3 / 9
黒い血を
しおりを挟む
異次元空間生活1日目
「という訳でだ。改めてここの住人を紹介しよう。」と言って、ひとつめ様は紹介を始めた。首に巻いてあるマフラーで目だけしか見えないが、ニコッとしたのがわかる。
「私はここではひとつめ様、と呼ばれている。好きなように呼んでいいぞ。」
と彼が言うと例のコーン女が前に出て、
「先程はごめんなさい。私はパイロン。ひとつめ様の秘書をやらせて貰ってる。貴方の事は聞いたわ。もう殺された事は恨んで無いから安心して頂戴。」先程よりは優しいがどこかツンとした態度のパイロン。自分を殺した張本人だ。そりゃ気に入らないに決まってるよな…と思っていると、
「あぁ、こいつツンデレなとこあるから気にするな(笑)寧ろ弟みたいに思ってるぞ」
と言うひとつめ様の言葉に、パイロンが
「へっ変な事仰らないで下さいひとつめ様!」と声を荒げて反論する。
次に出てきたのは、さっき別の部屋で見た小さい生き物…いや生き物か?パイロンみたいに死んでこっち来たタイプかも知れない。始めにうさぎの目の位置に大きくバッテンを描いたようなものが出てきた。
「初めまして~。僕USAっていうの!ゆー、えす、えーでウサ、って読むんだ!」と可愛らしい声で言うUSA。その隣に座っていたタマゴに黒い蝶ネクタイと枝のような手足を着けた生物が椅子から降り、上品な物腰でお辞儀をした。
「ようこそ異次元へ。私はタマゴ、と呼ばれております。どうぞよろしく。」USAよりもやや大人びた男の子のような声でそう言って、タマゴはまた椅子に戻った。
最後に、3連団子に目を1個描いて枝のような手足をつけたのが来た。
「俺セバスチャン。アンタのことは文ちゃんって呼ぶわ。よろしくな!」とセバスチャンは言い、ひとつめ様の肩にちょこんと座った。
「文ちゃんか…いいじゃないかw」とセバスチャンの頭を撫でながら言うひとつめ様。パイロンまで少し笑っている。笑顔を見るのはこれがはじめてだ。
文ちゃん、という子供っぽい呼び方に何故か嫌な気はせず、どこか懐かしさを感じた。「じゃあ、それでいいですよ」と言うと、USAが顔に抱きつきながら、嬉しそうに「わーいよろしく!文ちゃん!」と頬ずりしてきた。……うん、なかなか可愛い(笑)
━━━しばらくして、ひとつめ様がこう切り出した。
「じゃあ文。本題に入るが、お前もジンガイの血を入れなくてはな」
「え!なんで僕が…」
だって僕は、いずれはここを出たいと思っている。ジンガイの血なんて必要無いんじゃないか?
「それがそうもいかないんだ。この空間の中では人間のままでは長くは生きられない。1週間程ここにいるとしてもジンガイの血がないと死んでしまう。恐らく2日以内に。」とひとつめ様は言った。自分の体に人間以外の血が入る…まるで漫画や小説のような話だが、これは今自分の身に起こっていることだ。受け入れなくてはいけないのは分かってるけど…。と、そんな僕の不安を読み取ったのか、ひとつめ様は
「安心しなさい。ジンガイの血が入っても、お前の見た目は殆ど変わらん。体内の再生能力が桁違いに上がるだけだ。外傷じゃ死なないし怪我をしてもすぐ治る。むしろ良いことじゃないか!」と言ってくれた。僕は数秒の沈黙の後、
「分かりました。よろしくお願いします」
と返事をした。
「よく決心してくれた。それではこいつの血を少し貰うことにするか。」と優しい口調で言うと、彼は左手を軽く上下に振った。するとどこから出てきたのか、目が沢山ついた巨大なアメーバのような怪物が出現した。ポカンとして、思わずホェ?なんて情けない声が出てしまう僕。
「ジンガイの血は赤くはない。赤に近いのもいるが人間の血とは全然違う色だ。中には血が流れてないのもいる。ちなみにこいつの血は黒だ。」と続ける彼の隣に居るこの怪物は、他のと違って喋れないらしい。体の形も決まっていない。格段に恐ろしい姿のはずなのに全く恐怖を感じない。寧ろ撫でてやりたくなる程だ。
「見た目はアレだが、可愛げがあるだろう?こいつもお前を気に入ったらしい。血を貰うお礼代わりに世話してみないか?」ひとつめ様はそう言って怪物の背中(と言っていいのか分からないが)を撫でる。僕は直ぐ提案に乗った。さっきのUSAといい、こいつといい、僕は怪物に懐かれやすいのだろうか…。するとひとつめ様はサラッと恐ろしい事を口にした。
「しかし良かったな文。こいつ、一目見て気に入らなければ喰って体内に取り込むからな(笑)」
…なんでそんなヤバいの選んだんだこの人(?)は。まあいい。
数分後、パイロンとひとつめ様の手で、僕の体に怪物の血が入れられた。
……今から僕は半分人間ではなくなったのだ。
