俺……、異世界に行ってた……

アデュスタム

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07 グランドギルドマスターのカノンだ

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「な、なんだって!」
 はずしていたサングラスをかけガンマと話をしている康人は驚いた。
「そんなに驚かなくてもいいだろヤッさん」
 ガンマが腕を組み康人を見下ろしていた。
「だってさ、ガンマ……、お前それで二十歳だなんて……」
「そ、そうよ。どう見たって三十は超えてるでしょ?!下手したらヤッさんくらいに……」
「ちょっと待ってくれよもう、姐御さんまで。そりゃけっこう老け顔だって言われるけどよ。ほんとにもう傷つくぜ」
 ムスッとするガンマ。
「あはは。まあ、すまないガンマ。そうだよな二十歳で三十過ぎはちょっと可哀そうだよな。ははは」
「そ、そうよね、ごめんねガンマ」
 思いっきり苦笑する康人とシーディア。
「まあ、いいや。ヤッさん、姉御さん俺はそろそろ失礼するよ。それじゃ」
 ガンマはそう言いもう一度康人と握手をするとギルドを出ていった。

「おい、もう終わったか?」
「あっ、リュウト!ごめんすっかり忘れてたわ。さあヤッさん、カウンターに……」
 カウンターに行きましょうと言いかけたがリュウトが笑いながら止めた。
「ははは。報告はもう終わったぞ」
「そ、そうなんだ、ごめんリュウト」
「俺も謝るよ。リュウトごめん。ちょっと想定外の出来事があって……」
 康人もリュウトの方に向くと謝罪する。
「いいってヤッさん。ぜんぶ見てたからわかってるさ。でだ」
 と自分の横にいる女をチラッと見る。
「君がヤスヒトか」
 ピンクのワンピースを着た女が康人に近づいた。
「へ?あ、はい。そうですが……」
 その声はなぜかかなり若く感じた。
「私は数あるギルドを総括するここオリスメイ・ギルド総本部の本部長。グランドギルドマスターのカノンだ。よろしく」
 カノンは康人の前まで行くと手を差し出した。だが盲目の康人にはわからない。
「ヤッさん、グラマスが握手してくださるって」
「えっ!そうなんだ。し、失礼しました。俺、康人です。よろしくお願いします」
 康人は右手に持っていた白杖を左手に持ち帰ると差し出されたカノンの握手に応じるために手を前に出した。それを握るかのん。
「私の方こそ失礼した。ヤスヒトが盲目だと言うことをうっかりしていた」
「あ、、いえ。ありがとうございます」
 手を握った瞬間康人ははてと頭にクエッションマークを浮かばせた。
「(ちっちゃい手だな。子供か……?背も低そうだし……)」
 自分の胸くらいの高さから聞こえるカノンの声に小学生くらいの背だよなあと心の中で首を捻る。
 そして口に出してしまった。
「……ちびっ子か?」

「うわっ!言っちまったぞあのおっさん!」
 近くで傍観していた冒険者の男が一歩後退った。
「グラマスの逆鱗に触れたなあのおっさん」
 横の男もそう言った。
「あ~ぁ、知~らない。グラマスは慎重のこと言われると我を忘れてしまうのに」
 その横の女も肩を竦める。
「と、止めないと!」
 と二人に一歩近づくシーディア。

「違うわ!ちびっ子言うな!私は列記とした大人の女だぞ!失礼な!このっ!」
 カノンは握った手に力を入れて康人の手を思いっきり握った。
「悪い悪い。でも、これで大人なのか?ちびっ子じゃないのかこの手で」
「そうだ!私はれっきとした大人だ。見た目の手で子ども扱いするではないぞ!このっ!」
 と言いながら再び握った手に力を込めるが康人は平然と苦笑している。
「あ、すみません。小さな手だったもので……。でも、本当に大人?ちっちゃな手だし、声からすると女、というより少女みたいに聞こえるし。……ってもしかして男?」
「違うわっ!女だ女!正真正銘大人の女だ!」
「そうなのか。まあ、そういうことにしとくけど……」
「おい貴様!信じぬのか!」
 と怒り声だが康人には迫力が感じられない。が周囲の者たちは目を見開いていた。
「いえいえ、信じてますよはい」
「むむむ」
 康人を見上げ睨むカノン。

