだった。
「……くく、どうやら決着はついたようだな、エスティナ。自慢の聖闘気も寄生生物の力には敵わなかったというわけだ」
ヴァイスがそう言って、不敵な笑みを浮かべながらエスティナの方へと歩いてきた。
「……まさか……あんたが……人間を、魔物に……変えていたとは……ね……」
磔にされたエスティナはそう言ってヴァイスを見る。
「魔物ではない。寄生生物だ。全く違うものだよ」
ヴァイスはそう言った。
「先ほども言ったが、お前の妹のルーフィは既に寄生生物になっている。レイドルフと同じようにな……。今では忠実な俺の配下だよ。まぁ、そのうち会わせてやるさ……」
「!!」
エスティナはルーフィがレイドルフと同じという言葉を聞いて衝撃を受けた。最初は何のことかわからなかったが、きっとヴァイスはルーフィを獣人王レイドルフのように何か洗脳を施して、身体を人間のそれではない寄生生物とやらに変えたのではないか。もし、それが本当なら絶対にヴァイスを許すわけにはいかないとエスティナは思った。
「まさか……ルーフィを獣人王のように魔物に改造したんじゃないでしょうねッ!」
エスティナはそう言ってヴァイスを睨む。
「……だから、魔物じゃなくて寄生生物だと言っているだろう。改造ではないし、外見も基本的には人間のままだ。ただ、レイドルフが俺に従うように、ルーフィも俺に従うようになったがな。そういう意味では、お前が知っているルーフィはもういないかもしれん」
ヴァイスはそう言って薄笑いを浮かべた。ヴァイスの言葉を聞いて、エスティナは愕然とした。まさか、自分の実の妹であるルーフィがヴァイスの手によって洗脳され、さらにはヴァイスの手先になったというのか? エスティナはそう考えると、怒りの感情がふつふつと沸いてきた。
「この……人間の皮を被った悪魔がッ!!」
エスティナはそう言ってヴァイスを睨んだ。その目は怒りの炎で満ちていた。エスティナはヴァイスに一発くれてやろうと手を動かしたが、満身創痍の身体には鎖を引きちぎるほどの力はなかった。
「おやおや悪魔とは……。お前こそ聖女のふりをした悪魔ではないのか? よくもまぁ善良な一市民であった俺を王国から追放しておいてそんなことが言えるものだな」
「……そ、それはそもそもあんたが異端の罪を犯したせいでしょッ! 逆恨みにもほどがあるわ!!」
「逆恨み? それはそれで結構。だが、お前たち聖女がこんな目に遭っているのは、お前たち自身の行動のせいだと覚えておくんだな。……あの時、俺を捕らえたりなどしなければ、俺が寄生生物を生み出すこともなかっただろう。ま、そういう意味ではお前たち聖女には少し感謝はしているがな……」
ヴァイスはそう言った。
「感謝? それは嬉しいわね。じゃあその感謝の印としてこの鎖を解いてもらおうかしら!」
エスティナはそう言ってじゃらじゃらと鎖を鳴らす。
「もちろんだ。君が寄生生物になったら今すぐにでも解放しよう」
ヴァイスはそう言って肩をすくめた。
「……ふふ、じゃあ始めようか。最近、面白いタイプの寄生体を開発してね。気に入ってくれると嬉しいんだが」
ヴァイスはそう言うと懐から小さな瓶を取り出し、蓋を開けるとそっと地面に置いた。すると中から小さな紫色のスライムのような形をした生物が出てきた。それはズルズルとエスティナの方に進んでいった。エスティナはそれを見て、直感的にこれはやばいヤツだと思った。
「こ、来ないで……ッ!!」
エスティナはどうにか脱出しようと足掻くも、鎖が千切れることはなく、その場から逃れることはできなかった。そのスライムのような生物はエスティナの足元まで来ると、一気にエスティナの胸へと飛び跳ね、エスティナの身体にくっついた。すると、その生物は次第に大きくなり、エスティナの身体を覆っていった。同時にその生物によって服はじわじわ溶かされ、エスティナの肢体が徐々に露わになっていく。
「いや……やめてッ……!!」
自分の身体が露わになり、かつ不気味な生物に自分の身体が覆われていくのを見てエスティナは恐怖した。さらにエスティナは不気味な生物に触れた身体の部分が熱くなるのを感じた。エスティナにはわからなかったが、それは寄生体による侵蝕および同化によるものだった。スライムのような生物はエスティナの銅を完全に覆い、さらに手足へと伸びていく。
「く……こ、この、離れろッ!!」
気がつけばエスティナの身体は大方スライムのような寄生体に取り込まれ、残るはエスティナの頭だけになった。そこから寄生体はゆっくりとエスティナの首を上がっていく。
「や、やめろおっ!! や、やめ――」
すると寄生体はぐにょっと一気に広がって、エスティナの頭を完全に覆った。
「~~~~っ!!」
寄生体はエスティナの口、鼻、耳、目……といった部位からエスティナの体内へと浸透していく。
「あ……ぐ……ご……」
エスティナはどうすることもできず、気がつけば自分はスライムのような寄生体の中へと完全に取り込まれていた。それはまるで粘度の高いぬるま湯の中に浸かっているかのようだった。液体の中にいると言うのになぜか息は苦しくなかった。ふと前を見ると、ヴァイスがこちらを見ながらニヤニヤと笑っていた。
(くっ……ヴァイス……必ずこの借りは返すっ……!!)
