パラサイト・ルーラー ~追放された王国最高の錬金術師は【寄生生物】を使って聖女三姉妹への復讐を開始する~

御浦祥太

文字の大きさ
28 / 28
第二章

第一話 王国編の始まり

しおりを挟む
 その日の午後、ヴァイスは寄生体の研究をしていた。ヴァイスが今まで使ってきた寄生体にはアメーバタイプ、尺取り虫タイプ、トカゲタイプ、顔を覆うタイプ、スライムタイプがあった。

 アメーバタイプは最も原始的なタイプで、直に相手の体内に入れる必要があった。ただし、相手を寄生生物に変えるスピードは最も早い。

 尺取り虫タイプとトカゲタイプは基本的にはモンスター専用だった。自律的に動けるという利点はあるものの、人間相手では活動しているところを見られる危険があるためだ。

 顔を覆うタイプはヴァイスが人間用に開発したものだった。顔を覆うことで相手の叫び声を抑えることができた。寝ている人間などに使うのにかなり適したタイプだった。

 スライムタイプはヴァイスが最近開発したものだったが、やはりスライムということで様々な場所に潜入できるメリットがあった。ヴァイスは寄生体としては初めてこのタイプをエスティナに使ったが、エスティナにもともと適性があったのか、エスティナは寄生後はスライム人間のようになった。ただ、その後ヴァイスが他の人間に使った時には、そういう効果はなかったのでエスティナのときは特別ケースと言えそうであった。


 ……ヴァイスは今までに自身が生み出した寄生体の特性を思い出しつつ、今までとは違う新しいタイプの寄生体のアイデアについて思案していた。ヴァイスの念頭にあったのは、これから相手にすることになるであろう王国と、その王国が誇る王立騎士団、王女オヴィリア・ラースリグラス、そして王女を守る親衛隊の隊長であるミレニア・ヴァスティンであった。

(王女オヴィリアを落とすのはそう難しいことではないが、問題はオヴィリアの警護を担当している親衛隊長のミレニアだ……)

 王女オヴィリアには基本的にいつでも親衛隊が付き添っており、その親衛隊を率いるのは王国一の強さを誇ると言われる女騎士ミレニアだった。ミレニアは親衛隊に異動する前は王立騎士団の副団長を務めており、かつて王国最高と言われた錬金術師であるヴァイスともそれなりに交流があった。ヴァイスはその経験から、ミレニアの実力が王国でも最高峰であることを知っていた。

(王国に伝わる聖剣と聖鎧を身に纏い、竜ですら一太刀で倒すほどの力……。敵としては厄介だが、味方としてはこれ以上の戦力はない)

 ヴァイスにとって王国と王女オヴィリアは復讐の対象ではあったが、ミレニアについては特にそこまでは思っていなかった。しかし、ミレニアがオヴィリアの親衛隊長である以上、ミレニアが自身の敵となることは避けようがなかった。そのため、ヴァイスはどうにかしてミレニアを『寄生』させる方法を考えていたのだった。新型の寄生体はまさにミレニアを念頭においたものであった。

「くく、ミレニアよ、かつての同僚のよしみとして恨みはないが、その力、この俺に貸してもらおう。そしてその力をもって、俺は王立騎士団を掌握し、王女オヴィリアを落として王国そのものを手に入れるのだ……」

 ヴァイスは自室で一人そう呟くと、静かな笑みを浮かべた。

「……王国を落としたら、あとはイザリアのいる『聖地』を蹂躙するだけだ。王国とエルフ国、獣人国の戦力があれば聖地を制圧するのはそう難しいことではない。教会内部からもルーフィとエスティナを使って教会の力を削ぎ落とすことができる。くく、イザリアよ、世界が静かに変わっていくのを気づかずに眺めているがいい……! あーはっはっは!」

 ヴァイスはそう呟くと高らかに笑った。


 ――後日、リリカはいつものようにヴァイスのお使いで街の素材屋に来ていた。お使いを終えて、帰路につこうとした時、リリカは自身の左目がうずくのを感じた。リリカの左目は依然として再生されておらず、まだ眼帯を付けたままだった。

(目が……あつ……い……)

 リリカは慌てて近くの喫茶店へと入り、トイレへと駆け込んだ。そして、恐る恐る眼帯を取ってみるとそこには眼があった。眼は既に再生されていたのだった。

 ――しかし、その眼は白目の部分が黒く、瞳が黄金色だった。しかも、眼球は自分の意思で動かせるのに視界は真っ暗で視力は完全にゼロであった。

(目はある、けど……視え、ない?)

