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Past#3 一日-oneday-
Past#3 一日-oneday- 12
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「なんだ、信じらんねぇの?」
小さく笑った彼は、そっと後頭部に回していた手を離して、自分と目を合わせるようにした。
そうして、不意に片頬を持ち上げて。
「忠誠のキスでもすりゃ、信じるか?」
「キッ!?」
条件反射というかなんというか。
思わず叩くような勢いで唇の保護に走った自分の両手を見て、彼が溜まらず吹き出す。
「初過ぎるな、アンタ」
「はぁ!?」
「これは彼女も居たことねぇだろ」
「はぁ!?ちが!! いや違わないけどいや、そうじゃなくて!!」
「なるほど。初恋もまだと」
「違う!! 好きな人ぐらいは居る!!」
対抗するように叫んで、はっと我に帰った時には後の祭り。
もはや完全に楽しんでる彼は、その綺麗な顔を更に輝かせて。
ゆるりと唇が綺麗な半月を描く。
「告白できずに片思い歴数年ってか?」
鼓動が一度大きく高鳴ったのは現状を言い当てられたからだ。
決してその穏やかな声が脳に浸透し、蕩けて震わせたわけじゃない。
その綺麗さに震えたわけじゃない。
違う。
「……チハっちゃんは僕を幼馴染みとしかみてないから」
意識を反らしたくて咄嗟に飛び付くよう口にしたのは、現状を打破するどころか余計墓穴を掘るような話だった。
馬鹿だ。
阿呆だ。
間抜けもいいとこだ。
耐えるように彼の唇が時折引き付けを起こすように見えるのは被害妄想か。
言うなれば、今僕は、プライドも忘れモテない男の悲しい現実を宿敵ともいうべきモテる男に暴露したわけで、集まるのは同情票か爆笑以外にないだろう。
彼は岡やん部類の人間だ。こんなに綺麗な顔立ちをする男を、女の人が放っておくわけない。
それに彼は優しいと思う。
性格が悪いように見せて、根底は優しい。
今もこうやって話を反らしてくれている。
不安定な自分を見透かしたように、言葉をくれる。
ぐらぐらと揺らいでいた自分の中の一本を支えるように。
触れた指先はやっぱり冷たくて。
頬に触れていた肌も常温よりは少し低い。
でも彼は温かい。
「幼馴染みか。近いようで遠いよな」
構えて待った反応は、しかし全然揶揄する響きはなく、同情は感じたけどむしろ共感と言うに相応しい響きだと思った。
「へ?」
「相手に鼻から対象外に見られるってぇのが一番辛いと思わね?」
やっぱり感情は瞳に写らないけれど、彼の声は雄弁。
「……経験、あるの?」
いつの間にかとれていた敬語にも気づくことなく問えば、そりゃな、と笑われた。
それに、初めて痛みを感じた。
彼の笑い方が変わったわけでもないのに。
小さく笑った彼は、そっと後頭部に回していた手を離して、自分と目を合わせるようにした。
そうして、不意に片頬を持ち上げて。
「忠誠のキスでもすりゃ、信じるか?」
「キッ!?」
条件反射というかなんというか。
思わず叩くような勢いで唇の保護に走った自分の両手を見て、彼が溜まらず吹き出す。
「初過ぎるな、アンタ」
「はぁ!?」
「これは彼女も居たことねぇだろ」
「はぁ!?ちが!! いや違わないけどいや、そうじゃなくて!!」
「なるほど。初恋もまだと」
「違う!! 好きな人ぐらいは居る!!」
対抗するように叫んで、はっと我に帰った時には後の祭り。
もはや完全に楽しんでる彼は、その綺麗な顔を更に輝かせて。
ゆるりと唇が綺麗な半月を描く。
「告白できずに片思い歴数年ってか?」
鼓動が一度大きく高鳴ったのは現状を言い当てられたからだ。
決してその穏やかな声が脳に浸透し、蕩けて震わせたわけじゃない。
その綺麗さに震えたわけじゃない。
違う。
「……チハっちゃんは僕を幼馴染みとしかみてないから」
意識を反らしたくて咄嗟に飛び付くよう口にしたのは、現状を打破するどころか余計墓穴を掘るような話だった。
馬鹿だ。
阿呆だ。
間抜けもいいとこだ。
耐えるように彼の唇が時折引き付けを起こすように見えるのは被害妄想か。
言うなれば、今僕は、プライドも忘れモテない男の悲しい現実を宿敵ともいうべきモテる男に暴露したわけで、集まるのは同情票か爆笑以外にないだろう。
彼は岡やん部類の人間だ。こんなに綺麗な顔立ちをする男を、女の人が放っておくわけない。
それに彼は優しいと思う。
性格が悪いように見せて、根底は優しい。
今もこうやって話を反らしてくれている。
不安定な自分を見透かしたように、言葉をくれる。
ぐらぐらと揺らいでいた自分の中の一本を支えるように。
触れた指先はやっぱり冷たくて。
頬に触れていた肌も常温よりは少し低い。
でも彼は温かい。
「幼馴染みか。近いようで遠いよな」
構えて待った反応は、しかし全然揶揄する響きはなく、同情は感じたけどむしろ共感と言うに相応しい響きだと思った。
「へ?」
「相手に鼻から対象外に見られるってぇのが一番辛いと思わね?」
やっぱり感情は瞳に写らないけれど、彼の声は雄弁。
「……経験、あるの?」
いつの間にかとれていた敬語にも気づくことなく問えば、そりゃな、と笑われた。
それに、初めて痛みを感じた。
彼の笑い方が変わったわけでもないのに。
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