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第8章 明かされた真実
第52話 宿る意志
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無貌の怪物に己の姿を写し取られた鏡花は眼の前の【キョウカ】を睨みつけた。
『答えなさい! 月代善磨の姿もお前たちが写し取ったのね⁉︎』
『……【母】ノ命令ハ絶対……人間、滅ボス————』
しかし、キョウカは先ほどの言葉を繰り返しながら襲い掛かってきた。
『————!』
鋭い斬撃が頸動脈のそばを通り過ぎ、鏡花の全身が粟立つ。
(今の太刀筋は————間違いなく私のもの……‼︎)
眼を見張った鏡花にキョウカは一気呵成に攻め込んで来る。その太刀筋に迷いや乱れは見られない。間違いなく対手の生命を遮断させるものであった。
(……写し取った者の命を奪うというのなら、月代様はもう……‼︎)
歯を食いしばった鏡花は迫り来る刃を柄で跳ね上げ、その余勢を駆ってキョウカの胸を突いた。
『…………!』
胸に衝撃を受けたキョウカはよろめいて後退したが、鏡花は深追いせずに逆手となった薙刀を構え直した。
『お前たちの目的は分からないけれど、全身全霊を以て倒す————オン バロダヤ ソワカ……聖なる水の加護を我が身に————【水天】……!』
『……オン バロダヤ ソワカ……聖ナル水ノ加護ヲ我ガ身ニ————【水天】……!』
真言を唱え終えると同時に鏡花とキョウカの髪が黒から青へと染まっていく。
(————【神降ろし】まで写し取ったと言うの……⁉︎)
一族に伝わる秘伝まで模倣されるという驚くべき事態に動揺を隠せない鏡花だが、強い決意で覆い隠し地面を蹴った。
だが、その瞬間————、
『————ッ⁉︎』
全身に痺れを感じた鏡花の動きが止まり、その胸を鋭き刃が無慈悲に貫いた。
『…………』
無表情のキョウカが薙刀を引き抜くと、鏡花は多量の鮮血を吐き出してその場に崩れ落ちた。
『……う……、あ、ああ……ッ』
『————これで鏡花殿はあなた一人……』
木立の陰から姿を現したのは【金剛夜叉明王】をその身に宿したゼンマである。
鏡花に不意打ちの雷撃を放ったゼンマは血に塗れた薙刀を持って佇むキョウカの元へ歩み寄った。
『【神降ろし】か……。人間にもこのような能力を持った者がいたのだな。我らが惹きつけられたのもうなずける』
『…………』
『【写し】が終わった今、もうこの地に用はない。より文明が発達し人間の多い西国へ赴きましょう』
『…………』
反応を見せないキョウカにゼンマは首をかしげる。
『どうしたのです、鏡花殿……?』
『…………やはり……、お前は、月代様じゃない……ッ』
代わりに口を開いたのは息も絶え絶えといった様子の鏡花である。
『……お前、たちは……いったい、何者……なの……⁉︎』
『大した生命力だが、そのまま大人しく眼を閉じていた方が賢明ですぞ』
『答え……なさい……ッ』
『いいでしょう、婚約者であった誼です。我らは【主の子】』
『……【主の子】……⁉︎』
『残念ながらそれを説明するには貴女に時間が残っていないようだ』
鏡花の胸から溢れ出す血溜まりを冷めた眼で眺めながらゼンマは言った。
『……う、あ…………』
鏡花は残された力を振り絞り、己を見下ろすキョウカへと右手を伸ばす。
『…………たす、く————……』
伸ばしていた右手が力を失い、キョウカの足首に触れたところでくずおれた。
『…………』
息絶えた鏡花の亡骸を見つめながら何事かを思案しているキョウカにゼンマが声を掛ける。
『さあ、行きましょう————ッ⁉︎』
その瞬間ゼンマは背に異常な熱さを感じ、地面に膝を突いた。
『…………⁉︎』
信じられぬ思いで振り返ると、血塗られた薙刀を構えて今にも二の太刀を振るわんとするキョウカの姿があった。
『……な、何のつもりだ……⁉︎』
『……タス、ク…………』
『まさか……、【写し】が失敗していたのか……⁉︎』
『タスク……守ル……!』
振り下ろされた刃を間一髪外したゼンマはキョウカの頭を掴み上げた。
『出来損ないめ……!』
『————ッ‼︎』
ゼンマの渾身の雷撃を頭部に受けたキョウカは意識を失い倒れ込んだ。
『この場で始末して————』
とどめを刺そうと太刀に手を掛けたゼンマだったが、その動きが不意に止まった。
『…………かしこまりました……!』
抜きかけた太刀を鞘に収めたゼンマは気を失っているキョウカを担ぎ上げた。
