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大希

天にも昇る気持ち

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皆で水族館に来たことは大成功だったと実感した私は、満たされた気分で帰りのバスに揺られていました。

その私の隣にヒロ坊くんが座っていて、バスが揺れると彼の体が私に触れます。その度に血が全身をカーッと奔り抜ける感覚があり、胸が高鳴るのが分かります。

『ああもう…死んでもいい……』

って、ダメですダメです! 死んでなんていられません! 私は彼と一緒に生きるんです!

ふう…落ち着け、落ち着け、私……

ですが、『天にも昇る気持ち』というのは、まさにこういうことを言うのかもしれません。

イチコが気を利かせてくれたのですが、本当に昇天してしまいそうです。

すると彼が、

「大丈夫? ピカちゃん。顔が赤いよ?」

と、私を案じてくださいました。

自分でも顔が火照っているのは分かっていましたが、それを彼が心配してくださるなんて……

『幸せ過ぎますぅ~~っ!』

声に出して身悶えそうになるのを、必死で抑えます。そんなはしたない真似、私には似合いませんから。そういうのは、もっと、可愛げのある、フェミニンな女性がやってこそ絵になるのでしょうから。

すると、その時、

「あ……」

私は鼻に違和感を覚え、咄嗟にハンカチで押さえました。彼と隣り合って座ってからずっと、手汗がすごかったので、ハンカチを握りしめていたのが幸いでした。

まさかと思ってハンカチに視線を落とすと、赤いものが。

『鼻血……!?』

そんな……彼と触れ合ってそれでのぼせて鼻血なんて、まるでマンガじゃありませんか……!

「ピカちゃん、ホントに大丈夫?」

彼が、一層、私を案じて覗き込んできてくれます。

でも、それはとても嬉しいのですが、鼻血を垂らしているところを見られるのは辛いです……!

いえ、きっと彼ならば、私が鼻血を垂らしていても決して嘲笑ったりしないでしょう。それは分かっています。彼はきっとただただ私を心配してくれるに違いありません。

だけどそうじゃないんです。彼にバカにされたりするのが不安だとか、嫌われたらどうしようとか、そういうことは心配していません。彼がそんなことで私をバカにしたり嫌ったりするハズがないのは分かっているんです。ただただ単純に恥ずかしくて……

だから私は、鼻血が収まるまでハンカチで鼻を押さえ続け、結局、バスを降りるまでそれを続けることになりました。

幸い、気付いたのが早く、止血も上手くできましたのでそれほどの出血ではありませんでしたが、まさかの事態に焦ってしまったのも事実です。

これからは彼のすぐ近くにいる時はこういうこともあるかもしれないと気を付けないといけないですね。

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