エスティナはヴァイスへの怒りを覚えつつも、なんだか頭がぼんやりとしてくるのを感じた。それはとても心地よい感覚で、まるで自分の脳が甘い液体で満たされていくかのような感じだった。
(……あれ、なんだろう? これ、すごく気持ちいい……)
エスティナの身体は寄生体によって徐々に寄生生物へと変えられていたが、エスティナはそれを快感のように感じていた。その快感の中でエスティナはヴァイスについてぼんやりと考え始めた。
――そういえばなんで私、ヴァイスと敵対していたんだっけ? ……ヴァイスがこっちに手を出してきたから? でもなんてヴァイスは手を出してきたんだっけ?
――あぁ、そうだ、確かあのとき、私たち聖女三姉妹はヴァイスにとてもひどいことをしたんだった。私はヴァイスの身体に鞭を打つなどという最低の行為をした。あのときの私は最低だった。なぜ、私はヴァイスにあんなことをしたのだろう? 今でも意味がわからない。
――そうか、だから私はこれから罪を償うんだ。私は……ヴァイスに対して行った罪を償うために存在している。これは……『救済』なんだ。ヴァイスは私の全てを許してくれる。その意思が私の身体に流れてくる。それはとても気持ちがよくて、私の心と身体を満たしてくれるんだ……。あぁ、早くヴァイスのために尽くしたい……。私はきっとヴァイスに尽くすために生まれてきたんだ……。
――そういえばルーフィも寄生生物にされたんだっけ……? 先を越されたのは姉として残念だけど、ルーフィも同じになってるなんて姉としてとても喜ばしい……。 いつかイザリア姉も一緒に私たちの仲間にしてあげようね……。私は今、寄生生物になっているけれど、それはとても気持ちがいいことだからイザリア姉もきっと喜ぶと思う……。ふふ、早く私たち三姉妹がみんな寄生生物として仲良くヴァイスに尽くせる日が来るといいなぁ……
――もうすぐ、もうすぐに私は完全に寄生生物へと変わる。寄生生物になったら早く他の人間を同化させたいな……。私の身体が他の人間を同化させたくてうずうずしている気がする……。ふふ、私の護衛の騎士とか喜んで私に同化されるんじゃないかしら……?