『全ては主の仰せのままに————』
ゼンマは深傷を負った身体を引きずり、キョウカと共に夜の森へと消えて行った————。
『答えなさい! 月代善磨の姿もお前たちが写し取ったのね⁉︎』
『……【母】ノ命令ハ絶対……人間、滅ボス————』
しかし、キョウカは先ほどの言葉を繰り返しながら襲い掛かってきた。
『————!』
鋭い斬撃が頸動脈のそばを通り過ぎ、鏡花の全身が粟立つ。
(今の太刀筋は————間違いなく私のもの……‼︎)
眼を見張った鏡花にキョウカは一気呵成に攻め込んで来る。その太刀筋に迷いや乱れは見られない。間違いなく対手の生命を遮断させるものであった。
(……写し取った者の命を奪うというのなら、月代様はもう……‼︎)
歯を食いしばった鏡花は迫り来る刃を柄で跳ね上げ、その余勢を駆ってキョウカの胸を突いた。
『…………!』
胸に衝撃を受けたキョウカはよろめいて後退したが、鏡花は深追いせずに逆手となった薙刀を構え直した。
『お前たちの目的は分からないけれど、全身全霊を以て倒す————オン バロダヤ ソワカ……聖なる水の加護を我が身に————【水天】……!』
『……オン バロダヤ ソワカ……聖ナル水ノ加護ヲ我ガ身ニ————【水天】……!』
真言を唱え終えると同時に鏡花とキョウカの髪が黒から青へと染まっていく。
(————【神降ろし】まで写し取ったと言うの……⁉︎)
一族に伝わる秘伝まで模倣されるという驚くべき事態に動揺を隠せない鏡花だが、強い決意で覆い隠し地面を蹴った。
だが、その瞬間————、
『————ッ⁉︎』
全身に痺れを感じた鏡花の動きが止まり、その胸を鋭き刃が無慈悲に貫いた。
『…………』
無表情のキョウカが薙刀を引き抜くと、鏡花は多量の鮮血を吐き出してその場に崩れ落ちた。
『……う……、あ、ああ……ッ』
『————これで鏡花殿はあなた一人……』
木立の陰から姿を現したのは【金剛夜叉明王】をその身に宿したゼンマである。
鏡花に不意打ちの雷撃を放ったゼンマは血に塗れた薙刀を持って佇むキョウカの元へ歩み寄った。
『【神降ろし】か……。人間にもこのような能力を持った者がいたのだな。我らが惹きつけられたのもうなずける』
『…………』
『【写し】が終わった今、もうこの地に用はない。より文明が発達し人間の多い西国へ赴きましょう』
『…………』
反応を見せないキョウカにゼンマは首をかしげる。
『どうしたのです、鏡花殿……?』
『…………やはり……、お前は、月代様じゃない……ッ』
代わりに口を開いたのは息も絶え絶えといった様子の鏡花である。
『……お前、たちは……いったい、何者……なの……⁉︎』
『大した生命力だが、そのまま大人しく眼を閉じていた方が賢明ですぞ』
『答え……なさい……ッ』
『いいでしょう、婚約者であった誼です。我らは【主の子】』
『……【主の子】……⁉︎』
『残念ながらそれを説明するには貴女に時間が残っていないようだ』
鏡花の胸から溢れ出す血溜まりを冷めた眼で眺めながらゼンマは言った。
『……う、あ…………』
鏡花は残された力を振り絞り、己を見下ろすキョウカへと右手を伸ばす。
『…………たす、く————……』
伸ばしていた右手が力を失い、キョウカの足首に触れたところでくずおれた。
『…………』
息絶えた鏡花の亡骸を見つめながら何事かを思案しているキョウカにゼンマが声を掛ける。
『さあ、行きましょう————ッ⁉︎』
その瞬間ゼンマは背に異常な熱さを感じ、地面に膝を突いた。
『…………⁉︎』
信じられぬ思いで振り返ると、血塗られた薙刀を構えて今にも二の太刀を振るわんとするキョウカの姿があった。
『……な、何のつもりだ……⁉︎』
『……タス、ク…………』
『まさか……、【写し】が失敗していたのか……⁉︎』
『タスク……守ル……!』
振り下ろされた刃を間一髪外したゼンマはキョウカの頭を掴み上げた。
『出来損ないめ……!』
『————ッ‼︎』
ゼンマの渾身の雷撃を頭部に受けたキョウカは意識を失い倒れ込んだ。
『この場で始末して————』
とどめを刺そうと太刀に手を掛けたゼンマだったが、その動きが不意に止まった。
『…………かしこまりました……!』
抜きかけた太刀を鞘に収めたゼンマは気を失っているキョウカを担ぎ上げた。
『全ては主の仰せのままに————』
ゼンマは深傷を負った身体を引きずり、キョウカと共に夜の森へと消えて行った————。
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