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3. 猛暑に召喚
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「ふう、暑かったぁ。なんて猛暑だほんと。あせびっしょりだ」
三十五度を超える外からマンションに帰ってきた志郎は着ていたものをすべて脱ぐとシャワーを浴びに風呂場に急いだ。
ガチャッ。
風呂のドアを開けると……。
「……な、なんでやねん……」
目の前は真っ白だった。そして後ろを見ると風呂のドアも無くなっていた。
志郎は全裸のまま立ちすくんだがこのままではどうしようもないと数歩前に進んだ。
「やっぱり……」
目の前にはあまり見たくもない襖があった。
ポスポス。
襖を叩くと中から声がした。
「はーい。どうぞぉ」
女性の声がした。
「やっぱりエロ女神の声だ」
志郎は襖を少し開けて中を覗く。いつもの風景があったが今回はテレビもついてないしこの部屋の主の女神の姿もない。
「シローでしょ?ちょっと待っててねぇ」
横の方から声がした。
「あ、ああ。急がなくてもいいぞ」
志郎は片手で前を隠してテーブルに近寄る。そしてちょうどテーブルの横に置いてあった新聞を拡げるとそれで下半身を隠した。
カチャカチャと音がする方を見ると女神ターシァがキッチンで洗い物をしているのが見えた。
「おお、今日はちゃんと服着てるじゃないか」
膝上までの真っ白なワンピースを着ている女神ターシァ。
「えへへへ」
後ろ姿のままうれしそうな女神の声が聞こえた。
「なあ、もしかしてまた召喚か?」
「そうなのよねえ。なんでか最近多いのよねえ」
困っちゃうわといいながら洗い物を続ける。
「そっか。そんなに多いのか?」
「うん。こないだなんて三日連続で勇者召喚よ。それが終わったなあと思ったら今度は聖女召喚。ほんっと忙しいったらありゅゃしないわ」
とかちゃかちゃと食器を洗う音が少し強くなった。
「そりゃ大変だな。で、どんなヤツを召喚したんだ?」
「えとね、一人は巨大魔獣の討伐だったんだけど、『駆逐してやる』って言って異世界に行ってくれたのよ。そして一人はオーガって鬼の軍勢の制圧だったんだけど、なんかさカードみたいな耳飾りつけてたし、大きな箱を背負ってたわよ。なんか鼻が滅茶苦茶効くみたい。それとあとの一人はさ、変なの召喚しちゃったのよねえ」
「変なの?」
「うん。なんか青いタヌキみたいなの。『ボクはタヌキじゃなーい!』っていってたのよ。でも異世界に行ってもらったらへんな道具使って解決してくれたけどね」
と微笑した。
「そっか大変だな。ちなみに聖女ってどんなヤツを召喚したんだ?」
「えーとね、一人はかなり若いっていうか、子供かな?なんかさ『月に替わっておしおき』とかなんとか言ってたし、一人は人なのかどうかわからないくらいの女の子だったわよ。なんかさ『あなたの人生変わるわよ』なんて言ってたし。あと一人は人じゃなかったわね。キーンって言いながら走るわ頭をポンッて抜くし星をグーでパカンて割るし。大変なの召喚しちゃったわ」
はははと笑いながら洗い物をするターシァ。
「そうなんだ。そりゃ大変だったんだな」
と下半身を隠している新聞に目をやると『また召喚事故発生!召喚三度の男神書類送検。召喚魔法陣から遠く離れたところに召喚」とか「三途の川の川開き、鬼たちもゴミ拾い」とか「ゼウスまたも不倫疑惑」とかの見出しに苦笑する志郎。
「それにしてもシロー。今日はなんで上半身裸なの?」
ターシァが肩越しに志郎を見てニヤニヤしている。
「あ、うん。ちょっとな」
「もしかしてあたしに会うことがわかってて裸でいてくれたのぉ?でへへへへ」
「ちゃうわ!連日猛暑で熱いからシャワー浴びようとしてただけだ!」
「あらそうだったの。悪い時に召喚しちゃったわね。おわびになんか冷たいもの淹れるわね」
「あ、うん」
ターシァはくすくす笑うと冷蔵庫からジュースを取り出してコップに注ぐと綺麗な氷を数個入れてお盆に乗せた。
「お待たせぇ」