――あぁ、身体に力が溢れてくる。ヴァイス、悔しいけどあんたをマスターとして認めるわ……。寄生生物になることがこんなに素晴らしいことなら先に言いなさいよね……! これからは、ずっとあんたの側に――
そして、エスティナは完全に寄生体に同化され、寄生生物へと変わった。スライム状の寄生体はエスティナの身体へと徐々に吸収されていき、エスティナの肢体だけが残った。
「……くく、完全に寄生生物になったようだな。……気分はどうだ?」
ヴァイスがそうエスティナに問いかける。
「――別に」
「……ん?」
それはヴァイスにとって予想外の一言だった。
「――べ、別にあんたのために寄生生物になったわけじゃないから! 仕方なくなってあげたんだから! か、感謝しなさいよね!」
そう言ってエスティナはふん!とそっぽを向いた。今までに経験したことがない反応にヴァイスは驚きを隠せなかった。
(これは……驚きだな。こういう風になったりもするのか。うーむ……)
寄生生物となっても元の人格は残るため、エスティナの性格的にこういう感じになるのは自然なことだろうととりあえずヴァイスは納得したが、なんとなく不安が残った。
「よし、じゃあその鎖を解いてやろう」
「い、いらないし! 自分でできるし!」
「…………」
ヴァイスが呆れた顔をしていると、エスティナはヴァイスを見てニヤリと笑った。そしてエスティナは自身の両腕をゲル状に変化させると、ゲル状になった両腕はずるりと鎖の手錠を抜け、地面へぼたぼたと落ちる。
そしてそのゲル状の物体は再びエスティナの身体へとくっつき同化した。するとエスティナは自身の身体からなくなった両腕を再生した。寄生生物となったエスティナはまるで液体人間のような身体になっていたのだった。
「……ほぅ、面白い能力だな」
「ふふん、すごいでしょ」
そう言ってエスティナは得意げな顔をする。
「……服にも変化できるのか?」
「服?」
「そう、服だ。自分の身体を見てみろ。全裸だぞ」
ヴァイスの言葉を聞いて、エスティナは自分の身体を見た。そして顔を紅潮させると、「み、見るなああああ!!」と絶叫したのだった。ヴァイスはその勢いに押されてすぐに後ろを向いた。レイドルフは笑っていて、ディアナはやれやれといった顔で肩をすくめている。
……こうしてエスティナは寄生生物となり、ヴァイスの仲間になったのだった。
「なっ!?」
「遅いッ!」
レイドルフは神殿騎士が防御態勢を取る前に闘気を込めた右手を神殿騎士の胴体へと叩き込む。神殿騎士は大きく後方へとふっ飛ばされ、木にぶつかるとそのまま崩れ落ちた。レイドルフによって一撃でやられた神殿騎士は決して弱い方ではなかったが、それ以上にレイドルフの武勇が勝っていた。
「ふん、レイドルフに負けてられんな。……【風刃烈破】!!」
ディアナがそう呪文を唱えると、空気の刃を伴った旋風が神殿騎士たちを襲った。神殿騎士たちは空気の刃によって体のいたる所を切り裂かれ、さらにその風によって次々に吹き飛ばされ後方の岩の壁に激突させられた。神殿騎士たちはその場に倒れ、意識を失う。
エスティナは護衛の騎士を守ろうとするも、レイドルフとディアナの連携攻撃の前に右往左往するだけだった。近接戦闘のエキスパートである獣人王と最高クラスの魔法の使い手であるエルフの女王が相手では、いくら聖女エスティナといえど味方を守りながら戦うのは不可能に等しかった。その間にもレイドルフとディアナは他の護衛の神殿騎士を倒していき、気がつけば護衛は全滅してエスティナ一人となっていた。
「く、みんな……」
「ふん、こんなものか……全く骨がないな。……聖女よ、次はお前の番だ」
レイドルフはそう言うと、エスティナに向かって目にも止まらぬスピードで蹴りを繰り出した。
「ぐっ……」
エスティナはそれをかろうじて防ぎ、反撃の右ストレートを放つ。しかし、それは避けられ空を切った。
「ほぅ、これを防ぐとは……少しはやるようだな!」
それからレイドルフとエスティナの打撃の応酬が始まった。エスティナはさすが聖女姉妹の中でも武闘派と言われるだけあって、レイドルフの攻撃にもなんとか対処ができていた。しかし、総合的な近接戦闘力はレイドルフの方が上であり、エスティナは徐々に押されていった。
「ほらほら、どうした? さっきから防戦一方だぞ?」
レイドルフは絶え間なく攻撃を放ちながらそう言った。エスティナは獣人王の攻撃を捌くことで手一杯だった。
(くっ、さすがに強いわね……。できれば切り札は取っておきたかったけど……そうも言ってられないか)
