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青年-シロワニ-
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異次元生活 2日目
「おはよう」
朝起きた僕を出迎えてくれたのはひとつめ様だった。僕は昨夜から気になっていた事を口にした。
「そういえば昨日、1週間ここにいる場合って言ってましたけど、ここに時間の概念なんてあるんですか?」
「あぁ、勿論。ここと三次元の時間の流れは同じでな。だがここで暮らす者の体は老化しないようになっている。所謂[サ○エさん時空]ってヤツだ」
ひとつめ様は相変わらず丁寧に教えてくれる。
「随分都合のいい時空ですね(笑)」
「作者の好みでな」
「いやメタい事言わないで下さいよ」
…とまぁそういう訳らしい。するとひとつめ様は、
「あ、そうだ。良いものを見せてあげよう。ちょっと来なさい」と僕を手招きした。そのままひとつめ様の後をついて行くと外に出て、彼は立ち止まった。そして指を鳴らす。
パチンッ と乾いた音が鳴ったと思うと、急に目の前の景色に色がついた。周りで沢山の人が歩いているのも見える…。
「まさか…フィールドを畳んだんですか!?」
「んなわけないだろう(笑)お前が逃げてしまうかも知れないからな。私の持つ超能力のひとつだよ。フィールド外の景色の色彩を透過させる。」と笑いながら言うひとつめ様。成程...。確かに外の音は全く聞こえない。まるで消音状態でテレビを観てるみたいだ。
「しかしお前有名人だな(笑)チラッと見える新聞とかそこのビルのデカいテレビにもお前の事ばっかだよ。」 指名手配されてるんだから、当然と言えば当然の事だけど。と心の中で呟いた所で、ひとつめ様が
「そろそろ能力が解けるな…。ま、後は好きに散歩でもしてみたらどうだろう。私は戻るから、1人では余り屋敷から離れ過ぎるなよ?」と言って屋敷の方に歩いて行った。と同時に、辺りがモノクロになった。
僕は後ろを振り返り、初めて屋敷の外装を見た。思った通り結構大きな建物だ。屋根は三角で黒く、壁は白いがドアやカーテンが黒いのが一層ミステリアスさを引き立てているという、周りの景色に全く溶け込まない容貌である。ゲームやアニメに出てくる洋館みたいだ…。そして改めて外を見回す。やっぱり元の次元にあった物は何一つ無い。さっきのビルのデカいテレビにも……
え?
僕は一瞬画面に映った青年の顔を見逃さなかった。若干マッシュルームヘア気味の、奇妙なアイマスクをした青年を。そいつは人差し指を振っていたような気がした。あっちの次元の物でもこっちに影響する物はあるのか?僕は青年の特徴をしっかり記憶し、別の場所に行こうとすると、いつの間にかそこにパイロンが立っていた。どこか項垂れているように見えた…。恐る恐る声をかける僕。
「...何?」パイロンは、僕に気づいて顔を上げた。寂しそうな表情を浮かべた彼女に気の利いた言葉をかける事も出来ず、しばらく目を合わせたまま立ち尽くしていると、
「貴方も見たの?さっきの人。」とパイロンが切り出した。恐らくさっき画面に映った青年のことだろう。見ました、とだけ答える。パイロンは例のテレビの画面に視線を戻し、こう呟いた。
「あの人も近いうちに人じゃなくなるのね...」瞳には涙が浮かんでいた。
「パイロン...?」
「このフィールドはね、三次元のものでも、そこから出て行くものの姿は映し出せるらしいの。だからあの人は...」そこまで言うと、パイロンは足早に屋敷へと戻ってしまった。あれは何者なんだろう...。今ここで考えても仕方ないので、一旦僕も屋敷に戻ることにした。
━━━━━屋敷に着くと、パイロンの姿は無かった。僕がキョロキョロしていると、「パイロンなら自室だ。あいつに用でもあったのか?」とひとつめ様が声をかけてくれた。
「いえ、強いて言うならひとつめ様に用があって...。」僕はさっきあったことを全て話した。ひとつめ様は話を聞いてくれている間こそ全く表情を変えなかったが、話終えたところで、フー、と溜息を吐いた。
「そいつは多分、パイロンの兄だ。あいつを拾った時に、服のポケットに定期入れと一緒に写真があった。残念だが...そいつは既に人じゃなくなってる。」 ひとつめ様は、暗い表情でそう言った。
「な、何でわかるんですか...?」
「さっき別の次元から連絡が来たんだ。三次元から出て別の異次元フィールドに落ちた奴がいるってな。顔も同じだったよ。確か、白鰐に変身する姿が確認されてる。」 まさか僕とパイロン以外に同じようなのがいるとは...。するとひとつめ様はおもむろに立ち上がり、
「まあ、そいつの事はそいつが落ちたフィールドの奴がなんとかしてくれるさ。昼食 の準備をしよう。お前も手伝ってくれ」と言ってキッチンへ歩いていった。