「やっちまったなあのおっさん」
「ああ。治癒術師呼んでやろうか」
「そうね、それがいいかもね」
 と周囲はひそひそ。

グ、グラマス、まあまあ」
 とシーディアが止めようとしたがカノンの耳には入らなかった。
「うぅっ……。わかった、こうなったら証拠を見せてやる!」
 カノンは康人の手を持つと自分の身体に押し当てた。
  むにゅっ。
「あっ!」
 それを見たシーディアが目を見開く。
「おおっ!」
「うわっ!」
 リュウトもビルも康人の手を凝視する。
「なっ!」
「驚きだぜ!」
「うわあ」
 傍観していた冒険者も驚愕する。

「あはっ。これって……」
「どうだ!大人の女の胸であろう!」
 カノンが康人の手を持って行ったのはなんと胸だった。カノンは康人を見上げながら顔を真っ赤にする。
  もみもみ。
「うひゃっ、揉むな!」
「あはは。揉むのが仕事なもんで」
「や、やめんか!ほんとにもう」
 その手から逃れたカノンの顔は首まで真っ赤になっていた。
「で、どうだ私は大人の女だっただろう!」
 両手で胸を抱くようにして康人を見上げるカノン。
「ああ、すまない。悪かったな。ちゃんとした大人の女だった。それもかなりでかかった」
 康人は頭を下げる。
「そうだろうそうだろう」
 うんうんと頷くカノンの顔はまだ少し赤い。
「ま、まあ、わ、わかってくれればいい。しかも、こう見えても私は君よりも年上なのだぞ」
「へ?そうなのか」
「今年百二十六歳だ。だが、けっしてお婆……」
 その後を言う前に康人が言ってしまった。
「婆さんだったのか。これは失礼しました」
「……婆さん言うな!私はまだまだ若い!」
「そ、そうか。すまない。で、そんな歳ってことは人じゃないのか?」
「そうだ。私はエルフなのだ」
 と大きな胸を張る。
「エルフ?」
「そうだ。また証拠を見せてやろう」
 そう言うと再び康人の手を持って自分の耳を触らせた。
「ほんとだ細長い耳だ。へえ」
 康人の触ったとおりカノンの耳はエルフ特有の細長い耳だった。緑のセミロングの髪の間からその細長い耳が飛び出していた。
  もみもみ。
「あふん。だーかーらー、揉むな!」
「あはは。悪い悪い。ごめんカノンちゃん」

「グラマスをカノンちゃん呼ばわりだと!」
「あのおっさん、死んだな」
「あ~ぁ、治癒術師いらないみたいね」
 傍観者たちは小さく首を左右に振った。

「……カノンちゃん言うな!いい加減にしろっ!優しくしておればつけあがりおって!」
 鬼の形相で康人を髪と同じ緑の目で睨むカノン。
 一歩一歩康人に近づくと拳を握った。

「さらばだ、おっさん」
 傍観者の中からそんな声が聞こえてきた。
「や、ヤッさん……」
 蒼ざめるシーディア。

「覚悟しろ!このこのこの!」
  ぽかぽかぽか。
 カノンは真っ赤な顔で康人の胸をポカポカ叩く。
「あはは。だから悪かったって」
 笑いながらカノンの攻撃を受ける康人。
「……へ……?」
  傍観していた者全員があっけにとられた。
「な、なんでだ……。あのグラマスが……」
「いつもだと半殺しだぞ……」
「あ、あたし……、怖い……」
 一番近くで見ていた三人が驚愕して驚いてびっくりして仰天した。
  ボン!
「貴様らうるさいぞ!」
「ひえっ!」
 カノンの指先が光ったかと思えばそのぶつぶつ言っている三人の目の前の床が爆発した。
「まあまあカノンちゃん、そんなに興奮しないで、な」
「う、うるさいっ!今私は怒ってるんだぞ!興奮して当たり前だ!」
  ポカポカポカ!
 康人を叩く力が少し強くなった。
「ごめんって。な、カノンちゃん」
 だが康人はまだ笑っている。
「あのグラマス……、これでもどうですか?」
 あっけにとられていたシーディアがカバンの中から何かを取り出してカノンの目の前に差し出した。
「あっ!クッキー!」
「そうですよ。クッキーですよ。さあ、こんなとこじゃなくて本部長室で食べながら話をしませんか?」
「うむ。いいだろう。話を聞こう」
 と言いつつ目の前のクッキーから目が離せないカノンだった。