エスティナは獣人王から少し距離を取ると、今までとは違う構えを取った。
「正直、ここまでやるとは思わなかったわ……。さすが獣人王といったところかしら? 仕方ないから、私の本気を見せてあげる」
エスティナはそう言うと、すぅっと息を吸いて吐き、自身に意識を集中させた。
「――【聖闘気】解放!!」
エスティナがそう言った次の瞬間、光のオーラがエスティナの体を纏い始めた。傍目からもわかるほどに、エネルギーに満ちたオーラだった。それはレイドルフの闘気と似たものであったが、エネルギーの質量は【聖闘気】の方が闘気を大きく上回っていた。
レイドルフは聖闘気を纏ったエスティナを見て、「ほぅ……」と呟いた。エスティナはそんなレイドルフに向かって言った。
「これからが本番ってね! ――いくわよ」
そう言ってエスティナは目にも止まらぬ速さで獣人王に近づくと、渾身の右ストレートを繰り出す。
「ぐっ!」
レイドルフはこれを防御するもその威力と速さは今までとは桁違いだった。今度はレイドルフが完全に防戦一方となり、エスティナの一方的な攻撃が続いた。
「はぁっ!」
エスティナがレイドルフの隙をついて右ハイキックを獣人王の顔に叩きつける。
「ぐはっ!」
レイドルフは大きく後方に吹き飛ばされた。レイドルフは地面に倒れるもよろよろと起き上がる。ヴァイスとディアナは特に気にすることなくレイドルフを見ていた。二人はレイドルフがエスティナと一騎打ちになってからは全く戦闘には手を出さず、ただ面白そうにレイドルフとエスティナの闘いを見物していた。
「……やるじゃないか」
レイドルフは起き上がると肩で息をしながらそう呟いた。
「――では、オレも本気を出すとしよう」
そう言ってレイドルフがニヤリと笑うと、レイドルフの身体は大きく変化し始めた。腕や足はより太くなり、背丈も大きくなる。さらに信じられないことに、レイドルフの両肩の辺りから何かがずりゅずりゅと生えていくる。……それは新たな『腕』だった。
エスティナは獣人王レイドルフの変化を驚愕した顔で見つめていた。四本の腕を持つ獣人族など聞いたことがないし、そもそもこんな変化は異常だとエスティナは思った。
さらにレイドルフは今までとは違う禍々しい黒いオーラを纏い始めた。それはレイドルフの闘気が寄生生物となることによって変化した【蝕闘気】と呼ばれるものであった。
「くく、これが寄生生物となったオレの力だ。素晴らしいだろう? お前相手では十分に本気が出せそうだ。……では続きを始めるとしようか」
レイドルフはそう言うと、エスティナに襲いかかった。……それからはただ一方的な展開が続いた。蝕闘気を纏い、変異したレイドルフはエスティナに猛攻を加え、エスティナはそれをなんとか防御するので一杯一杯だった。変異後の獣人王レイドルフの力は圧倒的で聖闘気を解放したエスティナですら歯が立たなかった。聖闘気でダメージを軽減しつつも徐々にエスティナにダメージが蓄積していく。
「はぁっ!!」
レイドルフの繰り出したボディーブローがエスティナの脇腹に綺麗にヒットする。
「がっ……はっ……」
耐えきれずにエスティナが腹を押さえて悶絶する。そこにさらにレイドルフが左アッパーを繰り出し、エスティナの顎を完璧に捉えた。エスティナは大きく後方に弾き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。エスティナは満身創痍で意識は朦朧としていた。もはやエスティナにはこれ以上戦闘を続けるだけの力は残っていなかった。
(くっ……ここまで……強い……なんて……。イザリア姉……ルーフィ……ごめんね……)
ヴァイスはきっと自分にトドメを刺しに来るだろう。そのときが自分の命が尽きる時なのだとエスティナは思った。エスティナが動けないでいると、何やら地面が盛り上がり、壁のようになると、壁から出現した鎖によってエスティナは壁に磔にされた。それはヴァイスの錬金術によるものだった。
「……くく、どうやら決着はついたようだな、エスティナ。自慢の聖闘気も寄生生物の力には敵わなかったというわけだ」
ヴァイスがそう言って、不敵な笑みを浮かべながらエスティナの方へと歩いてきた。
「……まさか……あんたが……人間を、魔物に……変えていたとは……ね……」
磔にされたエスティナはそう言ってヴァイスを見る。
「魔物ではない。寄生生物だ。全く違うものだよ」
ヴァイスはそう言った。
「先ほども言ったが、お前の妹のルーフィは既に寄生生物になっている。レイドルフと同じようにな……。今では忠実な俺の配下だよ。まぁ、そのうち会わせてやるさ……」
