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(35) 同じは無い

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ノエミ・セレナ・バデロッサ公爵令嬢。診療所に入所した患者である。に。してから数日
後に担当医師である治療魔法院へ報告にハーパー店長はやって来ていた。

腕の良い治療魔法師だけに、今日も患者が列をつくっている。診療所へ入った彼は、何かに気がついて足を止めた。


(この波動は、ヘルミーナ様の波動だ。入らしてるのか?)


来るとは聞いてないが、他の用だったのだろうか。波動の方向へ顔を向けたハーパー店長は裕福な身なりの息女に戸惑った。ヘルミーナでは無い。黒髪は似ているが。


「ベアトリーチェさん、気分はどう?」


似た面立ちの金持ちの夫人が側によって話かける。どちらも、美しい。異国の者のようだが。


「お母さん、大丈夫。少し、気分がいいの。」


どうやら、母娘で娘が病人らしい。見つめるハーパー店長に気がついて、母親は娘を隠すようにして足早に出て行った。訳ありのようだ。









ゴメス商会の会長であるドルウ・ゴメスは、普段は様々な国に作った支店を巡回して留守が多い。久しぶりに来たスタンレー国の支店で店長から報告を受ける。


「イトウ子爵家の療養所は、上手くいってるようだな。患者の容態が良くなってるのか?」

「はい、数日で起き上がれるように。」

「それは、素晴らしい。そういう呪われた土地の利用価値があるとはな。新しい事業として、他の国にも展開できるように進めてくれ。ヘルミーナ様は、アイデアが素晴らしい。天才だな。」

「そのヘルミーナ様なんですが、気になる事がありまして。」

「何だ、ハーパー店長?」

「治療魔法の診療所で、ヘルミーナ様と同じ波動を持った娘に遭遇しまして。どうも、気にかかるんです。同じ波動は居る者なんですか?」

「同じ波動だって?それは、興味深いな。何故なら、有り得ないからだ。」


波を身体から出すのは、持っている魔力のせいであった。魔力は、生きている。息をするように、波動を出す。それぞれの生態エネルギーが異なる為に同じ物は生まれないのだ。

ゴメスは、ハッキリと口に出した。


「無いはずの物が有る。それは、偶然では無いだろう。すると、悪意が見えるだけだ。調べる価値は有りそうだな。ヘルミーナ様は、ゴメス商会の大事なコンサルタントだぞ。」


ゴメスが乗り出す。彼の手から逃れる事は出来ない。ゴメスが強い魔法の使い手だというのは、影では知られている。まだ、全ての魔法を出しきっていない事から恐れられてもいる人物だ。必ず、詳細が明らかになるだろう。



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