「おはよう」
朝起きた僕を出迎えてくれたのはひとつめ様だった。僕は昨夜から気になっていた事を口にした。
「そういえば昨日、1週間ここにいる場合って言ってましたけど、ここに時間の概念なんてあるんですか?」
「あぁ、勿論。ここと三次元の時間の流れは同じでな。だがここで暮らす者の体は老化しないようになっている。所謂[サ○エさん時空]ってヤツだ」
ひとつめ様は相変わらず丁寧に教えてくれる。
「随分都合のいい時空ですね(笑)」
「作者の好みでな」
「いやメタい事言わないで下さいよ」
…とまぁそういう訳らしい。するとひとつめ様は、
「あ、そうだ。良いものを見せてあげよう。ちょっと来なさい」と僕を手招きした。そのままひとつめ様の後をついて行くと外に出て、彼は立ち止まった。そして指を鳴らす。
パチンッ と乾いた音が鳴ったと思うと、急に目の前の景色に色がついた。周りで沢山の人が歩いているのも見える…。
「まさか…フィールドを畳んだんですか!?」
「んなわけないだろう(笑)お前が逃げてしまうかも知れないからな。私の持つ超能力のひとつだよ。フィールド外の景色の色彩を透過させる。」と笑いながら言うひとつめ様。成程...。確かに外の音は全く聞こえない。まるで消音状態でテレビを観てるみたいだ。
「しかしお前有名人だな(笑)チラッと見える新聞とかそこのビルのデカいテレビにもお前の事ばっかだよ。」 指名手配されてるんだから、当然と言えば当然の事だけど。と心の中で呟いた所で、ひとつめ様が
「そろそろ能力が解けるな…。ま、後は好きに散歩でもしてみたらどうだろう。私は戻るから、1人では余り屋敷から離れ過ぎるなよ?」と言って屋敷の方に歩いて行った。と同時に、辺りがモノクロになった。
僕は後ろを振り返り、初めて屋敷の外装を見た。思った通り結構大きな建物だ。屋根は三角で黒く、壁は白いがドアやカーテンが黒いのが一層ミステリアスさを引き立てているという、周りの景色に全く溶け込まない容貌である。ゲームやアニメに出てくる洋館みたいだ…。そして改めて外を見回す。やっぱり元の次元にあった物は何一つ無い。さっきのビルのデカいテレビにも……
え?
僕は一瞬画面に映った青年の顔を見逃さなかった。若干マッシュルームヘア気味の、奇妙なアイマスクをした青年を。そいつは人差し指を振っていたような気がした。あっちの次元の物でもこっちに影響する物はあるのか?僕は青年の特徴をしっかり記憶し、別の場所に行こうとすると、いつの間にかそこにパイロンが立っていた。どこか項垂れているように見えた…。恐る恐る声をかける僕。
「...何?」パイロンは、僕に気づいて顔を上げた。寂しそうな表情を浮かべた彼女に気の利いた言葉をかける事も出来ず、しばらく目を合わせたまま立ち尽くしていると、
「貴方も見たの?さっきの人。」とパイロンが切り出した。恐らくさっき画面に映った青年のことだろう。見ました、とだけ答える。パイロンは例のテレビの画面に視線を戻し、こう呟いた。
「あの人も近いうちに人じゃなくなるのね...」瞳には涙が浮かんでいた。
「パイロン...?」
「このフィールドはね、三次元のものでも、そこから出て行くものの姿は映し出せるらしいの。だからあの人は...」そこまで言うと、パイロンは足早に屋敷へと戻ってしまった。あれは何者なんだろう...。今ここで考えても仕方ないので、一旦僕も屋敷に戻ることにした。
━━━━━屋敷に着くと、パイロンの姿は無かった。僕がキョロキョロしていると、「パイロンなら自室だ。あいつに用でもあったのか?」とひとつめ様が声をかけてくれた。
「いえ、強いて言うならひとつめ様に用があって...。」僕はさっきあったことを全て話した。ひとつめ様は話を聞いてくれている間こそ全く表情を変えなかったが、話終えたところで、フー、と溜息を吐いた。
「そいつは多分、パイロンの兄だ。あいつを拾った時に、服のポケットに定期入れと一緒に写真があった。残念だが...そいつは既に人じゃなくなってる。」 ひとつめ様は、暗い表情でそう言った。
「な、何でわかるんですか...?」
「さっき別の次元から連絡が来たんだ。三次元から出て別の異次元フィールドに落ちた奴がいるってな。顔も同じだったよ。確か、白鰐に変身する姿が確認されてる。」 まさか僕とパイロン以外に同じようなのがいるとは...。するとひとつめ様はおもむろに立ち上がり、
「まあ、そいつの事はそいつが落ちたフィールドの奴がなんとかしてくれるさ。昼食 の準備をしよう。お前も手伝ってくれ」と言ってキッチンへ歩いていった。
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