「!!」
エスティナはルーフィがレイドルフと同じという言葉を聞いて衝撃を受けた。最初は何のことかわからなかったが、きっとヴァイスはルーフィを獣人王レイドルフのように何か洗脳を施して、身体を人間のそれではない寄生生物とやらに変えたのではないか。もし、それが本当なら絶対にヴァイスを許すわけにはいかないとエスティナは思った。
「まさか……ルーフィを獣人王のように魔物に改造したんじゃないでしょうねッ!」
エスティナはそう言ってヴァイスを睨む。
「……だから、魔物じゃなくて寄生生物だと言っているだろう。改造ではないし、外見も基本的には人間のままだ。ただ、レイドルフが俺に従うように、ルーフィも俺に従うようになったがな。そういう意味では、お前が知っているルーフィはもういないかもしれん」
ヴァイスはそう言って薄笑いを浮かべた。ヴァイスの言葉を聞いて、エスティナは愕然とした。まさか、自分の実の妹であるルーフィがヴァイスの手によって洗脳され、さらにはヴァイスの手先になったというのか? エスティナはそう考えると、怒りの感情がふつふつと沸いてきた。
「この……人間の皮を被った悪魔がッ!!」
エスティナはそう言ってヴァイスを睨んだ。その目は怒りの炎で満ちていた。エスティナはヴァイスに一発くれてやろうと手を動かしたが、満身創痍の身体には鎖を引きちぎるほどの力はなかった。
「おやおや悪魔とは……。お前こそ聖女のふりをした悪魔ではないのか? よくもまぁ善良な一市民であった俺を王国から追放しておいてそんなことが言えるものだな」
「……そ、それはそもそもあんたが異端の罪を犯したせいでしょッ! 逆恨みにもほどがあるわ!!」
「逆恨み? それはそれで結構。だが、お前たち聖女がこんな目に遭っているのは、お前たち自身の行動のせいだと覚えておくんだな。……あの時、俺を捕らえたりなどしなければ、俺が寄生生物を生み出すこともなかっただろう。ま、そういう意味ではお前たち聖女には少し感謝はしているがな……」
ヴァイスはそう言った。
「感謝? それは嬉しいわね。じゃあその感謝の印としてこの鎖を解いてもらおうかしら!」
エスティナはそう言ってじゃらじゃらと鎖を鳴らす。
「もちろんだ。君が寄生生物になったら今すぐにでも解放しよう」
ヴァイスはそう言って肩をすくめた。
「……ふふ、じゃあ始めようか。最近、面白いタイプの寄生体を開発してね。気に入ってくれると嬉しいんだが」
ヴァイスはそう言うと懐から小さな瓶を取り出し、蓋を開けるとそっと地面に置いた。すると中から小さな紫色のスライムのような形をした生物が出てきた。それはズルズルとエスティナの方に進んでいった。エスティナはそれを見て、直感的にこれはやばいヤツだと思った。
「こ、来ないで……ッ!!」
エスティナはどうにか脱出しようと足掻くも、鎖が千切れることはなく、その場から逃れることはできなかった。そのスライムのような生物はエスティナの足元まで来ると、一気にエスティナの胸へと飛び跳ね、エスティナの身体にくっついた。すると、その生物は次第に大きくなり、エスティナの身体を覆っていった。同時にその生物によって服はじわじわ溶かされ、エスティナの肢体が徐々に露わになっていく。
「いや……やめてッ……!!」
自分の身体が露わになり、かつ不気味な生物に自分の身体が覆われていくのを見てエスティナは恐怖した。さらにエスティナは不気味な生物に触れた身体の部分が熱くなるのを感じた。エスティナにはわからなかったが、それは寄生体による侵蝕および同化によるものだった。スライムのような生物はエスティナの銅を完全に覆い、さらに手足へと伸びていく。
「く……こ、この、離れろッ!!」
気がつけばエスティナの身体は大方スライムのような寄生体に取り込まれ、残るはエスティナの頭だけになった。そこから寄生体はゆっくりとエスティナの首を上がっていく。
「や、やめろおっ!! や、やめ――」
すると寄生体はぐにょっと一気に広がって、エスティナの頭を完全に覆った。
「~~~~っ!!」
寄生体はエスティナの口、鼻、耳、目……といった部位からエスティナの体内へと浸透していく。
「あ……ぐ……ご……」
エスティナはどうすることもできず、気がつけば自分はスライムのような寄生体の中へと完全に取り込まれていた。それはまるで粘度の高いぬるま湯の中に浸かっているかのようだった。液体の中にいると言うのになぜか息は苦しくなかった。ふと前を見ると、ヴァイスがこちらを見ながらニヤニヤと笑っていた。
(くっ……ヴァイス……必ずこの借りは返すっ……!!)