 リリカは目も再生するということで、その日を楽しみに待っていたが、よくわからない結果になって複雑な気持ちだった。リリカは急いでルーフィ邸へと戻ると、事の顛末をヴァイスに話した。すると、ヴァイスはリリカにその眼を見せるように言った。リリカは言われたとおりに眼帯を外して自身の黄金色の瞳の眼を見せる。

 ヴァイスはリリカの眼を見ると、興味深いといった顔をして言った。

「……ふむ、これは『蝕眼』だな」

「蝕……眼……?」

「そうだ。蝕眼とは寄生生物の持つ特殊な力を持った眼のことだ。リリカはルーフィの胸の眼を見たことがないんだったか? あれと同じようなものだ」

 ヴァイスはそう言った。ルーフィの胸の眼と聞いてリリカは心当たりがあった。リリカは自分がヴァイスの部屋でルーフィの触手に捕らわれた日のことを思い出した。それはリリカにとってはあまり思い出したくない記憶だった。

「しかし、まさか蝕眼を発現するとはな……。リリカには【女王種】の才能があるかもしれん。半寄生状態で女王種とはとても興味深いな」

 ヴァイスはそう言って少し嬉しそうにリリカを見る。

「女……王……種……?」

「そうだ。まぁ、簡単にいえば寄生生物は大雑把に4つの種に分かれていてな。上から順に【女王種】、【上位種】、【中位種】、【下位種】となっている。女王種の特徴は、第一に蝕眼のような特殊な能力を発現していること、第二に自身で寄生体を生み出すことが可能ということだ。ルーフィ、エスティナ、ディアナは女王種だな。次に上位種だが、上位種は女王種が持つような蝕眼はないが、自身で寄生体を生み出すことができる。ティートは上位種に当たるな。中位種も寄生体を生み出すことはできるが、戦闘力は高くない種だ。最後に下位種だが、下位種は自身で寄生体を生み出せず、さらに戦闘能力もあまり高くない種だ」

 ヴァイスはそう説明した。

「ただ、これには一つ例外があってな。……現段階では、性別がオスの寄生生物は例え上位種でも自力で寄生体を生み出すことはできないんだ。レイドルフがいい例だな」

 ヴァイスはそう言うと肩をすくめた。

「寄生生物、は……メス……優位……?」

 リリカがそう言うと、ヴァイスは感心したような顔をした。

「ああ、そのとおりだ。理由はまだわからないが、寄生生物はオスよりもメスと親和性が高いんだ。蝕眼なんてオスでは発現した例はいまだにないしな……。女王種なんて名をつけた訳もそういうところにある」

「…………」

 リリカは日頃からマスターは少し女好きなのではないかと疑っていたが、実はそれは女の方が寄生生物と相性がいいからなのかもしれないと思った。

「で、話を戻すと、リリカの眼は蝕眼には違いないと思うが、完全に開眼するのにはまだ時間がかかるだろう。視力についてはそのときに戻ると思う。それまでは今まで通り眼帯を付けていてくれ。黄金色の瞳は、さすがに周囲に晒すわけにはいかないからな……」

「わかり……ました……」

 リリカはそう言うと、お使いで買ったものをヴァイスに渡して自分の部屋へと戻った。リリカは部屋に戻ると、すぐにベッドに倒れ込んだ。リリカは自身の再生した眼が女王種の特徴である蝕眼だということを聞いて、喜びを隠せず、ベッドに横になりながらヴァイスに思いを馳せるのだった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

camellia
2019.06.29 camellia

リリカを半寄生のままにしてるのは後々主人公の弱味にする為ですか?

2019.06.30 御浦祥太

いえ、ただのヴァイスの趣味ですね。徐々に寄生生物になるところを観察するためです。

解除
伊予二名
2019.06.13 伊予二名

孤児院の院長と奴隷商人も片手間に破滅させてほしいですね(๑╹ω╹๑)片手間にね。

2019.06.13 御浦祥太

今のところ二人が再登場する予定はないですね・・・今のところですが・・・。

解除
トリゼノ
2019.06.13 トリゼノ

いい趣味してますね〜 読んでてゾクゾクしてきますw

2019.06.13 御浦祥太

趣味全開で書きました。
楽しんでもらえれば幸いです。

解除

あなたにおすすめの小説

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。