「コホン。えと、ヤスヒト」
「はい」
「リュウトから聞いたが、ミーガの森の前で迷子になってたそうだな」
「はい。そうなんです」
 ここはカノンが執務を行う部屋。そう、本部長室だ。
 あれから速やかにこの部屋に移動したカノンと康人たち。秘書によって運ばれたお茶を飲みながら全員でテーブルを囲む。
 さっきは少女というより子供っほかったカノンはこの部屋に入るとグランドギルドマスターらしくなった。言動にも威厳が感じられ康人も少し姿勢を正したのだった。
 グランドマスターであるカノンの正面には康人。この二人の両側のソファーにリュウトとシーディア、そしてビルが座っている。カノンの後ろに控えるのはお茶を運んできた秘書の男だ。
「で、ヤスヒト。君は異なる世界から来たと言うのは真実か?」
「はい。おそらくですが。……いえ、確実に異世界から来たと思います」
「うむ。詳細を頼む」
 その後康人はあのミーガの森に現れたことから自分の能力のことなどを話しした。
 最初詳しく話すのを躊躇したが、リュウトたちがカノンは信頼できる、カノンほど信じられるギルマスは他にいないと言うのを信じすべてを話ししたのだった。
 話が続いていくとカノンはシーディアからもらったクッキーをモシャモシャ、お茶をゴクゴク。康人は最初こそ威厳のあったカノンに丁寧に話していたが、途中からは脱力しながら話を続けた。
「そうか……。たった一人でまったく知らぬ世界に迷い込んだのか。心中察するぞヤスヒト」
 カップに残ったお茶を一口飲むとそう言った。
「ありがとうカノンちゃん」
「いや、気にするな……。じゃなくてだな、気安くカノンちゃんなどと……」
「ところでカノンちゃん」
「な、なんだヤスヒト」
「俺のことはヤッさんと呼んでくれ。リュウトたちもそう呼んでくれてるし」
「そうか、ではヤッさんと呼ぶことに使用。でだ、私のことは……」
「なあカノンちゃん」
「はい、ヤッさん?」
「俺、元の世界に還ることができるんだろうか?」
「さ、さあ……。私にはわからないが……」
「だよなあ……」
 肩を落とす康人にカノンも悲しそうになる。
「もしかしたら図書館に情報があるかもしれないし、私も信頼できる者に尋ねとくからさ」
「ありがとうカノンちゃん」
 微笑する康人を見てカノンも少しホッとする。

「……は?……」
 康人とカノンの会話を聞いていたリュウト達は、カノンの康人に対する対応に少し驚いていた。
「こんなグラマス見たこと無いぞ俺」
「そ、そうよねあたしも……」
 リュウトとシーディアが二人にしか聞こえないような小声で言った。向かいに座ってるビルも不思議そうにカノンを見ている。
「グラマスってみんなから何故か怖がられてるし、……こんなところがあったなんて。なんか新鮮」
 とシーディア。
「ああ。百戦錬磨の鬼神と恐れられてた御仁だからな。って俺もよく知らんけど」
 とリュウト。
「そんなお人がねえ……」
 とシーディアはなんとなくうれしそうだった。