とジュースを乗せたお盆を持ったターシァがこちらを向いたとたん志郎は絶叫した。
「ななななななんじゃその格好はぁぁぁぁぁぁ!」
「てへっ!」
チロッと舌を出して小首を傾げた。
後ろ姿は確かに白いワンピース姿だったのだが、前側は首とウエストを細い紐でちょうちょ結びで止めてるだけだった。そう、後ろ姿はワンピース、前から見たらスッポンポンと完全無欠のド変態エロ女神だった。
「逆裸エプロンやんけぇ!どアホォォォォ!やめんかど変態女神ぃぃぃぃぃぃ!」
志郎は思わず膝の上に拡げた新聞を丸めるとターシァ目掛け思いっきり投げた。
「ふげっ!」
奇妙な声をあげるとターシァは後ろに吹っ飛んだ。だがジュースを乗せたお盆は空中に浮かんだままだ。
「い、痛いわよぉシロー!何すんのよぉ!」
と赤い鼻をしたターシァが怒りの形相で志郎の眼前に急に現れた。
「うわっ!急に出てくるなエロ女神!……ってちょっと離れてもらえないかなと思ったりなんかしたりして」
と目を泳がせる志郎。眼前のターシァは前がスッポンポン。大きな大きな大きな胸が志郎の上半身裸の胸にくっついてるしさっきまで下半身を隠していた新聞は無いし、いろいろ大変な状況になっている志郎。
「何よ!何よ何よ何よ何よぉぉぉ!何よ……?あれ?なんかお腹に硬いものが当たって……」
志郎の様子に少しとまどったターシァが視線を下に移した。
「にへら。いひひひひひ。なあんだ、そうだったのぉシロー。あはん。うひひひひ」
目をこれでもかと開けてそれをじっと見た。
「見るなぁぁぁぁぁ!」
ターシァを突き飛ばすと志郎は襖を開けて出て行った。
「待ってぇぇぇん。シロー!カムバーック!大丈夫ぅ、襲わないからぁ、戻ってきてぇ!」
にへらと笑いながら身体をくねらすターシァ。
ここは女神ターシァの絶対領域。ただの人間の志郎に逃げられるはずもなく気が付くともとのターシァの部屋に座っていた。全裸で。
「あははは。なかなか立派なものを持ってたのねえ志郎」
「言うな!」
「んもう、褒めてるのにぃ。まあ、いいわ。これ着なさいな。ちゃんと男物の服一式よ。ちゃんと下着もあるからね」
どこから出したのかそれを志郎に渡すターシァ。
「あ、うん。悪いな」
白いTシャツとデニムという元の世界ではありふれた服だがTシャツには’I LOVE TARSHA’と赤い文字で書かれてあった。が、志郎はあえて気にしないことにした。
志郎は着替えるとようやく息を着いたのだった。
「で、召喚はどうするんだ?」
「行ってもらうわよ。えとね今度の召喚はね。まあ、いつものとおりだけどさ」
とテーブルに拡げた地図をトントンと細い指先で叩いた。
地図には前回同様笑ってしまうほどの島が描かれてあった。
「なんじゃこの島?赤い縁の眼鏡みたいだな。あはははは」
「そうなのよ。笑っちゃうでしょ。それでね、この国はウートラアイ、そしてこの中心にあるのが聖都アースラッガって言うの。でね、ここがいつものとおり魔族に云々なわけ。いい?」
「ああ。で、その魔族を倒してくれってか?」
「そうなのよねえ。魔族にもいい魔族がいるのにねえ」
と人差し指を唇の端に当てるターシァ。
「あっ、そうだ。ターシァに聞きたいことがあったんだ」
「何?……って、あたしのことターシァって呼んでくれたわねシロー。ありがと」
とてもうれしそうなターシァの頬は少し紅くなった。
「へ・あ、、いや……。まあ、それよりだな、一回目の召喚の時も二回目の時も同じ魔族の魔王に会ったんだよ。それも魔王のじいさんでさ、なんかターシァのこと知ってるみたいだったぞ」
「へえ。どんなおじいさん?」
「えーとな、浅黒くて頭のツノは二本でねじれてて、口は耳まで裂けててさ、あと白い立派な顎髭があった」
「あはは、それって魔族の中の魔族のおじいさんのことだわ。知る人が見れば平伏するようなお方よ。あたしも何回か会ったことあるけど、素晴らしい魔族よ。一度神にならないかって誘ったんだけど断られちゃったわ」
「へえ、そんなじいさんだったのか。でも会った時って時間も世界も違ったんだけど?」