「という訳でだ。改めてここの住人を紹介しよう。」と言って、ひとつめ様は紹介を始めた。首に巻いてあるマフラーで目だけしか見えないが、ニコッとしたのがわかる。
「私はここではひとつめ様、と呼ばれている。好きなように呼んでいいぞ。」
と彼が言うと例のコーン女が前に出て、
「先程はごめんなさい。私はパイロン。ひとつめ様の秘書をやらせて貰ってる。貴方の事は聞いたわ。もう殺された事は恨んで無いから安心して頂戴。」先程よりは優しいがどこかツンとした態度のパイロン。自分を殺した張本人だ。そりゃ気に入らないに決まってるよな…と思っていると、
「あぁ、こいつツンデレなとこあるから気にするな(笑)寧ろ弟みたいに思ってるぞ」
と言うひとつめ様の言葉に、パイロンが
「へっ変な事仰らないで下さいひとつめ様!」と声を荒げて反論する。
次に出てきたのは、さっき別の部屋で見た小さい生き物…いや生き物か?パイロンみたいに死んでこっち来たタイプかも知れない。始めにうさぎの目の位置に大きくバッテンを描いたようなものが出てきた。
「初めまして~。僕USAっていうの!ゆー、えす、えーでウサ、って読むんだ!」と可愛らしい声で言うUSA。その隣に座っていたタマゴに黒い蝶ネクタイと枝のような手足を着けた生物が椅子から降り、上品な物腰でお辞儀をした。
「ようこそ異次元へ。私はタマゴ、と呼ばれております。どうぞよろしく。」USAよりもやや大人びた男の子のような声でそう言って、タマゴはまた椅子に戻った。
最後に、3連団子に目を1個描いて枝のような手足をつけたのが来た。
「俺セバスチャン。アンタのことは文ちゃんって呼ぶわ。よろしくな!」とセバスチャンは言い、ひとつめ様の肩にちょこんと座った。
「文ちゃんか…いいじゃないかw」とセバスチャンの頭を撫でながら言うひとつめ様。パイロンまで少し笑っている。笑顔を見るのはこれがはじめてだ。
文ちゃん、という子供っぽい呼び方に何故か嫌な気はせず、どこか懐かしさを感じた。「じゃあ、それでいいですよ」と言うと、USAが顔に抱きつきながら、嬉しそうに「わーいよろしく!文ちゃん!」と頬ずりしてきた。……うん、なかなか可愛い(笑)
━━━しばらくして、ひとつめ様がこう切り出した。
「じゃあ文。本題に入るが、お前もジンガイの血を入れなくてはな」
「え!なんで僕が…」
だって僕は、いずれはここを出たいと思っている。ジンガイの血なんて必要無いんじゃないか?
「それがそうもいかないんだ。この空間の中では人間のままでは長くは生きられない。1週間程ここにいるとしてもジンガイの血がないと死んでしまう。恐らく2日以内に。」とひとつめ様は言った。自分の体に人間以外の血が入る…まるで漫画や小説のような話だが、これは今自分の身に起こっていることだ。受け入れなくてはいけないのは分かってるけど…。と、そんな僕の不安を読み取ったのか、ひとつめ様は
「安心しなさい。ジンガイの血が入っても、お前の見た目は殆ど変わらん。体内の再生能力が桁違いに上がるだけだ。外傷じゃ死なないし怪我をしてもすぐ治る。むしろ良いことじゃないか!」と言ってくれた。僕は数秒の沈黙の後、
「分かりました。よろしくお願いします」
と返事をした。
「よく決心してくれた。それではこいつの血を少し貰うことにするか。」と優しい口調で言うと、彼は左手を軽く上下に振った。するとどこから出てきたのか、目が沢山ついた巨大なアメーバのような怪物が出現した。ポカンとして、思わずホェ?なんて情けない声が出てしまう僕。
「ジンガイの血は赤くはない。赤に近いのもいるが人間の血とは全然違う色だ。中には血が流れてないのもいる。ちなみにこいつの血は黒だ。」と続ける彼の隣に居るこの怪物は、他のと違って喋れないらしい。体の形も決まっていない。格段に恐ろしい姿のはずなのに全く恐怖を感じない。寧ろ撫でてやりたくなる程だ。
「見た目はアレだが、可愛げがあるだろう?こいつもお前を気に入ったらしい。血を貰うお礼代わりに世話してみないか?」ひとつめ様はそう言って怪物の背中(と言っていいのか分からないが)を撫でる。僕は直ぐ提案に乗った。さっきのUSAといい、こいつといい、僕は怪物に懐かれやすいのだろうか…。するとひとつめ様はサラッと恐ろしい事を口にした。
「しかし良かったな文。こいつ、一目見て気に入らなければ喰って体内に取り込むからな(笑)」
…なんでそんなヤバいの選んだんだこの人(?)は。まあいい。
数分後、パイロンとひとつめ様の手で、僕の体に怪物の血が入れられた。
……今から僕は半分人間ではなくなったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる