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ロボットメイド、アリシアの優雅な日常
アリシア、アリシアシリーズとリンクする
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「千堂様、意見具申よろしいでしょうか?」
アリシアの言葉に、千堂が「許可する」と応えた。するとアリシアの口から信じ難い言葉が発せられたのだった。
「現在、この船を攻撃している武装集団の目的は、恐らく『遊び』だと推測されます。ハンティングを楽しんでいるのです」
その場にいた誰もが息を呑んだ。
「馬鹿な? いくらなんでもそんな訳あるか!?」
一人がそう叫んだが、しかしその場には重苦しい雰囲気が流れた。そうだ。今回の襲撃が普通でないことは、誰もが感じていた。これほどまでの手際を発揮しながら船そのものを占拠するでもなく、人質を取って要求を出してくるでもなく、ただ、癌細胞のように船を侵蝕していくだけの行いは、この船に乗っている人間をただ殺戮することが目的としか思えなかったのだ。しかも、単に殺すだけなら船ごと爆破すればいいところをわざわざ一人ずつ殺害していくというのは、ここを狩場とみなして人間狩りをしているようにしか思えない。
そしてついに、船長が口を開いた。
「ミスター・センドウ。我々のロボットを貴方に預けます。それから乗客にも協力を要請しましょう。この状況を打破してください」
それと共に、千堂アリシアを通じ、船長の声で、船に配備されていたフィーナQ3とルシアンF5に対して彼女の指揮下に入ることが命令された。
リンクと違い、千堂アリシアの分身となる訳ではない為に反応には若干の遅れが出てしまうが、それでもバラバラに対応しているよりは戦術的な動きも出来るようになる。これで少しはマシになるだろう。さらに、フィーナQ3とルシアンF5を通じ、船長の声でフィーナシリーズを連れている乗客だけでなく、メイトギアを連れている全乗客に対して協力が要請された。
その間にも、千堂アリシアはリンクしたアリシアシリーズを中継器としてさらにリンクを図り、ついに船に乗っている全てのアリシアシリーズとのリンクを終えた。しかし、リンクした途端に一機、また一機とダウンしていく。相手の手際が良すぎるのだ。標準仕様のアリシアシリーズでは、姿すら満足に捉えることが出来なかった。
だがその時、既に千堂アリシアとリンクを果たし主人と共にデッキに避難していたアリシア2234-MMNが銃声を検知した。近い。それと同時に、アリシア2121の、GINとHINも同じように銃声を捉える。彼女らは自身の主人に提起した。
「現在この船で起こっている事態に対しての応援要請が来ています。それに協力することを許可していただけますか?」
だが、アリシア2121-GINとアリシア2234-MMNの主人は、自分達を守ることを優先するように命じた。どちらも幼い子供を連れた家族だった。子供を守ることを優先したかったのだ。それを無下にすることは出来ない。対してアリシア2121-HINを連れていた老夫婦は、
「分かりました。皆さんを守ってください」
と送り出してくれた。他にも同様に要請に応じてくれたアリシアシリーズが十三機、完全に千堂アリシアの分身として機能を開始。それと合わせて、他の乗客達のフィーナシリーズを始めとしたメイトギア総勢五十数機が、同じく千堂アリシアの指揮下に入った。
『皆さん、人間を守る為に力を貸してください!』
千堂アリシアがそう発すると、アリシアシリーズ及びそれ以外のメイトギアが一斉に行動に移る。まずはとにかく、テロリスト達の侵攻を阻止することだ。船室に残っていた乗客達の連れていたメイトギアは自分達の主人にデッキに避難することを告げ、自分達はテロリストがいるであろう方向へと走った。するとあるフィーナQ3が船室を出た時、そこに戦闘服に身を包んだ怪しい男達の姿を発見。
「敵の姿を現認! 位置は第三デッキ右通路、2033号室付近!」
しかしそのフィーナQ3は標準仕様だった為、殆ど何も出来ないうちに機能停止に追い込まれた。だがそこへ、戦闘モードに入ったアリシア2121-HINと、船に備え付けられていたフィーナQ3が到着。それに遅れること一秒ほどで、さらに乗客のフィーナQ3二機が戦闘モードで駆け付けた。千堂アリシアの分身となったアリシア2121-HINを中心に連携し、テロリスト二名の無力化に成功したが、フィーナQ3二機も機能停止に追い込まれ、それを盾にして膠着状態となってしまった。武装そのものは小火器しかなかったものの、だからと言って下手に近付けば例の端子を打ち込まれ、機能を停止させられる。先程までのようにただ待機状態にするだけでなく、OSを破壊するようにしたようだ。戦闘に入った場合はそうするように決めていたのだろう。
そのまま力業で押し切ることも考えたが、今は乗客の命を守ることが先決だ。さらに駆け付けたメイトギア達でバリケードを築き、客室の方が安全と考えて閉じこもっていた乗客達をデッキへと避難させた。テロリストの狙いがマンハントなら、客室にこもるのは逆に自殺行為になるからだ。もちろん既に他の乗客達にもメイトギアを通じてデッキに避難することは告げられていたが、客室から出た途端に鉢合わせするかも知れない恐怖に動けずにいた乗客も多かった。
この時には既に、第三デッキの左通路、第二デッキの左右通路、第四デッキの左右通路にもメイトギアを集め、それぞれテロリストを発見しバリケードを築いて、乗客の避難を促す。
一方で、千堂アリシアは、第二デッキの左通路で別の異変が起こっていることに気が付いていた。再起動させた上でリンクしたアリシア2121-HKNが連れていたメイトギアが、次々ダウンしていったのである。奥の方の部屋に向かったメイトギア達だった。銃声も捉えられた為、他にも隠れていたテロリストがいるものと思われた。それ故、バリケード前で釘付けにしていたテロリストを背後から挟み撃ちにすることを考えていたのを改め、再度アリシア2121-HKNをその異変が起こっている辺りへと向かわせる。
そこには、何機ものメイトギアが床に倒れていた。標準仕様のものは恐らく銃で破壊されたのだろう。主人を亡くした為に戦闘モードには入れなかった要人警護仕様のものには例の端子が撃ち込まれ、OSが破壊されていた。
やはり何者かがいる。そう考えたアリシア2121-HKN(千堂アリシア)の前で、客室のドアが開いた。だが誰も出てこない。それでいてセンサーには人間の反応がある。人数は一人。バイタルサインは正常だ。生きた人間がそこにいるのだ。
恐らくテロリストが潜んでいるのだろう。アリシアはそう思った。一気に急襲し、鎮圧する。あの端子を使われる可能性があるが、戦闘モードに入った今の状態ならそれほど脅威ではない。二人以上で連携されれば危険だが、一人なら。
千堂アリシアは決断した。アリシア2121-HKNの最大のパフォーマンスで奔った。ドアの陰に隠れたテロリストの腕を掴んで粉砕し、戦闘能力を奪う。それだけだ。例の端子が放たれても、十分に躱せる。そう考えてドアの陰に飛び込んだ。しかしその瞬間、アリシアの目に映ったのは、思いもかけない姿だった。
「タラントゥリバヤさん!?」
思わずそう叫んでいた。アリシア2121-HKNの口だけでなく、千堂の隣に控えていた自らの口でも、その名を叫んでしまっていた。そう、そこにいたのは紛れもなくタラントゥリバヤだった。戦闘服に身を包み、自動小銃と例の端子を打ち出す銃とを構えたタラントゥリバヤの姿。だがその顔には、あの明るい笑顔はなかった。明らかな憎悪を張り付かせた、悪鬼のごとき荒んだ目が、射るようにアリシアを見ていた。
その瞬間、アリシア2121-HKNのリンクが途切れたのだった。
アリシアの言葉に、千堂が「許可する」と応えた。するとアリシアの口から信じ難い言葉が発せられたのだった。
「現在、この船を攻撃している武装集団の目的は、恐らく『遊び』だと推測されます。ハンティングを楽しんでいるのです」
その場にいた誰もが息を呑んだ。
「馬鹿な? いくらなんでもそんな訳あるか!?」
一人がそう叫んだが、しかしその場には重苦しい雰囲気が流れた。そうだ。今回の襲撃が普通でないことは、誰もが感じていた。これほどまでの手際を発揮しながら船そのものを占拠するでもなく、人質を取って要求を出してくるでもなく、ただ、癌細胞のように船を侵蝕していくだけの行いは、この船に乗っている人間をただ殺戮することが目的としか思えなかったのだ。しかも、単に殺すだけなら船ごと爆破すればいいところをわざわざ一人ずつ殺害していくというのは、ここを狩場とみなして人間狩りをしているようにしか思えない。
そしてついに、船長が口を開いた。
「ミスター・センドウ。我々のロボットを貴方に預けます。それから乗客にも協力を要請しましょう。この状況を打破してください」
それと共に、千堂アリシアを通じ、船長の声で、船に配備されていたフィーナQ3とルシアンF5に対して彼女の指揮下に入ることが命令された。
リンクと違い、千堂アリシアの分身となる訳ではない為に反応には若干の遅れが出てしまうが、それでもバラバラに対応しているよりは戦術的な動きも出来るようになる。これで少しはマシになるだろう。さらに、フィーナQ3とルシアンF5を通じ、船長の声でフィーナシリーズを連れている乗客だけでなく、メイトギアを連れている全乗客に対して協力が要請された。
その間にも、千堂アリシアはリンクしたアリシアシリーズを中継器としてさらにリンクを図り、ついに船に乗っている全てのアリシアシリーズとのリンクを終えた。しかし、リンクした途端に一機、また一機とダウンしていく。相手の手際が良すぎるのだ。標準仕様のアリシアシリーズでは、姿すら満足に捉えることが出来なかった。
だがその時、既に千堂アリシアとリンクを果たし主人と共にデッキに避難していたアリシア2234-MMNが銃声を検知した。近い。それと同時に、アリシア2121の、GINとHINも同じように銃声を捉える。彼女らは自身の主人に提起した。
「現在この船で起こっている事態に対しての応援要請が来ています。それに協力することを許可していただけますか?」