「ああ、それね。あのおじいさんは何人もの魔族を連れて異なる世界を漫遊しながら世直ししてるのよ」
「そうなのか。なんか水戸の御老公みたいだな」
「御老公?それがどういうのかよくわからないけど、とにかく素晴らしい魔族の王よ」
と笑うターシァ。
「さてと、そろそろ勇者シローを光臨させないとね。準備いい?」
「ああ。でも今度こそ変なとこに送らないでくれよな」
「あはは。わかってるって。今回はちゃんと転送するって。さ、始めるわね」
ターシァが人差し指を志郎の額に充てると白く光った。そしてその指を地図の上に持っていく。
「えと、ここよね。シローも確認して」
どれどれと志郎も地図を見る。
「ここよね」
「そうそう、そこだ。間違いない城の真上だ」
「オッケー。んじゃ行くわよ」
ターシァがその指をアースラッガ城にポンッと置いた。
「行ってらっしゃい」
「行ってくる」
志郎の身体が白く輝くとその姿が消えた。
「気を付けてねシロー」
そしてターシァはテーブルの上をトントントンと三回叩いた。するとアースラッガの召喚師と繋がったのだった。そしてターシァは言葉を送る。一応それは神の声、神託になるのだ。
『勇者はそなたたちの城内に光臨した。手厚く扱うようにするのだ。良いな』
その言葉に平伏する召喚師。ターシァは返事を聞くことなく繋がりを解いた。
「さてと、おやつでも食べたら様子を診てみようっと」
フンフンと鼻歌を歌いながらキッチンに行った。
ポリポリと煎餅を食べながらテレビを見る。このテレビは異世界の番組を見られる神界の特別性だ。なんと三十箇所もの異世界と繋がっていて三百以上の放送が見られるのだ。そして追加料金を支払いプレミアム会員になると異世界の数が百に、見られる放送も千を超えるがターシァは一般会員だ。ただしR指定は契約しているのだった。
「さて、シローはどうしてるかなあ。そろそろ見てみよっと」
ターシァは微笑むとリモコンでテレビのチャンネルを替えた。
「あっ、いやんもうシロー……。なかなかハーレムしてるじゃない。あははははは」
テレビに映る志郎を指さして爆笑するターシァ。
テレビはアースラッガに転送した志郎の姿を映し出していた。
「あははははは!」
爆笑し続けるターシァ。志郎は裸の女たちに囲まれて袋叩きにあっていた。
三十五度を超える外からマンションに帰ってきた志郎は着ていたものをすべて脱ぐとシャワーを浴びに風呂場に急いだ。
ガチャッ。
風呂のドアを開けると……。
「……な、なんでやねん……」
目の前は真っ白だった。そして後ろを見ると風呂のドアも無くなっていた。
志郎は全裸のまま立ちすくんだがこのままではどうしようもないと数歩前に進んだ。
「やっぱり……」
目の前にはあまり見たくもない襖があった。
ポスポス。
襖を叩くと中から声がした。
「はーい。どうぞぉ」
女性の声がした。
「やっぱりエロ女神の声だ」
志郎は襖を少し開けて中を覗く。いつもの風景があったが今回はテレビもついてないしこの部屋の主の女神の姿もない。
「シローでしょ?ちょっと待っててねぇ」
横の方から声がした。
「あ、ああ。急がなくてもいいぞ」
志郎は片手で前を隠してテーブルに近寄る。そしてちょうどテーブルの横に置いてあった新聞を拡げるとそれで下半身を隠した。
カチャカチャと音がする方を見ると女神ターシァがキッチンで洗い物をしているのが見えた。
「おお、今日はちゃんと服着てるじゃないか」
膝上までの真っ白なワンピースを着ている女神ターシァ。
「えへへへ」
後ろ姿のままうれしそうな女神の声が聞こえた。
「なあ、もしかしてまた召喚か?」
「そうなのよねえ。なんでか最近多いのよねえ」
困っちゃうわといいながら洗い物を続ける。
「そっか。そんなに多いのか?」
「うん。こないだなんて三日連続で勇者召喚よ。それが終わったなあと思ったら今度は聖女召喚。ほんっと忙しいったらありゅゃしないわ」
とかちゃかちゃと食器を洗う音が少し強くなった。
「そりゃ大変だな。で、どんなヤツを召喚したんだ?」