「でさヤッさん、私のことは……」
「なあカノンちゃん、俺はこれからどうすればいいのかな?というより俺の処遇はどうなるのかな?」
「あ、はい。えとだな。ヤッさんの素性はわかったし、たった一人なのもわかった。何よりさっきごつい冒険者を診察していたのを診るとかなりの知識があるようだし。そしてリュウトたちからも信頼されてる。ヤッさんはこの国に、この世界に災いをもたらす者ではないことはわかった。だから、元の世界への帰還方法がわかるまでここオリスメイに滞在することを許可する」
 少し偉そうにカノンはそう言った。
「ありがとうカノンちゃん」
「うむ。でヤッさん。ひとつ視て欲しいんだがいいか?」
「なんだ?何を視るんだ」
「えとね。ヤッさんは魂の炎が視えるんだよね。私も、私も視てくれないかなあって。リュウトたちのも視たんでしょ?私も視られるのかなあって」
「あはは。たぶん視られると思うぞ。そうか、カノンちゃんも視てほしいのか。わかった」
「ホント!うれしい。おいマーディロス、お前も視てもらったらどうだ?」
 カノンは後ろで控えているマーディロスと言う名の秘書に声をかけた。が、青い瞳のその秘書は眉一つ動かさず拒否した。
「いえ、わたくしはけっこうです。魂をのぞき見されるなどと不快極まりありません」
「そうか。つまらん男だなお前は。まあいい。ならば先ほど言ったこと頼む」
「はい。承知いたしました」
 マーディロスは全員に会釈をすると本部長室を出て行った。
「ほんとノリが悪いヤツだなマーディロスは」
 閉じたドアを見て文句をいうカノン。
「……」
 康人も見えない目で閉じたドアを見つめる。
「あんなヤツはほっといて。ねえヤッさん、さささ、早く視て、早く視てぇ!」
 わくわくしながら康人を見るカノン。

「うわっ!グラマス可愛いっ!キュンってきた!」
 シーディアが両手を胸の前で組むと口元に持って行って肩をピョンと上げた。
「キュン?」
 リュウトは不思議そうにシーディアを見やる

「わかったわかった。あわてないでいいぞ。それじゃ視てみる」
 と言うとかけていたサングラスをはずした。
 見えない目でカノンを注視する。そしてその見えない目に炎が見えた。
「えーと。ちょっと薄めな気がするけどきれいな青白い炎だよカノンちゃん。うん、体調はよさそうだな」
「そ、そうなんだ!体調がいいみたいなんだ。で?で?で?」
 目を輝かせるカノン。
「ああ。まあまあよく燃えてるよ。ん?」
「どうしたのヤッさん?」
 康人はその魂の炎の胸の部分が少し他より薄いように感じた。何か違和感のようなものを感じたが深く考えずに他に気づいたことを言った。
「ああ。なあカノンちゃん、以前に右腕をケガしたことないか?なんかひしゃげてるような、つぶれてるような、そんな炎でさ、色もちょっと濃いんだ。左腕よりも少し細いような気もするし」
「え……。な、なんでわかるの……」
 目を見開いて驚くが康人は気づかない。
「確かグラマスって昔に大ケガしたことあったって噂があったけど」
 そこでシーディアが尋ねた。
「う、ああ。三十年ほど前だったか。右腕をドラゴンに噛みつぶされてな。それがもとで冒険者を引退したのだ。だが私の冒険者レベルが高かったし、その後は田舎の方だがギルマスに推薦されたのだ、それからいろいろあってグラマスになったのだ」
 と四人を見渡す。
「そうだったんだ」
 と康人。そして気になったことを尋ねた。
「で、ドラゴンは倒したのか?」
「ううん……。たぶん死んだと思う。胴体の半分以上が無くなってたからね。あれで生きてたらおかしいよ。まあ、呼吸もしてなかったし心臓の音もしてなかったし。その上後日に土魔法で地中深くに埋めたから」
「そうなんだ。でもよく戦えたな。右腕やられてたんだろ?」
「うん。レベルがSの冒険者三人とSSの冒険者二人でなんとか仕留めたけど……。私以外殺られてしまったけどね……」
 少し悲し気な声色に康人がしまったと少し狼狽するがあまりあわてることなく話を続けた。
「あ、そ、そうなんだ。……でも、ドラゴンってそれだけ高レベルの冒険者が揃っててもなかなか討伐できないもんなんだ」
「そうなのよね。ドラゴンはドラゴンでも邪竜って呼ばれるドラゴンでさ。邪竜はドラゴンの中でも強いってレベルの上をいってるからね。でも、魂の炎でそこまでわかるんだ。すごいな」
 と感心するカノン。
「そうだったんだ。邪竜か……。ん?」
 とそこで再び康人は奇妙なものを見つけた。
「どうしたのヤッさん」
 とカノンは真剣に自分を視る康人を心配そうに見つめた。
「あはは。なあカノンちゃん」
「はい?」
「右足の先、小指のとこらへんだけど、ケガしてるようだが、なんか黒っぽい。どっかにぶつけたか?」
「右足の小指……?あ、うん、昨日だったかな、机の脚の角で小指を撃った。痛かったぁ。あはは」
「あはは。そうなんだ。まだ痛むか?」
「まあ、まだちょっと痛いかな。ま、そのうち治ると思うよ。でもそんな小さなケガまでわかるなんてすごいよヤッさん」
 微笑むカノン。
 康人もケラケラ笑うカノンの声を聴きながら同じように笑った。