だが、アリシア2121-GINとアリシア2234-MMNの主人は、自分達を守ることを優先するように命じた。どちらも幼い子供を連れた家族だった。子供を守ることを優先したかったのだ。それを無下にすることは出来ない。対してアリシア2121-HINを連れていた老夫婦は、
「分かりました。皆さんを守ってください」
と送り出してくれた。他にも同様に要請に応じてくれたアリシアシリーズが十三機、完全に千堂アリシアの分身として機能を開始。それと合わせて、他の乗客達のフィーナシリーズを始めとしたメイトギア総勢五十数機が、同じく千堂アリシアの指揮下に入った。
『皆さん、人間を守る為に力を貸してください!』
千堂アリシアがそう発すると、アリシアシリーズ及びそれ以外のメイトギアが一斉に行動に移る。まずはとにかく、テロリスト達の侵攻を阻止することだ。船室に残っていた乗客達の連れていたメイトギアは自分達の主人にデッキに避難することを告げ、自分達はテロリストがいるであろう方向へと走った。するとあるフィーナQ3が船室を出た時、そこに戦闘服に身を包んだ怪しい男達の姿を発見。
「敵の姿を現認! 位置は第三デッキ右通路、2033号室付近!」
しかしそのフィーナQ3は標準仕様だった為、殆ど何も出来ないうちに機能停止に追い込まれた。だがそこへ、戦闘モードに入ったアリシア2121-HINと、船に備え付けられていたフィーナQ3が到着。それに遅れること一秒ほどで、さらに乗客のフィーナQ3二機が戦闘モードで駆け付けた。千堂アリシアの分身となったアリシア2121-HINを中心に連携し、テロリスト二名の無力化に成功したが、フィーナQ3二機も機能停止に追い込まれ、それを盾にして膠着状態となってしまった。武装そのものは小火器しかなかったものの、だからと言って下手に近付けば例の端子を打ち込まれ、機能を停止させられる。先程までのようにただ待機状態にするだけでなく、OSを破壊するようにしたようだ。戦闘に入った場合はそうするように決めていたのだろう。
そのまま力業で押し切ることも考えたが、今は乗客の命を守ることが先決だ。さらに駆け付けたメイトギア達でバリケードを築き、客室の方が安全と考えて閉じこもっていた乗客達をデッキへと避難させた。テロリストの狙いがマンハントなら、客室にこもるのは逆に自殺行為になるからだ。もちろん既に他の乗客達にもメイトギアを通じてデッキに避難することは告げられていたが、客室から出た途端に鉢合わせするかも知れない恐怖に動けずにいた乗客も多かった。
この時には既に、第三デッキの左通路、第二デッキの左右通路、第四デッキの左右通路にもメイトギアを集め、それぞれテロリストを発見しバリケードを築いて、乗客の避難を促す。
一方で、千堂アリシアは、第二デッキの左通路で別の異変が起こっていることに気が付いていた。再起動させた上でリンクしたアリシア2121-HKNが連れていたメイトギアが、次々ダウンしていったのである。奥の方の部屋に向かったメイトギア達だった。銃声も捉えられた為、他にも隠れていたテロリストがいるものと思われた。それ故、バリケード前で釘付けにしていたテロリストを背後から挟み撃ちにすることを考えていたのを改め、再度アリシア2121-HKNをその異変が起こっている辺りへと向かわせる。
そこには、何機ものメイトギアが床に倒れていた。標準仕様のものは恐らく銃で破壊されたのだろう。主人を亡くした為に戦闘モードには入れなかった要人警護仕様のものには例の端子が撃ち込まれ、OSが破壊されていた。
やはり何者かがいる。そう考えたアリシア2121-HKN(千堂アリシア)の前で、客室のドアが開いた。だが誰も出てこない。それでいてセンサーには人間の反応がある。人数は一人。バイタルサインは正常だ。生きた人間がそこにいるのだ。
恐らくテロリストが潜んでいるのだろう。アリシアはそう思った。一気に急襲し、鎮圧する。あの端子を使われる可能性があるが、戦闘モードに入った今の状態ならそれほど脅威ではない。二人以上で連携されれば危険だが、一人なら。
千堂アリシアは決断した。アリシア2121-HKNの最大のパフォーマンスで奔った。ドアの陰に隠れたテロリストの腕を掴んで粉砕し、戦闘能力を奪う。それだけだ。例の端子が放たれても、十分に躱せる。そう考えてドアの陰に飛び込んだ。しかしその瞬間、アリシアの目に映ったのは、思いもかけない姿だった。
「タラントゥリバヤさん!?」
思わずそう叫んでいた。アリシア2121-HKNの口だけでなく、千堂の隣に控えていた自らの口でも、その名を叫んでしまっていた。そう、そこにいたのは紛れもなくタラントゥリバヤだった。戦闘服に身を包み、自動小銃と例の端子を打ち出す銃とを構えたタラントゥリバヤの姿。だがその顔には、あの明るい笑顔はなかった。明らかな憎悪を張り付かせた、悪鬼のごとき荒んだ目が、射るようにアリシアを見ていた。
その瞬間、アリシア2121-HKNのリンクが途切れたのだった。
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