「えとね、一人は巨大魔獣の討伐だったんだけど、『駆逐してやる』って言って異世界に行ってくれたのよ。そして一人はオーガって鬼の軍勢の制圧だったんだけど、なんかさカードみたいな耳飾りつけてたし、大きな箱を背負ってたわよ。なんか鼻が滅茶苦茶効くみたい。それとあとの一人はさ、変なの召喚しちゃったのよねえ」
「変なの?」
「うん。なんか青いタヌキみたいなの。『ボクはタヌキじゃなーい!』っていってたのよ。でも異世界に行ってもらったらへんな道具使って解決してくれたけどね」
と微笑した。
「そっか大変だな。ちなみに聖女ってどんなヤツを召喚したんだ?」
「えーとね、一人はかなり若いっていうか、子供かな?なんかさ『月に替わっておしおき』とかなんとか言ってたし、一人は人なのかどうかわからないくらいの女の子だったわよ。なんかさ『あなたの人生変わるわよ』なんて言ってたし。あと一人は人じゃなかったわね。キーンって言いながら走るわ頭をポンッて抜くし星をグーでパカンて割るし。大変なの召喚しちゃったわ」
はははと笑いながら洗い物をするターシァ。
「そうなんだ。そりゃ大変だったんだな」
と下半身を隠している新聞に目をやると『また召喚事故発生!召喚三度の男神書類送検。召喚魔法陣から遠く離れたところに召喚」とか「三途の川の川開き、鬼たちもゴミ拾い」とか「ゼウスまたも不倫疑惑」とかの見出しに苦笑する志郎。
「それにしてもシロー。今日はなんで上半身裸なの?」
ターシァが肩越しに志郎を見てニヤニヤしている。
「あ、うん。ちょっとな」
「もしかしてあたしに会うことがわかってて裸でいてくれたのぉ?でへへへへ」
「ちゃうわ!連日猛暑で熱いからシャワー浴びようとしてただけだ!」
「あらそうだったの。悪い時に召喚しちゃったわね。おわびになんか冷たいもの淹れるわね」
「あ、うん」
ターシァはくすくす笑うと冷蔵庫からジュースを取り出してコップに注ぐと綺麗な氷を数個入れてお盆に乗せた。
「お待たせぇ」
とジュースを乗せたお盆を持ったターシァがこちらを向いたとたん志郎は絶叫した。
「ななななななんじゃその格好はぁぁぁぁぁぁ!」
「てへっ!」
チロッと舌を出して小首を傾げた。
後ろ姿は確かに白いワンピース姿だったのだが、前側は首とウエストを細い紐でちょうちょ結びで止めてるだけだった。そう、後ろ姿はワンピース、前から見たらスッポンポンと完全無欠のド変態エロ女神だった。
「逆裸エプロンやんけぇ!どアホォォォォ!やめんかど変態女神ぃぃぃぃぃぃ!」
志郎は思わず膝の上に拡げた新聞を丸めるとターシァ目掛け思いっきり投げた。
「ふげっ!」
奇妙な声をあげるとターシァは後ろに吹っ飛んだ。だがジュースを乗せたお盆は空中に浮かんだままだ。
「い、痛いわよぉシロー!何すんのよぉ!」
と赤い鼻をしたターシァが怒りの形相で志郎の眼前に急に現れた。
「うわっ!急に出てくるなエロ女神!……ってちょっと離れてもらえないかなと思ったりなんかしたりして」
と目を泳がせる志郎。眼前のターシァは前がスッポンポン。大きな大きな大きな胸が志郎の上半身裸の胸にくっついてるしさっきまで下半身を隠していた新聞は無いし、いろいろ大変な状況になっている志郎。
「何よ!何よ何よ何よ何よぉぉぉ!何よ……?あれ?なんかお腹に硬いものが当たって……」
志郎の様子に少しとまどったターシァが視線を下に移した。
「にへら。いひひひひひ。なあんだ、そうだったのぉシロー。あはん。うひひひひ」
目をこれでもかと開けてそれをじっと見た。
「見るなぁぁぁぁぁ!」
ターシァを突き飛ばすと志郎は襖を開けて出て行った。
「待ってぇぇぇん。シロー!カムバーック!大丈夫ぅ、襲わないからぁ、戻ってきてぇ!」
にへらと笑いながら身体をくねらすターシァ。
ここは女神ターシァの絶対領域。ただの人間の志郎に逃げられるはずもなく気が付くともとのターシァの部屋に座っていた。全裸で。
「あははは。なかなか立派なものを持ってたのねえ志郎」
「言うな!」
「んもう、褒めてるのにぃ。まあ、いいわ。これ着なさいな。ちゃんと男物の服一式よ。ちゃんと下着もあるからね」
どこから出したのかそれを志郎に渡すターシァ。
「あ、うん。悪いな」
