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大希
ラブレター事件 その6
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『フミがそこまで怒ることないって』
イチコはそう言いますが、フミの怒りは収まりません。
「イチコは優しすぎだって。あの言い方はおかしすぎだよ!」
しかしイチコはそんなフミに、少し困ったように微笑みながら語り掛けたのです。
「フミ、私のために怒ってくれるのは感謝してる。でも、それでフミが館雀さんとケンカになって余計に嫌な思いするのは私としては嬉しくないな」
するとさすがにフミもハッとなって、
「それは…そうかもしれないけど……」
やや勢いを緩めます。それを確かめたイチコの表情がまた柔らかくなりました。
「ありがと、フミ。私ならホントに大丈夫だから。あそこまで行ったらギャグだから。楽しませてもらってたよ」
「イチコ……」
イチコのそれは、<優しい>とか<お人好し>とかいうのとは違うということを、私達は知っています。お義父さんから受け継いだ、冷徹なまでの<合理主義>こそがその根底にあるのです。
『目先の感情のために問題を拗れさせても何も得るものはない』
という。
なので、本質的には優しいやお人好しとは対極にあるものと言った方がいいのかもしれません。
対してあの館雀さんは、目先の感情こそが大事で、それが後々どういう結果をもたらすのかということを考えていないように感じました。
自身の感情のままに他人を罵り、自身の思い通りになることが正しいと思ってらっしゃるのでしょうか。
そんな彼女の姿はまるでかつての私自身の姿を見るようで、胸の奥がざわめくような気がしてしまいます。
恥ずかしいと言いますか、何とも言えないいたたまれなさがあるのです。
『消えてしまいたい…』と思わずにはいられないと言いますか……
かつての私は、他人からはきっとあんな風に見えていたのでしょうね。
まったくもって恥ずかしいことこの上ありません。
暴言を吐くことを自由だと言い張る方は、結局、程度の差こそあれ彼女やかつての私と同じなのだと思います。
<独善>なのでしょう。正しいのは常に自分であって間違っているのは他人であり、暴言によって他人を攻撃することも、自分は正しいことをしているのだから許されるべきと考えているのです。少なくとも私はそうでした。
他人の言葉に耳を貸さない姿勢が何ももたらすのか、私は身をもって知っています。本来は争う必要もなかった方との不毛な諍いです。
私の場合は、フミとの確執でした。本来であれば彼女と衝突する必要など全くなかったのにも拘らず、私はフミとぶつかってしまったのですから。
イチコはそう言いますが、フミの怒りは収まりません。
「イチコは優しすぎだって。あの言い方はおかしすぎだよ!」
しかしイチコはそんなフミに、少し困ったように微笑みながら語り掛けたのです。
「フミ、私のために怒ってくれるのは感謝してる。でも、それでフミが館雀さんとケンカになって余計に嫌な思いするのは私としては嬉しくないな」
するとさすがにフミもハッとなって、
「それは…そうかもしれないけど……」
やや勢いを緩めます。それを確かめたイチコの表情がまた柔らかくなりました。
「ありがと、フミ。私ならホントに大丈夫だから。あそこまで行ったらギャグだから。楽しませてもらってたよ」
「イチコ……」
イチコのそれは、<優しい>とか<お人好し>とかいうのとは違うということを、私達は知っています。お義父さんから受け継いだ、冷徹なまでの<合理主義>こそがその根底にあるのです。
『目先の感情のために問題を拗れさせても何も得るものはない』
という。
なので、本質的には優しいやお人好しとは対極にあるものと言った方がいいのかもしれません。
対してあの館雀さんは、目先の感情こそが大事で、それが後々どういう結果をもたらすのかということを考えていないように感じました。
自身の感情のままに他人を罵り、自身の思い通りになることが正しいと思ってらっしゃるのでしょうか。
そんな彼女の姿はまるでかつての私自身の姿を見るようで、胸の奥がざわめくような気がしてしまいます。
恥ずかしいと言いますか、何とも言えないいたたまれなさがあるのです。
『消えてしまいたい…』と思わずにはいられないと言いますか……
かつての私は、他人からはきっとあんな風に見えていたのでしょうね。
まったくもって恥ずかしいことこの上ありません。
暴言を吐くことを自由だと言い張る方は、結局、程度の差こそあれ彼女やかつての私と同じなのだと思います。
<独善>なのでしょう。正しいのは常に自分であって間違っているのは他人であり、暴言によって他人を攻撃することも、自分は正しいことをしているのだから許されるべきと考えているのです。少なくとも私はそうでした。
他人の言葉に耳を貸さない姿勢が何ももたらすのか、私は身をもって知っています。本来は争う必要もなかった方との不毛な諍いです。
私の場合は、フミとの確執でした。本来であれば彼女と衝突する必要など全くなかったのにも拘らず、私はフミとぶつかってしまったのですから。
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