ナンセンス文学

イシナギ

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決着、そして...

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バキッ!

確実に殺られたと思っていた私は攻撃が来ないことを不思議に思い、顔を上げた。視界が白い布で覆われている。
「ひとつめ様!助太刀に来ました!」
「すまないパイロン...。だが何故お前がここに?」
私を庇うようにして立っているパイロンの後ろに、文の身体を乗っ取った怪物がよろめいているのが見えた。
「これだけ暴れていれば来ない者はいません。私が 異次元こっちに落ちてきた時に手に入れた能力で時間を稼ぎますから、貴方は別場所で体制を立て直して下さい!」
そう言うとパイロンは、再び戦闘態勢に戻った。私でさえ苦戦したのだから別場所に行くわけにはいかず、その場で回復能力を使う。
パイロンの能力は「結界師バリア」...名前こそ防御に突出した能力に見えるが、こいつの結界は相手にかけ、拘束することもできるのだ。こんな、戦闘にしか使わない能力を私達が持っているのは、異次元で今回のように暴走した怪物を止めるために次元側が動いたのだろう...。
「閉じ込めなさい!」
パイロンの声が聞こえた。驚いたな。私でも捕らえられなかったあの怪物を縛り上げるとは...。
「凄いな...。よくやってくれたパイロン!」 
今のうちに文の身体から怪物を出そう...と思ったのも束の間。
パリン!とガラスが割れるような音と共に、結界が砕け散った。しかも一時的に拘束されていたので逆上している...。
「パイロン、チビ人外達を連れて屋敷の外に出ていなさい」
「そ、そんな...恩人である貴方だけを戦わせて逃げるなんてできません!」
「逃げるんじゃない。今あいつらを助けられるのはお前しかいないだろう?」
パイロンの気持ちは嬉しいが、これ以上居ては危険である。いくらもう死んでいるとはいえ、こちらの次元でもひどい怪我をする可能性は充分あるのだ。
「かしこまりました...どうかご無事で...!」
そう言ってパイロンは部屋を出て行った。
私は再び怪物に向き直る。拘束系の能力は使えない事はないが、肉体的、精神的な消耗が激しい為、外したら終わりなのである。だから極力使わずに済ませようと思っていたが...もう他に方法は無いようだ。
「縛りつけろ!拘束!レストリクション
大きな輪のようなものが3つ、文の身体に向かって唸りをあげて飛んでいく。怪物はやはり避けるが、今度はそうはいかない。この能力は追尾式だ。放ったあとも私の意のままに操り、飛ばすことが出来る。
ガチャン!という音がして、輪が3つとも奴にかかり、その身体を締め上げる。これで終わるわけではない。力を込めた指先で操り、輪を身体に押し込める。この能力の1番の特徴は、対象を内側から拘束できることだ。だからさっきのように力ずくで破られる事もない。文の身体を乗っ取った怪物はしばらくそれを外そうともがいていたが、やがて能力が効いたらしく、その場に倒れ込んだ。

意識を無くした文の身体を担いで外に出た。テレパシーでパイロンとチビ人外達を呼ぶ。
(パイロン、タマゴ、USA、セバスチャン。治療の時間だ。こっちは片付いた。)
そう送ると、数分も経たない内にパイロンがチビ人外達を連れて来た。
「よくぞご無事で居てくれました!先程は部屋があんなに荒れていたからどうなることかと...」
「あぁ。何とかなった。チビ人外達の事、ありがとな。さて...治療を開始する。パイロン達は文の記憶と血を確保してくれ。」
すると彼らは各々の能力で作業を始める。
「ごめんな、少々手荒くするぞ...。」
私はそう言って、文の身体に手を突き刺した。
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