白いTシャツとデニムという元の世界ではありふれた服だがTシャツには’I LOVE TARSHA’と赤い文字で書かれてあった。が、志郎はあえて気にしないことにした。
志郎は着替えるとようやく息を着いたのだった。
「で、召喚はどうするんだ?」
「行ってもらうわよ。えとね今度の召喚はね。まあ、いつものとおりだけどさ」
とテーブルに拡げた地図をトントンと細い指先で叩いた。
地図には前回同様笑ってしまうほどの島が描かれてあった。
「なんじゃこの島?赤い縁の眼鏡みたいだな。あはははは」
「そうなのよ。笑っちゃうでしょ。それでね、この国はウートラアイ、そしてこの中心にあるのが聖都アースラッガって言うの。でね、ここがいつものとおり魔族に云々なわけ。いい?」
「ああ。で、その魔族を倒してくれってか?」
「そうなのよねえ。魔族にもいい魔族がいるのにねえ」
と人差し指を唇の端に当てるターシァ。
「あっ、そうだ。ターシァに聞きたいことがあったんだ」
「何?……って、あたしのことターシァって呼んでくれたわねシロー。ありがと」
とてもうれしそうなターシァの頬は少し紅くなった。
「へ・あ、、いや……。まあ、それよりだな、一回目の召喚の時も二回目の時も同じ魔族の魔王に会ったんだよ。それも魔王のじいさんでさ、なんかターシァのこと知ってるみたいだったぞ」
「へえ。どんなおじいさん?」
「えーとな、浅黒くて頭のツノは二本でねじれてて、口は耳まで裂けててさ、あと白い立派な顎髭があった」
「あはは、それって魔族の中の魔族のおじいさんのことだわ。知る人が見れば平伏するようなお方よ。あたしも何回か会ったことあるけど、素晴らしい魔族よ。一度神にならないかって誘ったんだけど断られちゃったわ」
「へえ、そんなじいさんだったのか。でも会った時って時間も世界も違ったんだけど?」
「ああ、それね。あのおじいさんは何人もの魔族を連れて異なる世界を漫遊しながら世直ししてるのよ」
「そうなのか。なんか水戸の御老公みたいだな」
「御老公?それがどういうのかよくわからないけど、とにかく素晴らしい魔族の王よ」
と笑うターシァ。
「さてと、そろそろ勇者シローを光臨させないとね。準備いい?」
「ああ。でも今度こそ変なとこに送らないでくれよな」
「あはは。わかってるって。今回はちゃんと転送するって。さ、始めるわね」
ターシァが人差し指を志郎の額に充てると白く光った。そしてその指を地図の上に持っていく。
「えと、ここよね。シローも確認して」
どれどれと志郎も地図を見る。
「ここよね」
「そうそう、そこだ。間違いない城の真上だ」
「オッケー。んじゃ行くわよ」
ターシァがその指をアースラッガ城にポンッと置いた。
「行ってらっしゃい」
「行ってくる」
志郎の身体が白く輝くとその姿が消えた。
「気を付けてねシロー」
そしてターシァはテーブルの上をトントントンと三回叩いた。するとアースラッガの召喚師と繋がったのだった。そしてターシァは言葉を送る。一応それは神の声、神託になるのだ。
『勇者はそなたたちの城内に光臨した。手厚く扱うようにするのだ。良いな』
その言葉に平伏する召喚師。ターシァは返事を聞くことなく繋がりを解いた。
「さてと、おやつでも食べたら様子を診てみようっと」
フンフンと鼻歌を歌いながらキッチンに行った。
ポリポリと煎餅を食べながらテレビを見る。このテレビは異世界の番組を見られる神界の特別性だ。なんと三十箇所もの異世界と繋がっていて三百以上の放送が見られるのだ。そして追加料金を支払いプレミアム会員になると異世界の数が百に、見られる放送も千を超えるがターシァは一般会員だ。ただしR指定は契約しているのだった。
「さて、シローはどうしてるかなあ。そろそろ見てみよっと」
ターシァは微笑むとリモコンでテレビのチャンネルを替えた。
「あっ、いやんもうシロー……。なかなかハーレムしてるじゃない。あははははは」
テレビに映る志郎を指さして爆笑するターシァ。
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