「それでグラマス、ヤッさんのことだけどしばらく俺たちが保護しようと思うがかまわないか?」
 とリュウト。
「ああ、かまわないぞ。まあ、リュウトたちに頼むつもりだったんだがな」
 「わかった。ヤッさん」
「ありがとうリュウト。しばらくやっかいになる。よろしく」
 と頭を下げる康人。
「となるとヤッさんには何か仕事をしてもらわないといけないんだけど」
 とカノン。
「そうだよな。ただで面倒みてもらおうとも思わないし。でも、俺、できることってマッサージくらいしかないけど」
「いいと思うわよあたし。マッサージのお店したらどうかしら?ヤッさんのマッサージなら流行ると思うわよ。何度かヤッさんに肩をマッサージしてもらったけど、とても気持ち良かったもの」
 とうれしそうなシーディア。
「そうだな。俺も腰とか揉んでもらったけど気持ちよくて。な、ビル」
「ああ。俺も足とか揉んでもらったけど途中で寝てしまったぞ。ヤッさんがマッサージ店するなら俺も客としていくから店してくれよヤッさん」
 とビルも後押しする。
「そうなのか。ではヤッさん。マッサージのお店を開いてもらうことにするね。場所は私が用意するから」
 でもなと康人。
「でも俺金無いんだけど。もともと着ていたデニムジャケット、えと、上着をオッティーさんに売ってほんのちょっとだけあるけど」
「心配しないでヤッさん。私がヤッさんに貸すから。あげてもいいんだけどそれじゃヤッさん嫌でしょ」
「ああ、もらうのは違うな。貸してもらえるなら頼むよカノンちゃん」
「任せといて!」
 とたわわな胸を叩いた。
「ありがとうカノンちゃん。助かるよ。治療院開いたらカノンちゃんもマッサージするからな」
「うんよろしくねヤッさん。ではそのためにも治癒術師としてギルド登録しないとね」
「ギルド登録か。わかった」
 と、その時本部長室のドアがノックされ秘書のマーディロスが入ってきた。
「カノン様。昼食の準備が整いました。皆様どうぞこちらへ、食堂にお出でください」
 うやうやしく叩頭するマーディロス。
「うむ。ではみんなついてこい。一緒に食堂に行くぞ」
「えっ!俺たちがか?」
 リュウトがあわてる。
「ちょっとグラマス、一緒に食事は……」
「そうだよグラマス。ヤッさんはともかく俺たちは……」
 シーディアもビルもとんでもないと手を左右に振る。
「まあ、気にするな。これからヤッさんのことを任せるのだ、お前たちとも一緒に食事をせねばな。それとも私の誘いは受けられんのか?」
 ギロリと三人を見るカノン。
「あっ、いや。そんなことはないぞグラマス」
 と苦笑するリュウト。
「ま、まあ、仕方ないかな。んじゃごちそうになりますグラマス」
「そうだな。みんなで食べようか」
 とビル。
「うむ。ではヤッさん、私と行こう」
 カノンはソファーに座る康人の横に行くとその手を取ったのだった。
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