エスティナはヴァイスへの怒りを覚えつつも、なんだか頭がぼんやりとしてくるのを感じた。それはとても心地よい感覚で、まるで自分の脳が甘い液体で満たされていくかのような感じだった。
(……あれ、なんだろう? これ、すごく気持ちいい……)
エスティナの身体は寄生体によって徐々に寄生生物へと変えられていたが、エスティナはそれを快感のように感じていた。その快感の中でエスティナはヴァイスについてぼんやりと考え始めた。
――そういえばなんで私、ヴァイスと敵対していたんだっけ? ……ヴァイスがこっちに手を出してきたから? でもなんてヴァイスは手を出してきたんだっけ?
――あぁ、そうだ、確かあのとき、私たち聖女三姉妹はヴァイスにとてもひどいことをしたんだった。私はヴァイスの身体に鞭を打つなどという最低の行為をした。あのときの私は最低だった。なぜ、私はヴァイスにあんなことをしたのだろう? 今でも意味がわからない。
――そうか、だから私はこれから罪を償うんだ。私は……ヴァイスに対して行った罪を償うために存在している。これは……『救済』なんだ。ヴァイスは私の全てを許してくれる。その意思が私の身体に流れてくる。それはとても気持ちがよくて、私の心と身体を満たしてくれるんだ……。あぁ、早くヴァイスのために尽くしたい……。私はきっとヴァイスに尽くすために生まれてきたんだ……。
――そういえばルーフィも寄生生物にされたんだっけ……? 先を越されたのは姉として残念だけど、ルーフィも同じになってるなんて姉としてとても喜ばしい……。 いつかイザリア姉も一緒に私たちの仲間にしてあげようね……。私は今、寄生生物になっているけれど、それはとても気持ちがいいことだからイザリア姉もきっと喜ぶと思う……。ふふ、早く私たち三姉妹がみんな寄生生物として仲良くヴァイスに尽くせる日が来るといいなぁ……
――もうすぐ、もうすぐに私は完全に寄生生物へと変わる。寄生生物になったら早く他の人間を同化させたいな……。私の身体が他の人間を同化させたくてうずうずしている気がする……。ふふ、私の護衛の騎士とか喜んで私に同化されるんじゃないかしら……?
――あぁ、身体に力が溢れてくる。ヴァイス、悔しいけどあんたをマスターとして認めるわ……。寄生生物になることがこんなに素晴らしいことなら先に言いなさいよね……! これからは、ずっとあんたの側に――
そして、エスティナは完全に寄生体に同化され、寄生生物へと変わった。スライム状の寄生体はエスティナの身体へと徐々に吸収されていき、エスティナの肢体だけが残った。
「……くく、完全に寄生生物になったようだな。……気分はどうだ?」
ヴァイスがそうエスティナに問いかける。
「――別に」
「……ん?」
それはヴァイスにとって予想外の一言だった。
「――べ、別にあんたのために寄生生物になったわけじゃないから! 仕方なくなってあげたんだから! か、感謝しなさいよね!」
そう言ってエスティナはふん!とそっぽを向いた。今までに経験したことがない反応にヴァイスは驚きを隠せなかった。
(これは……驚きだな。こういう風になったりもするのか。うーむ……)
寄生生物となっても元の人格は残るため、エスティナの性格的にこういう感じになるのは自然なことだろうととりあえずヴァイスは納得したが、なんとなく不安が残った。
「よし、じゃあその鎖を解いてやろう」
「い、いらないし! 自分でできるし!」
「…………」
ヴァイスが呆れた顔をしていると、エスティナはヴァイスを見てニヤリと笑った。そしてエスティナは自身の両腕をゲル状に変化させると、ゲル状になった両腕はずるりと鎖の手錠を抜け、地面へぼたぼたと落ちる。
そしてそのゲル状の物体は再びエスティナの身体へとくっつき同化した。するとエスティナは自身の身体からなくなった両腕を再生した。寄生生物となったエスティナはまるで液体人間のような身体になっていたのだった。
「……ほぅ、面白い能力だな」
「ふふん、すごいでしょ」
そう言ってエスティナは得意げな顔をする。
「……服にも変化できるのか?」
「服?」
「そう、服だ。自分の身体を見てみろ。全裸だぞ」
ヴァイスの言葉を聞いて、エスティナは自分の身体を見た。そして顔を紅潮させると、「み、見るなああああ!!」と絶叫したのだった。ヴァイスはその勢いに押されてすぐに後ろを向いた。レイドルフは笑っていて、ディアナはやれやれといった顔で肩をすくめている。
……こうしてエスティナは寄生生物となり、ヴァイスの仲間になったのだった。
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